リツコおかあさんシリーズ

夏祭り

「うわ〜〜人が多い〜〜」

「そうね、レイ迷子にならないようにね」

「うん」

 第三新東京市のとある神社、リツコ達は夏祭りに来ていた。広い境内には露天が並び浴衣を着た人々が楽しんでいる。

「本当に多いわねえ〜〜まったくどうしてこう多いのかしら、暇人どもが〜〜」

 赤い浴衣に身を包み腕組みして人の多さに呆れるのはアスカ、ちなみにリツコとレイはお揃いの水色の浴衣を着ている。

「アスカお姉ちゃんもその暇人の一人なんだよね」

「アタシは違うわよ、この貴重な夏休みの時間を割いて来たのよ、そこら辺に歩いてる暇人と一緒にするのは間違いよ。シンジもそう思うでしょ?」

「そうかな〜?僕は暇だから来たんだけどなあ」

 アスカの力説に賛成することなく答えるシンジ、青い浴衣が似合っている。

「ほら、シンジお兄ちゃんだって暇だから来たんだよ、違うのはアスカお姉ちゃんくらいだよ。シンジお兄ちゃん行こう〜」

「あ、うん」

 レイはシンジの手を握ると境内に入っていった。

「あ、ちょっとシンジ、レイ・・・まったくこのアタシを置いて行くなんて罰が当ってもしらないわよ」

 人ごみに消えていく二人をアスカは頬を膨らませて見ていた。

「アスカ私達も行きましょう」

「そうね、ここにいても貴重な時間が勿体無いわ、遊びまくってやるわよ〜〜〜」

「ふふ」

 拳を震わせ誓うアスカにリツコは苦笑するのであった。




「あ、シンジお兄ちゃん綿菓子買って〜〜」

 レイとシンジの目の前には綿菓子屋、キャラクターの袋が飾られており店員がフワフワの綿菓子を作っている。

「良いよ、どれにする?」

「ええとね」

 並んだキャラクターを選ぶレイ、綿菓子は同じであるが迷うのが子供である。

「おっ、シンジ〜〜アタシも買ってね〜〜」

 二人に追いついたリツコとアスカ、アスカはお小遣いを持っているが自分で買おうとはしない。

「うん、良いよ」

 シンジも拒否はしない、もし拒否したら後が恐いからである。

「私これ〜〜デジコ」

「じゃあアタシはうさだね」

 二人は某人気キャラクターの袋を選び手にとった。

「ええと二人分で・・・」

「シンジ君、私が払うわよ」

「良いですよ、ここは僕が払いますよ」

 リツコは巾着から財布を取り出すが、シンジは断った。

「でも悪いわよ」

 シンジのお小遣いが心配なリツコ、綿菓子二つ買えばかなり所持金が減ってしまう。

「大丈夫ですよ、ミサトさんから臨時のお小遣いを貰いましたから」

「あらそうなの?あのミサトが珍しいわね」

「夏祭りだから血が騒ぐって言ってましたよ。そういえばミサトさんどこ行っちゃったんでしょうね?」

 ミサトもシンジ達と一緒に来たのだがたちまち姿を消してしまった。

「あのミサトの事だから食べ回っているんじゃないかしら?」

「そうですね」

 いか焼きや焼きそばを頬張るミサトが頭に浮かぶ、お色気ゼロである。

「ん〜〜〜〜あまい〜〜〜〜」

「おいし〜〜〜シンジお兄ちゃんは買わないの?」

 綿菓子の甘さに満足な二人、満面の笑みである。

「うん、僕は良いよ。甘いからたくさん食べるのはちょっと苦手だからね」

「そうなんだ、じゃあ少しあげるね。はいあ〜〜〜ん」

 レイは綿菓子を少し千切ると背伸びしてシンジの口に持っていった。

「ん、ありがとう。あ〜〜ん」

 シンジは膝を曲げ少し屈むと綿菓子を口に入れた。

「美味しい?」

「うん美味しいよ、レイちゃんありがとう」

 シンジは微笑むとレイの頭を撫でるのであった。その光景を見ていたアスカは・・・

(むっシンジにあ〜〜〜んさせて尚且つ頭を撫でられるとは、羨ましいじゃないレイ。ようしアタシだって)

「シンジ、はいあ〜〜〜んして」

「え?」

 笑顔のアスカの手には少しの綿菓子がシンジの口の前にあった。

「えじゃないわよ、あ〜〜んよ、あ〜〜〜ん」

「あ、うんあ〜〜〜ん」

 シンジは断る理由が無いのでアスカの綿菓子を食べた。

(よしっ!食べたわね、ふふふこの次は頭撫で撫でよ)

 自分が頭を撫でられる姿を想像し顔がにやけるアスカだが・・・

「シンジお兄ちゃん、お面買って〜〜〜」

「おっとっと、レイちゃん急いだら危ないよ」

 レイがシンジの手を掴み三軒先のお面屋に引っ張って行ったのである。

「レイ〜シンジ君に我侭言っちゃ駄目よ」

(・・・アタシの撫で撫では〜〜〜?)

 二人の後を追うリツコ、取り残されたアスカにはさびしい風が吹きガックリ肩を落とすのであった。




「このお面が良い〜〜」

「これで良いの?」

「うん!デジコ〜〜」

 お面屋、レイが選んだのはデジコである。

「シンジ君、私が払うわよ」

 流石に二度も買ってもらうわけにはいかない、リツコはシンジが財布を開くのを止めると巾着から自分の財布を出した。

「あ、すいません」

「こっちこそごめんなさいね、シンジ君はお面いる?」

「僕はいいですよ」

 シンジは断った、流石に中学生でお面が欲しいとは思わない。

「アタシはうさだ〜〜〜〜!」

 中学生でお面が欲しいものがいたアスカである。すでに顔に装着しレイと遊んでいた。

「シンジお兄ちゃん、デジコ、デジコにょ〜〜」

「シンジ、うさだよ、うさだ〜〜〜」

 楽しむ二人にシンジは心から嬉しくなってくる。

「お、あれは祭りの定番金魚すくい、あれをやらずして祭りに来たとは言えないわ」

 アスカは瞳を輝かせると一直線に金魚すくい屋に向かう、それに続く三人であった。




「アスカ、できるの?」

「はあ〜?シンジ、アタシができないって馬鹿にしてんでしょ?アタシはねドイツに居た頃『金魚すくいの美少女アスカちゃん』で名が通っていたのよ」

「本当?アスカお姉ちゃん凄〜〜〜い」

「ふっふっふっふレイ、よ〜〜〜くアタシの技を見て師と仰ぎなさい」

 素直に関心するレイ、アスカは腰に手をやり鼻高々である。

「リツコさん、ドイツに金魚すくいってあるんですか?」

「さあ、聞いたこと無いわね」

 そのアスカを疑問に思う二人、見る事にした。

「さあ全部すくうわよ」

「アスカお姉ちゃん、頑張って」

 瞳を閉じると精神を手に集中させ瞳を開き水に泳ぐ金魚を捕らえる。

はああああ!!

「「「おおっ!!」」」

 三人は驚きの声を上げた。アスカの手が水面を切るように右から左に動くと水柱を上げ金魚が空中に跳ねた。その金魚を次々とお椀で受け止めた。

「久しぶりだからこのくらいね」

 お椀に入っている金魚は五匹、一瞬の出来ことであった。

「アスカお姉ちゃん、凄〜〜〜い!尊敬しちゃう」

「アスカ凄いね、見直したよ」

「ふふふふ、そうそうアタシは凄いのよ。ってシンジ!見直したってなによ、今までアタシを見くびっていたわけ?」

「そ、そんなんじゃないよ」

 詰め寄られるシンジ、額から汗が流れた。

「ふん、なら許してあげるわよ。レイやってみる?」

「うん」

 レイはアスカのやり方を見様見真似で実行するが・・・

「あれ?あれあれ?」

「あらあら、アスカのようにはいかないわね」

「レイちゃん頑張れ」

 一匹もすくえずに紙が破けてしまった。その姿をが可愛く笑うリツコとシンジ。

「ん〜〜レイにはまだ無理かな〜見てなさいこうやるのよ」

 アスカの瞳が光り、手が水面を横切るとまた金魚が次々と跳ねた。

「アスカお姉ちゃん、どうしてそんなにできるの?」

「これをマスターするには三年はかかるわ、レイも特訓すればできるようになるわよ」

「本当?じゃあ私も特訓する〜〜」

「レイちゃん、そんなくだらない事特訓しなくていいから・・・」

「シンジ!金魚すくいの特訓がくだらないですって?」

「い、いやくだらない訳じゃなくて・・・そのあの・・・」

 アスカに怒鳴られ後ずさりするシンジ、このままいけば命が危ない。

「まったくアンタは夏祭りをわかっていないわね、本当に日本人なの?罰として焼きそばをおごりなさい」

「ええ〜?アスカだってお小遣い持っているだろ〜〜」

「ふっシンジ、アンタその歳で死にたいようね」

 指を鳴らすアスカ、数秒後ここは血の海になるだろう。

「は、はい喜んで焼きそばをおごらせてもらいます」

 血の海にならずにすんだ、その代償としてシンジのお小遣いが消える。

「レイ、金魚すくいが上手だとこんなに得をするのよ」

「うん、わかった」

「とほほ・・・散財だあ」

 財布の中身を確かめ涙を流すシンジ、その姿を見つめるリツコは・・・

(シンジ君、無様よ・・・)

 哀愁漂うシンジに同情?するリツコであった。


 夏の楽しみはお祭り、露天をまわるのが良いですよね。。

 貴重な時間?を割いてきたアスカちゃんですかレイちゃんと一緒に楽しんでいますね、シンジ君とリツコさんはお守り役(笑)

 金魚すくいが得意なアスカちゃん、ドイツにもあったんですね(笑)レイちゃんはアスカちゃんに弟子入りして金魚すくいをマスターするのでしょうか(^^)

 「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


リツコおかあさんシリーズ 夏祭り