リツコおかあさんシリーズ
大掃除
今年も残りあとわずか、今日はネルフの仕事納め、リツコは研究室で今年最後の大掃除をしていた。
「ふう〜〜、結構あるわね」
ホウキを止めると室内を見まわした、所狭しと色々なものが散らばっている。
「どうしてこんなに増えるのかしら?」
大多数は研究の資料やレポート、毎日送られてくるので片付ける暇が無く散らかる一方である。
「どーんと捨てちゃいたいけど捨てるわけにはいかないのよね」
ほとんどが重要な書類、一枚無くしただけで研究に支障が出てしまう。
「今日中に終わるかしら?・・・無理ね」
目算して時間を割り出すが一日や二日でできない。
「ミサトに手伝ってもらおうかしら?どうせやってないだろうし」
今の時間ミサトも自室で掃除をしているはずなのだが、リツコの予想は当たっている。散らかった部屋でビールを飲んでいる事だろう。
ピッピッピ
受話器を取ると内線ボタンを押した、相手は当然ミサト。
「うっは〜〜〜〜い、もしもし〜〜ミサトさんはただいま掃除ちゅうよん、手伝ってくれたらイイコトしてア・ゲ・ル」
「・・・」
リツコは呆れた、ミサトの声で明らかに酔っていることがわかる。
「さあさあ、ミサトさんの部屋へGO〜〜よん」
「ミサトさん、掃除してくださいよ」
受話器から微かにシンジの声が聞こえる、どうやらシンジが掃除をしているようだ。
(・・・シンジ君気の毒に)
リツコはシンジに同情した、そして本当にミサトが保護者で良いのだろうかと考え始める。
「もしもし〜〜どなた〜?黙ってちゃわかんないけど〜〜〜お掃除するから切るわよん」
「何がお掃除よ、シンジ君にやらせてビール飲んでいるんでしょ」
「あ〜〜その声はリツコね〜どういっぱいやる〜〜?」
「掃除しなさい!掃除!」
酔っ払いにキレるリツコ、こめかみに怒りマークが浮びあがる。
「掃除してるわよん、ほらキュッキュッキュッキュ」
「・・・」
口だけで言う酔っ払いに言葉が出ない、頭痛がしてきて頭を押える。
「ほらキュッキュッキュッキュ、見えてないのが残念。これがミサトさんのお掃除よん」
「演技は良いからシンジ君とかわってちょうだい」
「え〜〜〜、もっと聞いてよキュッキュッキュッキュ」
「良いからかわりなさい!!」
温厚なリツコも流石にキレた。
「もう怒りっぽいなあ、カルシウムちゃんと取ってる?」
「取っているわよ!早くかわって」
「はいはい、シンちゃ〜〜ん、怒りっぽいおばさんから電話よ」
受話器の通話口を押えないで大声でシンジを呼ぶ、当然その声はリツコにも聞こえる。
(ミサト・・・絶対に改造する!)
「もしもし」
「あっシンジ君、リツコだけど」
シンジが出た途端、口調が半音高くなる。
「リツコさんですか、何か御用ですか?」
「ええ、ちょっと悪いけれど部屋の片付けを手伝ってくれないかしら?」
「えっ今ミサトさんの部屋をしているんですけど」
「ミサトの部屋なんか良いのよ、どうせ一日で汚れるでしょう。アルバイト料弾むわよ」
「わかりました。今から速攻で来ます!」
ガチャン!
一方的に電話を切られた。シンジが大急ぎで研究室に走ってくるのが目に浮ぶ。
「ふふ、ミサト、ゴミの部屋で年を越すと良いわ」
先ほどの事を根に持っているようだ。
「失礼します」
電話を置いてから五分もしないうちにシンジがやってきた。猛スピードで走ってきたのだろう、額に汗が浮び肩で荒い息をしている。
「シンジ君、悪いわね。手伝ってもらって」
「いいえ、リツコさんの為ですからね。どう片付ければ良いですか?」
リツコの為よりアルバイト料の為だろう。
「ファイルや資料を順番に棚に並べてちょうだい」
「はいっ!わかりました」
シンジは部屋を見まわすと片付ける順番を決め行動に移す。
テキパキテキパキテキパキテキパキ
シンジの手際の良い片付け、おもわず擬音が聞こえてきそうである。リツコはシンジの片付けに感心すると床の掃除を始めた。
「シンジ君、手際が良いわね」
「はい、家でもやっていますから」
「ミサトは・・・するわけないわね。アスカは掃除しないの?」
「たまにするんですけど、逆に散らかっちゃうんですよ。不思議ですよね」
「そ、そうなの、確かに不思議ね」
口を動かしながらと片づけをするシンジ、その姿にリツコは同情を覚える。
「だから家の掃除は僕が全てするんですよ」
(・・・シンジ君、可哀想、可哀想すぎるわ)
「ええとこれは、こっちで良いかな」
「シンジ君」
「はい?」
「辛かったらいつでもウチに来てねレイも喜ぶから」
涙を流してシンジの両手をガッシリ握った。
「は、はあ・・・じゃあ今度遊びに来ますね」
「いつでも来てちょうだい、歓迎するわよ。ああっ涙が止まらない」
「?」
ハンカチを目元に押えるリツコにシンジはわからない。
(ゴミが目に入ったのかな?)
「これでお終いっと」
「お疲れ様、はいアルバイト料よ」
開始してから2時間、掃除が終了した。本来なら3日は掛かるのだがシンジのおかげで早く終わった。リツコはコーヒーと白い封筒をシンジに渡す。
「ありがとうございます」
リツコと白い封筒に一礼するとコーヒーを口に含む。
「弾んでおいたから期待して良いわよ」
「そうですか、楽しみだなあ〜〜」
早速封筒を開けて中身を確認してみる。
「・・・えっ!こんなに?良いんですか?リツコさん」
シンジの予想していた額より多かったようだ。
「ええ、足りなかったら言ってちょうだい」
「と、とんでもない十分足りますよ。ありがとうございます」
「これからもちょくちょくお頼むと思うから、お願いするわね」
「はい、任せて下さい!」
胸をドンと叩くと自分をアピールする。シンジにとって良いアルバイトである。
「たっだいま〜〜〜、あっシンジお兄ちゃん」
「あらシンジ?こっちに来てたの」
レイとアスカがやって来た。レイは素早くシンジの胸に抱きつく。
「レイちゃんはいつも元気だね。うん掃除をしてたんだよ」
「ミサトの部屋は?」
「ミサトさんは寝ているから来年でも良いと思うよ」
もうミサトの部屋などどうでも良いシンジである。
「それじゃあそろそろオヤツだから食べに食堂に行きましょうか」
多少小腹が空いてきた。リツコは財布を手に取ると部屋を出る準備をする。
「オヤツ〜〜♪、私チョコレートパフェ〜〜、シンジお兄ちゃん行こう」
レイはシンジの腕を引っ張ると部屋を出て行く。
「じゃあアタシはストロベリーパフェね」
「好きなものを食べて良いわよ」
続いてアスカ、リツコが綺麗になった部屋を後にする。これで年を越す準備ができた。
その頃、ミサトの部屋は・・・
「あれえ〜〜?シンちゃんどこに行っちゃったの〜?お掃除頼みたいのに〜〜〜」
掃除していた部屋がすでに散らかっていた。
大掃除、流石の主婦リツコさんでも一人では無理でしたね。でも主夫シンジ君のおかげで終わることができました。良かった良かった。
ミサトさん、自分の部屋なのにシンジ君にやらせる・・・シンジ君、リツコさんちへ引っ越した方が良いですね(笑)
「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
リツコおかあさんシリーズ 大掃除