リツコおかあさんシリーズ

リツコさん、迷子になる


「レイ、ちょっとここで待っててね」

「は〜〜〜い」

 リツコとレイはデパートに買い物に来ていた。四階の婦人服売り場SALE会場の片隅のベンチにレイを座らせるとリツコは目を輝かせてセール会場に向かって行っていく。

「おかあさん頑張ってね〜〜」

「掘り出し物を見つけてくるわね」

 高給取りのリツコ、セールに来なくてもよいのだが安売りと聞くと来てしまうのが主婦の性である。






「ふんふんふんふ〜〜〜ん」

 一人になったレイ、鼻歌を歌いながら周りを見回し足をブラブラさせ暇を潰す。

「ふあああ、つまんないなあ」

 何もしない時ほど時間が長く感じるものはない、あくびがでてくる。

「まだかかりそうだなあ〜〜」

 セール会場は大混雑、リツコは選んだ衣服を片手に抱えまだ夢中で選んでいる。

「そうだおもちゃ見てこよう」

 少しの間なら大丈夫と思い七階のおもちゃ売り場に向かうのであった。







「うわおぅ」

 おもちゃ売り場に着いたレイの瞳に映ったのは自分が欲しいおもちゃばかりであった。

「可愛い〜〜買ってもらおう〜〜〜」

 肌触りの良いネコのヌイグルミ、頬擦りすると気持ちよくておもわず顔が緩む。

「おわおぅ、このゲームソフト面白〜〜〜い買ってもらおう〜〜〜」

「あっ、えヴぁんげりおんのとれいでぃんぐかーどだ買ってもらおう〜〜〜」

「おままごとセットだ、シンジお兄ちゃんとやりたいな買ってもらおう〜〜〜」

 レイの買ってもらおうリストに次々と書き込まれていくおもちゃ、時間はどんどん過ぎていく・・・






「ふう〜〜満足だわ」

 両手に袋を持って満足顔のリツコ、白熱した模様で額には汗が輝いている。

「さあてレイは・・・あら?」

 レイが居るベンチを見るとそこには誰も座っていなかった。

「レイ?レイ?」

 ベンチに近寄って周りを見回すがレイの姿は無い。

「どこに行ったのかしら?待っていなさいって言ったのに・・・おもちゃ売り場かしら」

 レイが行きそうなところを頭に思い浮かべるとおもちゃ売り場しかない、リツコの足は七階へ向かう





「ふう〜〜満足ぅ」

 おもちゃを堪能したレイ、リツコと再開したらまたここに来て買ってもらおうとシミュレーションは完成し四階の婦人服売り場に戻る。

「おかあさんは・・・あれ?」

 セール会場を見るとそこはすでに人の山は無くガランとしていた。

「おかあさんどこ行ったのかなあ?」

 周りを見回すがリツコの姿は無い。

「しょうがない、探してみようっと」




「さあてレイの姿は・・・」

 おもちゃ売り場に着いたリツコ、レイを見つけるために売り場を隈なく歩き始める。

「へえ〜〜最近は精巧に作られているわね」

 先ほどレイが見たネコのヌイグルミ、頬擦りしていみる。

「この肌触り、本物を追求しているわね。開発者はネコマニアとみたわ」

 同じネコマニアとしてヌイグルミのできに感心するのであった。




「おかさんどこかな?」

 四階をちょこまかと歩き回り探すがリツコの姿は見つからない。

「ふう〜〜おかあさんには困ったなあ、迷子になるなんて」

 



「あのこったらどこに行ったのかしら?」

 おもちゃ売り場を全て周ったがレイの姿は見つからない。

「まさか・・・迷子に?」

 額に冷や汗が流れ始める。

「ど、どうしましょう」

 オロオロし始め周りを見回すがやはりレイの姿は無い。

「レイ〜〜レイ〜〜〜」

 歩くスピードが速くなり周りを見るスピードも速くなったがやはりレイの姿は無い。




「もう〜おかあさんが迷子になるなんて聞いた事ないよ〜〜迷子になるなんて・・・ひっくひっく」

 歩く足が止まり俯くと瞳に涙が滲んできた。

「迷子に迷子に・・・迷子になっちゃったよ〜〜〜」

 瞳から大粒の涙が流れ始めた。

「うう、泣かないもん泣かないもん・・・ひっくひっく」

 瞳を手の平で押さえつけて涙が出ないようにするがどうしての流れてしまう。

「おかあさん、おかあさん〜〜〜ひっくひっく」

 心細さですでに我慢の限界、爆発しそうである。

「レイじゃない、なにしてんの?」

 レイの背中から聞こえる聞き覚えのある声、後ろを振り向いてみると。

「アスカお姉ちゃん、うぐ、ひっく」

 アスカであった、レイの涙に首を傾げている。

「う・・・うわ〜〜〜〜ん!!!

 爆発、アスカに抱きつくと声を張上げ泣きじゃくり始めた。

「ちょ、ちょっとどうしたのよ、いきなり泣き出して?」

「おかあさんが、おかあさんがね、迷子になっちゃったの」

「リツコが迷子って、アンタが迷子でしょうが」

「違うの、おかあさんが迷子なの」

「はいはい、わかりました。ほら涙を拭いて」

 自分が迷子でないと言うレイに呆れるアスカ、ポシェットからハンカチを取り出すとレイの涙を優しく拭いてやった。

「うぐ、ひっくありがとう・・・ひっく」

「ほらもう泣かないの、探してあげるから」

「うん」

 レイが心細くならないように手を握り、携帯電話を操作し始めた。





「ああレイ〜〜レイ〜〜〜どこなの〜〜?」

 ひたすら探しまくるリツコ、髪を振り乱し背中は汗で洋服が張り付いている。

「これだけ探して居ないなんて、まさか誘拐・・・」

 不安が頭をよぎる、その時・・・

 ♪♪♪〜〜〜

 携帯の着信音が鳴り始めた。

「まさか誘拐犯から?」

 すでにレイが誘拐されたと思い始めている、震える手でバックから携帯を取り出し画面を見る。

「アスカからだわ」

 着信履歴にアスカの名前が表示されている、震える指でボタンを押した。

「もしもし、アスカなの大変なのレイが!!」

「はいはいわかっているわよ、レイがいないんでしょ」

「ど、どうしてわかるの?」

 驚くリツコ、おもわずアスカが超能力者でないかと疑ってしまう。

「だってアタシと一緒にいるもの」

「一人でいるところを見つけたわよ」

「はあ〜〜〜良かった」

 緊張の糸が切れ、その場に座り込んでしまった。

「今どこに居るの?連れて来るわよ」

「え、ええ七階のおもちゃ売り場よ」

 ずっとおもちゃ売り場を探していたリツコであった。

「わかったわ、今から行くから」









おかあさん!

レイ!

 七階に着いたアスカとレイ、レイはリツコの姿を見つけると声を上げてリツコの元に走った。

「おかあさん〜〜〜」

「ごめんなさいね、さびしかったでしょう」

 抱きしめあうと温もりを確認しあった。

「アスカ助かったわ、保護したのがアナタで誘拐されたと思ったわ」

「誘拐って深く考えすぎよ」

「そんな事無いわよ、レイは可愛いんですもの十分にありえるわよ」

「そ、そうね・・・」

 我が子の溺愛ぶりに呆れるアスカであった。

「ねえおかあさん」

「ん?なあに」

「あのねえ、ネコさんのぬいぐるみが欲しいの」

 感動の再会を終えたレイはここがおもちゃ売り場なのでさっそくおねだりに移った。

「ええ、良いわよ」

 ニッコリ微笑んで頷くリツコ、ネコのぬいぐるみは先ほど触っており言われなくても買おうと思っていたのである。

「うん!」

「じゃあアタシは行くわよ」

「何か予定でもあるの?休憩でもしていかない?」

「別に無いから良いわよ」

 それからネコのぬいぐるみを買い、三人で最上階のレストランに向かった。





「う〜〜〜ん、美味しい〜〜〜」

 チョコパフェを口いっぱいに頬張るレイ、満面の笑みである。


「ふう〜〜一気に疲れちゃったわ」

「まったく、そんなに探さなくても店内放送で呼びかければ良かったのに

「そ、その手があったわね」

「リツコともあろうものがお粗末ね」

 店内放送が考え付かなかったリツコ、一瞬固まりアスカは呆れるのであった。

「ま、まあ良いわ。それよりアスカは一人で来たの?シンジ君は?」

 アスカの隣にいつもいるシンジの姿が見えない。

「あのバカ、バカ達と芦ノ湖にバス釣りに行ったのよ」

 バカ達とは無論トウジとケンスケである。

「そう、今日は天気が良いしね」

「別に関係ないわよ、まったく釣っても逃がすんだから何が面白いかわからないわ」

「ふふ、残念ね折角のデート日和だったのにね」

「べ、べべべ別にデートをするんじゃないわよ、アイツはただの荷物持ちなんだからね」

 首を大きく左右に振って否定するが顔が真っ赤である。

「ふふ、そういうことにしといてあげるわ」

「アスカお姉ちゃん、シンジお兄ちゃんとデートだったの?」

「違うわよ、子供は食べてなさい」

「アスカお姉ちゃん、恐〜〜〜い」

 恐がってはいない、笑っている。

「がるるるるるる、食べないんなら食べちゃうわよ」

 素早くレイのチョコパフェを奪い取ると猛烈な勢いでスプーンを動かし口に入れる。

「あ〜〜〜食べるのに、返してよ〜〜」

「罰よ罰、黙って見てなさい」

「うええ、おかあさん」

「アスカはねシンジ君とデートができなかったから気が立っているのよ、そっとしておきなさい」

「リツコ!違うって言っているでしょ」

 口の周りにチョコを付けて否定をするがリツコには全然信じでもらえない。

「そうなんだ、じゃあ全部あげる」

「だあああレイまで違うって」

 アスカの言い訳は二人には通用しないだろう。







「ごちそうになったわね」

「こっちこそ助かったわ」

「またね、バイバイ」
 
 休憩を終えレストランを出る三人、アスカは別の店に行きリツコとレイは買えるのである。

「レイ、もう迷子になるんじゃないわよ」

 アスカはレイの頭をくしゃくしゃかき回しながら軽くデコピンをして注意を促がす。

「アスカお姉ちゃんこそ、今度はシンジお兄ちゃんとデートできると良いね」

 レイはアスカの頬を軽くつねるとニッコリ微笑んだ。

「むっ言ったわね、レイのくせにこのこの〜〜」

 レイの両頬を掴みクネクネこねくり回した。多少怒りが入っている。

「むぎゅう〜〜〜痛ひ〜〜」

「今度言ったわ、誘拐しちゃうわよ。じゃあね」

「うん、バイバイ〜〜〜」
 
 クルリと背を向けると別の店に向かった。

「じゃあ帰りましょう」

「うん」

 レイはしっかりとリツコの手を握り締めた。

「あらあら、ちょっと強いわよ」

「こうした方がおかあさんが迷子にならなくて済むもん」

「ふふ、そうね、これなら迷子にならなくて済むわね」
 
 しっかりと握り合う手と手、これなら再び迷子になる事はないだろう。


 HP開設二周年記念特別企画リクエストSSです。今回は庵舞麗羅さんからCGを頂いたのでリクエストは「リツコおかあさん」です。

 主婦のリツコさん、やっぱり安売りには目がないですね、レイちゃんを置いていざ会場へ。

 でも待っているレイちゃんは退屈、ちょっとの間ならとおもちゃ売り場に行きましたら、リツコさんが迷子に(笑)

 オロオロするリツコさん、そんな時アスカちゃんからの電話が、うんうんアスカちゃんと一緒で良かった良かった。

 帰りにはしっかりと握られた手、絶対に迷子にならないですね(リツコさんが^^)

「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


リツコおかあさんシリーズ リツコさん、迷子になる