guoooooonnnnn!!!!!

 はるか遠くまで響き渡るエンジン音、一台の車が国道から高級マンションの駐車場に滑り込んだ。

 カチャ

 ドアが翼のように跳ね上がると、中からサングラスをかけた一人の女性が出てきた。

「久しぶりね、元気にしているかしら?」

 その女性はサングラスを片手で外すと高級マンションの最上階を見上げ微笑んだ。























リツコおかあさんシリーズ

Grandma
























 ピ〜ンポ〜ン

「レイ〜〜〜ちょっとでてくれない」

 リツコの自宅に呼び鈴がなった、来客のようである。リツコは現在夕食の準備で大忙し、TVゲームをしているレイに頼んだ。

「は〜〜〜い、どちさらまですか?」

 壁にかけてある受話器を取ると玄関先の訪問者に向かって訊ねた。

「宅配便です」

「は〜〜い、今でます」

 どうやら宅配便らしい、レイはハンコを持つと玄関に走った。

 ガチャ

 玄関を開けるとそこには・・・

「きゃ!」

 レイの顔に何か柔らかいものが当たり、おもわず目をつぶった。

「は〜〜い、宅配便ですよ」

「その声・・・」

 聞き覚えのある声、レイはゆっくりと目を開き声がする方向を見てみると・・・

「レイちゃん、元気にしてた〜?」

「おばあちゃま!!」

 レイの前にいたのは赤木ナオコ、リツコの母親である。

「はいお土産」

「ありがとう」

 先ほど顔に当たったやわらかい物、レイの身長ほどある大きな熊のぬいぐるみである。

「リっちゃんは居る?」

「うん、今御飯作っているの、上がって」

 レイはナオコの手を取るとリツコの居る台所に向かった。

「おかあさん、おばあちゃまが来たよ」

「えっ、母さんが?あらほんと、どうしたのいきなり?」

「リっちゃん元気してた?」

 レイの声に振り向いてみると確かにナオコが居て驚いた。

「ちょっと暇ができてね、二人の顔が見たくなっちゃったのよ」

 ナオコは現在、松代で技術部の最高責任者をしており多忙な毎日をおくっておりなかなか二人に会うことはできない。

「母さんも元気そうね」

「ええっ、まだまだ若い人には負けていられないわよ」

「ふふ、母さんらしいわね」

 ガッツポーズを作り若さをアピール、その姿にリツコは苦笑した。

「ほらおかあさん、お土産貰ったの」

「まあ、母さん高かったんじゃないの?」

 巨大なぬいぐるみ、一万や二万で買える代物ではない。

「高くないわよ、安かったわよリっちゃんも欲しい?」

「私は要らないわよ、レイお礼は言った?」

「うん、ちゃんと言ったよ」

「ええ、レイちゃんはおりこうね。ちゃんとお礼を言ったわよ」

 レイの頭を撫でるナオコ、我が孫の礼儀正しさに満足する。

「御飯は食べたの?」

「ううん、食べてないわ。リっちゃんの御飯を期待して来たのよ、それにほらお泊りセットよ」

 大きなバックのチャックを開いて中身を見せる、中には着替えや洗面道具が入っていた。

「うわ〜〜い、おばあちゃまお泊りなのね」

「そうよ、今夜は寝かさないわよ〜〜」

「母さん、何言っているの!早く寝てもらいますよ」

 レイにとって好ましくない発言にリツコはご立腹、教育上良くない。

「え〜〜リっちゃんのいけずぅ〜〜うりうり〜〜〜」

 リツコの頬に人差し指でつんつんするが・・・

母さんっ!!!

 切れた、今にも頭から角が生えてきそうである。

「は、はひっ、なんでしょうか?」

「料理の邪魔になります、レイとお風呂に入ってきてください」

「ラ、ラジャッ!レイちゃん行くわよ」

「うん」

 ここにいつまでも居ては危険だと察知したナオコ、爆発寸前のリツコに敬礼をするとレイを抱きかかえ洗面所へ逃げ去った。

「ふう〜〜母さんは・・・いつまでも子供なんだから」

 疲れ果てたリツコ、ため息をつくと苦笑した。










「あ〜〜〜怖かったわねレイちゃん」

「うん、もうちょっと居たら改造されていたね」

 湯船に肩までつかり先ほどのリツコの顔を思い出し笑う二人、湿度が高くなっており頬が真っ赤に染まっている。

「改造ねえ、リっちゃん昔はよく改造していたわよ」

「ほんとう?」

「ええ本当よ」

 ナオコは昔の事を思い出した、まだリツコが小学生の時である。








「母さん母さん」

「どうしたの息を切らせて」

 おさげ姿のリツコ、息を切らせて自室から何かを抱えて出てきた。

「ほらこれを見てよ、凄いんだから」

「これってパソコンじゃない」

 リツコの手にはノートパソコン、何が凄いのかわからない。

「ふふ、チューンアップしたの多分世界でこれが一番凄いわ」

「ふふ、そうなの」

 自信たっぷりに説明するリツコにナオコは将来の不安は一切無かった。

「そして一番凄いのはOSが凄いのよ」

「OS?」

「うん、スーパーOSリツコ搭載なの」

「OS作ったの凄いじゃない」

「リツコの凄い事はこのヘッドセットを付けると脳波で動くの、だからキーボードもマウスも要らないのよ」

「そうなの」

 趣味なのかネコ耳のヘッドセットを自分の頭につけて説明、頷きながら聞いていたナオコだがネコ耳ヘッドセットだけには苦笑した。

「見ててね、スイッチオン!!」

 にゃお〜〜〜〜ん!!

 電源を入れると泣き声と共にネコのCGが表れ、ハードディスクが回転し始める。

「リツコの凄いところは数秒で立ち上がるのよ」

「へえ〜凄いわね」

 某OSより速い、発売されればたちまち売れるだろう。だが・・・

 ガリガリガリギャリギャリギャリギャリ!!

 いつまでたっても立ち上がらずハードディスクから異様な音が聞こえ始めた。

「あれ?あれ?あれ?どうして」

「あっリっちゃん、通風口から煙が」

 通風口から黒い煙とプラスチックの溶けた異臭が漂い始めた。

「え?え?え?うそ〜〜〜」

「火事になっちゃうわよ」

 慌てふためるリツコ、ナオコは冷静に台所に走っていった。

「母さんどうしよう〜〜〜」

「慌てないの、はいっ」

「ああ、パソコンが〜〜〜」

 ナオコはコップに水を汲んできて送風口に水をかけた、リツコはその瞬間パソコンがダメになりガックリと肩を落としたのだった。

「とほほ、さっきまで動いていたのにどうして・・・」

「リっちゃん気を落とさないでまた頑張れば良いのよ」

 リツコの頭を撫でるとなぐさめ、小学生ながらOSを作るリツコに感激した。







「って事があったのよ、それからよくパソコンを数え切れないくらい壊していたわ、懐かしい思い出ね。レイちゃんも改造したくなったらいつでも言ってねパソコンを用意するわよ」

「・・・」

 親娘三代科学者になるのだろうか、だがレイには返事は無い。

「レイちゃん返事は?・・・きゃ〜〜〜レイちゃん!」

「うきゅう〜〜〜」

 ナオコが見たレイは湯船につかりすぎて頬を真っ赤にしてのぼせた姿であった。

「レイちゃん、レイちゃんしっかりするのよ」

「うきゅ〜〜〜おばあちゃまがたくさん居る〜〜〜」

「レイちゃん、レイちゃん!」

「・・・」

 慌てふためき湯船から出して頬をぺちぺち叩くが返事が無い。

「リっちゃん、リっちゃん大変よ〜〜!レイちゃんが〜〜〜」

「どうしたの母さん、レイッ!」

 お風呂場に響くナオコの声に駆けつけたリツコが見た光景はレイが気絶した姿であった。






「う・・・う〜〜〜ん」

「あっレイちゃん気がついた?」

「あれ?おばあちゃま」

 ベッドに横たわるレイ、目を開けるとナオコの顔が映った。

「良かったどうなるかと思ったわ」

「どうしたの?お風呂に入っていたけど」

「レイちゃんね、のぼせちゃったのよ。それでここまで運んだのよ」

「そうなの、でももう大丈夫」

 ニッコリ微笑むとベッドの上で立ち上がり元気をアピール、もう大丈夫なのようである。

「本当良かったわ、あいたたた」

「おばあちゃまどうしたの?」
 
 ナオコはレイの元気な姿に気が抜けたのか腰に手を当てるとその場にうずくまった。


「ふふ、歳かしらね疲れちゃったわ」

「おかあさん呼んでくる」
 
 大好きなナオコの額に汗がにじみ出ている、レイは不安になりナオコの手を握り締めた。

「平気よ、寝れば元気になるわ」

「本当?じゃあ私も寝る」

「レイちゃんと寝るのも久しぶりね」

「うん」









「母さんレイは・・・あら、ふふふ」

 家事を済まして様子を見に来たリツコの瞳に写ったのはナオコとレイが仲良くベッドで肩を並べて寝ているところであった。


 HP開設二周年記念特別企画リクエストSSです。今回はよしはらさんからCGを頂いたのでリクエストは「リツコおかあさん」です。

 今回はナオコさんが登場しました、元気一杯のおばあちゃまです(笑)ナオコさんの性格はちょっと明るくしています。リツコさんは物静か、レイちゃんは明るくなのでレイちゃんはおばあちゃん似ですね(笑)

「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


リツコおかあさんシリーズ Grandma