リツコおかあさんシリーズ

プリン

「おいし〜〜〜」

 午後三時、リツコの研究室でレイ、アスカ、シンジ、リツコはおやつにプリンを食べていた。

「プリンってどうしてこんなに美味しいのかな〜」

「決まっているでしょ、甘いから美味しいのよ」

 一口一口、口に入れるたびに甘さが広がるプリン、レイとアスカは堪能した。

「わおぅ〜美味しそうなの食べているわね〜私もちょうだい」

 ちょうどそこへミサトが予告無しにやって来た。

「はいはい、ちゃんとミサトの分も用意してあるわよ」

「サンキュ〜」

 仕事をサボって来ることを予想していたリツコは冷蔵庫から一つプリンを出した。

「まったくこの時間になると来るんだから、ちゃんと仕事しているの?」

「だ〜〜いじょうぶ、だいじょうぶっ!仕事はちゃんと優秀な部下に任せてあるわよん」

「はあ〜」

 スプーンをくわえふたを開ける姿にリツコは一生懸命仕事をしている部下の姿が浮かび、だらしない上司にため息が漏らすのであった。

「んんっ!美味い!リツコこのプリン美味しいわね、どこで買ったの?」

「スーパーよ、三個で100円のお買い得品」

「本当?三個100円?それ以上に美味しいわ」

「ミサトさん、たまに買ってくるでしょう。それと同じプリンですよ」

 主婦リツコと主夫シンジ、お買い得品は見逃さない。

「そうなの?家で食べる時とはまた違う美味しさよ」

「仕事サボって食べれば美味しくなるわよ」

「わおっこれは一本取られたわね」

 皮肉を言うアスカに自分の額をパンと叩いておどけるミサト、サボっている罪悪感は無い。

「へ〜〜お仕事をサボって食べると美味しいんだ」

「レイちゃんそれは違うよ、ミサトさんだけ特別なんだ。仕事をサボっても味は同じなんだよ」

「ふ〜〜ん」

 レイに間違った知識を与えないように訂正するシンジ、良い兄である。

「ノンノンノン、シンちゃんそれは違うわよん。シンちゃんだって学校をサボってプリンを食べたら天国にも昇る美味しさになるわよ」

「なりませんよ」

「うそっ!美味しくなるの?」

「本当よアスカ、今度サボって食べてみなさい。すんごく美味しいわよ」

「よし!明日学校サボろうっと、シンジ!プリン買っておいて」

「アスカ、ウソだよ騙されてるよ」

 騙されないシンジと騙されるアスカ。

「え〜〜ミサトが美味しいって言っているじゃない。明日はサボるの〜」

「サボったら駄目だよ。お弁当と一緒にプリンも持って行くからサボらない」

「えっお弁当にプリンも?それじゃあ行く〜〜」

 ようはプリンが食べられれば良いアスカ、手放しで喜んだ。

(シンジ君大変ね)

 その様子を見ていたリツコはシンジの大変さに同情した。




「そうだ!プリンと言えば・・・」

 ミサトは何かを思い出したかのように冷蔵庫を開け中身を見回した。

「これこれ〜プリンにはこれよ」

「ミサトさん、それって醤油じゃないですか」

「そっ醤油よん、これをこうするのよ」

 ミサトの手に握られていたのは醤油の瓶、そしてふたを開けると食べかけのプリンにそそいだのである。

「うげっミサトなにやってるのよ」

「ミサトお姉ちゃんプリンが勿体無い」

 ミサトの行為に舌を出していやな顔をするアスカ、プリンが勿体無い。

「ふっふっふっふ、アスカ知らないの?プリンに醤油を混ぜて食べるとウニの味がするのよ」

「本当?ウニなの?」

 ウニが大好きなアスカは瞳を輝かせた、和食通である。

「そうよ、お金が無かった学生時代よくこうやって食べていたわよね、リツコ」

「えっおかあさんもやっていたの?」

「お、おかあさんはやっていないわよ、やっていたのはミサトだけよレイ」

 おもいっきり否定するリツコ、ミサトと同類と思われるが嫌である。

「な〜〜に言っているのリツコ、あんたも食べたでしょう」

「え?おかあさん食べたの?」

「そ、それはあなたが食べろって強引に言うから。レ、レイ、おかあさんはね食べたけど一口だけよ食べたのは、それ以上は食べていないのよ」

「ふ〜〜〜ん、ミサトお姉ちゃんそれ美味しい?」

 プリンに醤油と初めての組み合わせに興味があるレイ、食べたくなってくる。

「ええ美味しいわよ、食べてみる?」

「うんっ」

「だ、駄目よレイ、ウニならちゃんと食べさせてあげるからそれだけはやめなさい」

「え〜〜なんで〜〜?」

 昔の記憶が甦ってくる、愛娘に自分と同じ体験をさせてはならないと制止するリツコ。

「とにかく駄目なの!言うことを聞かないとおかあさん怒るわよ」

「は〜い・・・」

 残念なレイ、リツコが怒ると恐いのでこれ以上我侭を言うのをやめた。

(ウニの味がするのにどうしてリツコは食べさせないのかしら?)

 ミサトは美味しそうに醤油かけプリンを食べており、リツコはレイに食べさせなかった。二人の違いを疑問に思うアスカ、そして・・・

(よしっ行くわよアスカ!)

 アスカは醤油の瓶を取ると食べかけの自分のプリンに醤油をかけた。

「ア、アスカ」

 隣で食べていたシンジは驚いた、まさかアスカがするとは思わなかったのである。

「アスカお姉ちゃん、良いな〜〜」

 そして羨ましそうに見つめるレイ。

「こういうのはやってみなけりゃわからないでしょう、何事にもチャレンジよ」

「ををっよく言ったわアスカ、同志よ」

「無謀なチャレンジだよ」

 同志が増え歓迎するミサトに呆れるシンジ。

「どれ〜〜これがウニね」

 パクッ!

 大きな口を開けて一口・・・

「・・・」










 静まり返る室内、顔が真っ青になるアスカ・・・

何よこれ〜〜〜プリンと醤油の味しかしないじゃないのよ〜!

「やっぱり・・・」

「無様ね」

 結果がわかっていたシンジとリツコ。

「そうなのアスカお姉ちゃん、プリンと醤油の味しかしないの?」

「不味いったらありゃしないわよ。ミサトッ!これのどこがウニなのよ」

「ウニじゃないの、この触感本物と間違えそうだわ」

「うげ〜〜〜プリン損しちゃったじゃないのよ。ミサトのバカ〜〜〜」

 ジュースを流し込み口内の醤油の味を取り去った。

「シンジッ!アンタのプリンをよこしなさい!」

「え〜〜やだよ〜」

 醤油で自分のプリンが台無しになりまだ食べているシンジのプリンが目に入る。

「良いからよこしなさい、アタシのを代わりに食べなさい!」

 強引に奪い取ると自分のプリンをシンジにおしつけた。

 がつがつがつがつっ〜〜

 一気に食べるアスカ、心なしか耳が赤い。

「あ〜〜美味しかった」

「あ〜〜僕のプリンが〜」

 そんなアスカを知らずに残念なシンジ、手元には醤油がかかったプリンが残る。

「シンジお兄ちゃん、私の半分あげる」

 レイは自分のプリンをシンジに渡した。

「レイちゃんありがとう、気持ちだけ貰っておくよ。それはレイちゃんの分だから自分で食べて、僕は試練と思ってこれを食べるよ」

「シンジお兄ちゃん・・・」

(シンジ君、試練って・・・どういう事かしら?)

 シンジの意味不明な言葉に首を傾げるリツコ。

「早く食べなさいよ!」

 急かすアスカ、なぜか頬が赤い。

「わ、わかったよ・・・」

 ぱくっ!

 意を決して一口食べるシンジ・・・

「気持ち悪い・・・」

 口を押さえ意識が飛ばないように頑張るシンジと隣では・・・

「美味しいわ〜〜ご飯が欲しくなるわね。リツコ〜ご飯ない〜〜?」

「無いわよ・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 ミサトの味覚に呆れるリツコ達であった。


 ミサトさん味音痴です(わかりきった事ですね)

 楽しいおやつが一転、地獄のおやつにかわりました(シンジ君が^^;)アスカちゃんチャレンジしましたがやっぱり醤油とプリンの味しかしない、でもそのお陰でシンジ君の食べかけのプリンが手に入りました(笑)

「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


リツコおかあさんシリーズ プリン