リツコおかあさんシリーズ
夏の涼み方
「あっちいわね〜〜〜」
「暑いって、アスカお姉ちゃんクーラーを独り占めしないでよ」
葛城家のリビング、アスカはクーラーの下に大の字に寝転がり一人冷たい風を満喫している。レイは少ししか風が来ないので頬を膨らませて怒っていた。
「しょうがないわね、横に来なさい」
「うん、ペンペン」
「クエクエ」
レイはペンペンを抱きかかえるとアスカの横に寝転がった。
「ふい〜〜〜天国天国ぅ〜〜〜」
「クエクエ〜〜〜」
冷たい風がレイとペンペンの身体に当り、暑さから解放される。
「本当、こうやってると天国ね〜〜〜」
「グエエッ」
アスカはペンペンを力いっぱい抱きしめると柔らかい羽毛を頬で感じ心地良さが最高に高まってくる。その反対でペンペンは口から泡を吹き出していた。
「わああ、アスカお姉ちゃんペンペンが死んじゃうよ」
「おわっ、ちょっと力を入れすぎたわね」
「クエエ・・・」
「ペンペン大丈夫?もうアスカお姉ちゃんは怪力なんだから」
レイの介抱によってペンペンはなんとか三途の川より戻ってきた。
「なに〜〜〜アタシが怪力ですって〜?か弱い乙女に何を言うのよ。そんな事言う悪い子はこうよ!」
「きゃ〜〜〜やめて〜〜〜きゃははは」
アスカはレイを抱きしめ脇をくすぐり始めた。
「ふっふっふっふ、このアスカ様に逆らうとこうよ。お〜〜〜ほっほっほっほ〜〜〜〜」
「きゃはははははは」
アスカとレイの高笑いが家中に響いた。
「二人とも何やってるの。スイカ切ったから食べましょう」
台所からスイカを切ったリツコとシンジがやって来た。大量に切られたスイカ、みんなで食べるにはじゅうぶんな量である。
「「は〜〜〜い」」
アスカとレイはスイカに目を輝かせると、高速でテーブルの前に座った。
「二人とも元気だね」
暑さと家事の疲れで多少バテ気味のシンジ、二人の元気をうらやましく思った。
「「いっただきま〜〜〜す」」
しゃ〜〜〜〜くしゃくしゃくしゃく〜〜〜〜〜
アスカは豪快にかぶり付くと瞬く間に食べ干した。
「アスカお姉ちゃん、はや〜〜〜い」
「ふふ、スイカの醍醐味はね早く食べる事にあるのよ。アンタのようにスプーンで食べていたら日が暮れちゃうわよ」
アスカは口の中に溜まっていたタネを吐き出すと二つ目のスイカに手を伸ばした。レイはスプーンでスイカに穴を開けトンネルを作りながら食べているので遅くなってしまう。
「良いもん、こうやって食べるのが美味しいもんおかあさんもそう思うでしょ?」
「ふふ、そうね。アスカも女の子なんだから上品に食べたらどうなの」
リツコはアスカの豪快な食べ方は見ているも気持ちいいが、女の子の食べ方としてはちょっと下品であると思った。
「良いじゃない、スイカ早食い女王の名にかけて食べているのよ」
「そんな女王があるの?女性同士なら良いんだけど、仮にも男の子のシンジ君が居るのよ。恥ずかしくないの?」
年頃の女の子が男の子の前では猫を被って大人しくなるが、シンジの前では関係なかった。
「べっつに〜〜〜、シンジだもん」
「は、はは・・・」
男として認識されていないシンジは半笑いするしかなかった。
「アスカったら、ねえシンジ君は上品に食べているレイと豪快に食べているアスカの食べ方、どちらが良いかしら?」
「え?そのあの・・・レイちゃんかな」
いきなり質問されたシンジ、二人見て答える。やはり正直に言ってレイを選んだ。
「わ〜〜い、シンジお兄ちゃん私を選んでくれた〜〜」
が〜〜〜〜ん
手放しで喜ぶレイに頭にN2を落とされたくらいに驚くアスカ。アスカの食べる手が止まった。
(そ、そうなの?シンジは上品に食べるのが良いの?この食べ方は駄目なの?)
シンジを気にしてない素振りをしているが本心は気になっている。多少なりともショックを受けた。
「アスカ、どうしたの?もう一つ食べる?」
アスカの気持ちを知らない鈍感なシンジ。
「え、ええ頂くわ。ス、スプーンもちょうだい」
「え?そのままで食べないの?」
「い、良いじゃないの。急にスプーンで食べたくなったのよ、文句ある?」
「も、文句は無いよ、取ってくるよ」
真っ赤になって怒るアスカ、シンジは慌てて台所にスプーンを取りに行った。その様子を見ていたリツコは表情を顔に出さず心で笑っていた。
(ふふ、アスカったら、何だかんだいってシンジ君を意識してるわね)
「はい、持ってきたよ」
「ん、ありがと」
シンジから受け取ったスプーンでレイと同じようにスイカをくりぬき上品に口に運んだ。
「んっおいし〜〜〜〜、シンジ美味しいわね」
食べたあとの演出も欠かさない、ホッペに手をやり首を少し傾け笑顔を作った。
「ん、うん」
アスカの表情にドキリとするシンジ、心臓が思わず高鳴った。
(ふっふっふっふ、どうかしら?アタシだって上品にできるわよ。この勝負貰ったわねレイって、おい!)
勝負と勘違いしているアスカ、レイの方を向くと・・・
「ペンペン、あ〜〜〜ん」
「クエ〜〜〜〜〜」
ペンペンにスイカをやっているレイの姿があった。
(くう〜〜〜、このアタシを無視するなんていい度胸ね。誰が一番か教えてあげるわ)
勘違いして闘志を燃やすアスカ、レイはペンペンと美味しくスイカを食べており気づいていない。気づかないのが当然だろう。
(アスカ、間違っているわよ)
リツコはそんなアスカを見て呆れるのであった。
(どうやってレイを負かそうかしら・・・ってそれ良いわね)
アスカは声を殺して笑うとスイカをスプーンでくりぬいた。
「シンジ、あ〜〜〜ん」
「へ?」
「へじゃないの、あ〜〜〜ん」
レイとペンペンのパクリである。
「わお〜〜アスカお姉ちゃん、やるぅ〜〜〜」
「こ、こら大人をからかうんじゃないの」
「レ、レイちゃん」
茶化すレイ、シンジとアスカの顔は真っ赤かである。
「あ、暑い暑い〜〜〜ねえおかあさん、部屋が暑くなったね。温度下げよう」
「ふふそうね」
リモコンで温度を下げるレイに笑うリツコ、そして・・・
「ほ、ほらあ〜〜〜んしなさいよ」
「え、でも・・・」
「は、早く!」
「あ、うん、その・・・」
スイカを差し出すアスカだが、なかなか口にしないシンジ。この状態がずっと続いたのであった。
最後はLASになってしまいました(^^;)
暑い日には冷えたスイカ、レイちゃんとペンペンを見たアスカちゃん速攻でパクリましたね(笑)
食べさせようとするアスカちゃんですが、シンジ君は恥ずかしがって食べてくれませんね。
その様子を見ているリツコさん、若い頃を思い出したのかもしれないですね。
「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
リツコおかあさんシリーズ 夏の涼み方