リツコおかあさんシリーズ

ビスケット

「レイちゃん良いものをあげるよ」

「えっ、なに〜?」

 ネルフの通路、レイに出会ったシンジは小さな箱を渡した。

「わあ〜ビスケットだあ」

「お店で貰ったんだけど僕は食べないからレイちゃんにあげるよ」

「本当〜?ありがとうシンジお兄ちゃん」

 おもわぬ貰い物にレイは喜んだ。

「美味しそ〜食べても良い」

「うん良いよ、座って食べようね」

「うんっ!」

 シンジはレイの手を握ると近くの自販機のベンチに移動した。




「レイちゃんは何が良いかな?」

「んとね〜ココア」

 シンジはポケットから財布を取り出すとお金を自販機に入れてココアのボタンを押した。紙コップに温かいココアが注がれていく。

「はいレイちゃん、熱いから火傷しないようにね」

「ありがとう〜」

「僕はコーヒーを」

 シンジはレイにココアを渡すと自分用にコーヒーのボタンを押した。




「ぱくっ・・・おいし〜〜」

 レイは早速箱からビスケットを取り出すと一口食べた。ビスケットの甘い味が口いっぱいに広がった。

「美味しいかい?良かったね〜」

「うんっ!シンジお兄ちゃんのも一つあげるね。はい、あ〜〜んして」

「おいおいレイちゃん食べられるよ」

「あ〜んして食べさせてあげる」

「はは、困ったなあ」

 頭をかきながら笑うシンジ、レイの微笑が天使に見えてくる。

「はい、あ〜〜ん」

「あ〜〜ん・・・ぱくっ」

「美味しい?」

「うん美味しいよ」

 甘い雰囲気が流れる、同年代なら良いカップルなのだが十四歳と五歳、良い兄妹にしか見えない。




「ちょっと待ったあ〜〜!」

 良い雰囲気を壊す大声が通路に響いた、アスカである。

「あ、アスカお姉ちゃん」

「どうしたのアスカ?」

「どうしたもこうも無いわよ、アタシに無断で良いものを食べているじゃない」

「食べているってビスケットだよ」

 制服姿のアスカが早足でベンチに向かってきた、良いものを目掛けて。

「そのビスケットが良いのよ、通路の向こうから甘〜い香りがしたと思ったらビスケットじゃないの、どうしてアタシに黙っていたのよ」

「黙っていたって、言う必要あるのかな?」

「大有りよ!アタシが三度のご飯よりビスケットが好きなの知らないの?」

「知らないよ」

 初めて聞いたシンジ、アスカの視線はレイの持っているビスケットを捕らえている。

「ふんっ知らないなんて失礼しちゃうわね。っというわけでレイ、アタシにもちょうだい」

「うん、は〜〜い」

「ありがと、シンジッ!紅茶をちょうだい」

「紅茶?」

「そこにあるでしょ、そこに」

 アスカの指差した先には自販機の紅茶、視線で買えと言っている。

「はいはいわかったよ」

「はいは一回」

「はい・・・」

 シンジは呆れながら自販機のボタンを押した。




「さあていっただきま〜〜すっぱくっ・・・」

 小さなビスケットはアスカの大きな口に一口で吸い込まれて消えた。

「ん〜〜美味しい〜〜」

「アスカお姉ちゃん本当に美味しそう〜」

「美味しいわよ、シンジこれどこで買ったの?」

 アスカのお気に入りリストに追加されたようである。

「お店で貰ったんだよ、中身が少ないから配っていたんだよ」

「え〜?売ってないの」

「ちゃんとしたやつは売ってあったよ」

「本当?じゃあ今から買いに行きましょう」

「えっ今から?もうすぐテストだよ」

 テストまであと三十分である、そろそろ準備をしなければならない。

「良いのそんなの後々、ほら行くわよレイも付いて来るの」

「私も?」

 手を引かれるシンジとレイ、強引なアスカの前に拒否する事はできない。二人は道連れになりネルフから出て行くのであった。


 美味しいビスケット、レイちゃんアスカちゃんのお気に入り、ご飯より大好きです(アスカちゃんだけですね)

 もっと食べたいアスカちゃん、テストがあるけど無視して買いに出かけました。後でリツコさんに何て言うんでしょうね(レイちゃんが一緒だったから許してくれるかな)

「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


リツコおかあさんシリーズ ビスケット