リツコおかあさんシリーズ

連れて行って

 雲ひとつ無い快晴、動きやすく快適な気温、出かけるには絶好の日ね。

 それなのに、こいつらは・・・

「ねえ〜ミサト〜、どこかに連れて行ってよ〜」

「う〜〜ん、そうね〜〜」

 寝転がってテレビを見ているミサト、アタシの話を全然聞いて無いわ。

「シンジッ、アンタもどっかに行きたいでしょう?」

「そうだね〜天気が良いからアスカの布団も干しておくね」

 天気が良い時は布団干し、もはや主夫と化しているバカシンジ。

「二人とも!ゴールデンウィークなのよ!連休なのよ!どこかに出かけるのが日本人でしょう!」

「連休だから家でゴロゴロするのも日本人なのよん」

「ゴロゴロっていつもしているでしょうが、シンジからもなんか言ってやりなさいよ」

「連休だからどこへ行っても人が多いと思うよ。ほらニュースでもやっているじゃないか」

 確かに今テレビニュースで観光地のリポートをしているわ、人がたくさんいる。

「それが何よ!人がたくさん居たっていいじゃないのよ。アタシはどこかへ行きたいのよ〜!」

 家に居たって暇なんだもん、遊びに行きた〜い。

「委員長はどうしたの?遊びに行ってくればいいじゃないか」

「ヒカリは家族旅行よ」

 温泉に行くって言っていたわ、良いわよね。

「はいはい、それじゃあ行きましょうか」

「えっホント?」

「来年の今日ね、今年は疲れているからお休みするわん」

「ミサトのバカ〜〜!」

 期待させておいて裏切るなんて最低の保護者だわ。

「アスカ、洗濯物は無いかい?」

「洗濯なんかいつでもできるでしょうが!」

 も〜〜〜こいつら本当に役に立たないわ、ぐうたら保護者に家事に命をかけるバカ主夫。

「もういいわよ!アタシ一人ででかけるもん。連れて行ってって言われても連れて行かないわ」

「あっアスカ待って」

「何よ」

 ミサトがアタシを呼び止めたわ、どこかへ連れて行ってくれる気になったのね。

「お土産忘れないでね」

誰が買ってくるか〜〜〜〜!




















「・・・と、言う訳なのよ。酷いでしょう」

 アタシはリツコの家へ来ていたわ。ミサト達には一人で出かけるって言ったけど、一人じゃつまんないもん。

「そうね、保護者として失格ね」

「でしょう、リツコからも怒ってよ」

「今度あったら注意しておくわ」

 でもミサトの事だから言ってもすぐに忘れると思うわ。

「だ〜か〜ら〜、どこかへ連れて行ってっ」

 レイが居るんだから、どこかへ出かけるはずだわ。

「ええ良いわよ」

「さっすが〜リツコ、話がわかるわ」

「でも連れて行くのは私じゃ無いわよ」

「えっ?」

「おばあちゃまが連れて行ってくれるんだよ」

「ナオコさんが?」

 どうやらナオコさんが、来るみたい。

「ええ、もうすぐ来るんじゃないかしら」

 どこへ行くかはリツコ達も知らないようね。きっとナオコさんの事だからすっごい所へ連れて行ってくれるに違いないわ。






 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!




「な、何?この音は?」

 窓ガラスを揺るがす爆音は?外から聞こえるわ。

「か、母さん!」

「ナオコさん?」

 外を見たリツコが叫んだわ、ナオコさんが来たの?この爆音、何で来たのかしら?

「何あれ?」

 飛行機?ジャンボジェットなの?道路に降りてくるなんて、流石ナオコさんだわ。

「コンコルドよ」

「コンコルドってあの・・・」

 テレビで見たことあるけど、コンコルドって確かもう無いんじゃなかったかしら。


 PIPIPIPIPIPI

「は〜〜い赤木です」

 電話がかかってきたようね、レイが取ったわ。

「おばあちゃま!うん、うん、は〜〜〜い」

 相手はナオコさんのようね。

「おかあさん、おばあちゃまが飛行機に来るように言っているよ」

「母さんが?」

「うん」

 リツコ驚いているわ。とりあえずコンコルドに行ってみるわ。





「母さん!」

「やっほ〜〜リっちゃん元気してた〜?」

「おばあちゃま!」

「レイちゃんはいっつも元気ね〜偉い偉い。あらアスカちゃんも来てたのね」

「はい、こんにちは」

「ちょっと母さん、これってどういうことなの?」

「これって?」

「コンコルドよ、道路に止めたら迷惑でしょう」

「大丈夫よ、閉鎖してあるから」

 流石ナオコさん。

「さあ立ち話もなんだから乗って乗って」

「あ、まだ話す事が」

「乗ってからにしましょう〜」

 ナオコさん、相変わらず強引ね。アタシも乗っちゃおう。







「うわ〜〜速〜〜い」

「凄いわね」

 アタシとレイは窓から外を見たわ。街がどんどん小さくなっていく。ナオコさんとリツコの話を聞いていたら、どうやらこのコンコルドはナオコさんが昔買ったみたいね、そして改造しているみたい。

「まったく母さんには呆れるわ」

「うふふ、良いじゃない。たまの休みなんだから羽目外しちゃったわ」

「母さんはいつも羽目外しているでしょう」

「もう〜リッちゃんの意地悪〜」

「はあ〜〜」

 リツコも疲れるわね。でもアタシは嬉しいわ。何てったってこれからスイスに行けるんですもの、ラッキーだわ。








 スイスの飛行場に着いたわ、窓からアルプスが見える。雪が積もって寒そうね。あっアタシ薄着だわ、どうしよう。

「さあみんなこれに着替えて」

 ナオコさんの秘書?がみんなの服を持ってきてくれたわ。これで寒さも大丈夫ね。パスポートの必要ないみたい、ナオコさんの力って凄いのね。

「次はヘリに乗り換えるわよ」

 ヘリに乗り換えてそのまま山へ直行、一面真っ白ね。





「雪がいっぱい〜」

「レイ、走ると危ないわよ」

 着いたところはユングフラウヨッホ、ここの鉄道駅はヨーロッパ最高地点のようね。

「アスカお姉ちゃん、ほら雪がサラサラ」

「本当ね」

 太陽の光が反射してキラキラと綺麗だわ。

「アスカちゃん、レイちゃんこっち向いて〜」

「は〜〜い」

 ナオコさんの秘書がカメラを向けている、流石用意がいいわ。アタシはレイとにっこり笑ってブイサイン。

「アスカお姉ちゃん、ソリ滑っているよ。滑ろう〜」

「良いわよ」

 ソリをレンタルして、レイと一緒に乗って・・・

「はやいはやい〜〜」

「バランス取らないと倒れるわよ」

 緩やかな斜面だからレイでも大丈夫だわ。

「あ〜〜楽しかった」

「レイ、汗を拭かないと風邪引くわよ」

「うん」

 楽しいと何回でも滑っちゃうのよね、アタシも汗かいちゃった。

「みんな〜ご飯食べましょうか」

 ナオコさんがレストランを予約していたようね、動いたからお腹空いちゃった。




「うっわ〜〜美味しそう〜〜」

 チーズ・フォンデュだわ、流石本場ね。チーズの香りが食欲を誘うわ。

「モグモグ、美味しい〜」

 このチーズの濃厚な味、いくらでもお腹に入っちゃう。

「アスカちゃん、美味しいかしら?」

「はい美味しいです」

「喜んでもらえてよかったわ、ワインはどう?」

「母さんダメよ、未成年よ」

「あら、ワインは未成年でも良いんじゃなかったかしら?」

「良くないわよ」

 はは・・・ナオコさんってときどき抜けているわね。

「アスカ、シンジ君達も誘えばよかったのに」

「嫌よ、アタシをどこへも連れて行ってくれなかったバツよ。帰ったら自慢してやるもん」

 たくさん撮ってもらった写真を見せて、羨ましがらせてやるわよ。




 ふう〜〜お腹いっぱいだわ。満足満足〜〜

「あっおかあさん、お土産があるよ。何か買ってく〜〜」

 お土産かぁ〜どんなのが売ってあるのかしら?

 定番のチーズにワイン、その他色々、アタシも何か買って帰ろうかな。ってお金足りるかしら?

「アスカちゃん、どうしたの?」

「あ、いや、別に」

「お土産代は出してあげるから、遠慮しないで買いなさい。何ならお店ごと買っちゃうわよ」

「そ、それは結構です」

 ナオコさんが出してくれるのなら問題ないけど、シンジ達に買っていくなんて・・・ムカツクから嫌だなあ。

「・・・このチーズ、ミサトのおつまみに合いそう」

 ・・・

「・・・このアーミーナイフ、シンジに良いかも」

 ・・・いけないいけない、どこにも連れて行ってくれなかった、あいつらにお土産なんか必要ないわ。アタシだけのお土産を買うのよ。

「オルゴールが良いかしら?それとも手工芸品にしようかな?」

「アスカ、決まったの?そろそろ帰るわよ」

「ちょっと待って、今選んでいるから・・・」

 楽しい時間はすぐに過ぎていくのね・・・











 ・・・

 ・・・

 ・・・う〜〜ん、寝ちゃったのかしら?ここは・・・アタシの部屋?確かスイスに行っていたはずじゃ・・・

「やあアスカ起きたんだね」

「あ、うん」

 リビングではシンジ達がテレビを見ていたわ。時間は夜九時・・・

「ねえシンジ、アタシ・・・確か・・・」

「遊びつかれたんだね、ナオコさんが送ってくれたんだよ」

「ナオコさんが・・・」

 そうか〜疲れて飛行機で寝ちゃったのね。

「アスカ〜〜お土産あんがとね。美味しくいただいているわん」

「あ、チーズ」

 ミサトが麦酒を飲んでチーズを食べている。

「アスカ、ナイフありがとう」

「アーミーナイフ・・・」

 シンジは手にアーミーナイフを持っているわ。そっか〜シンジ達にお土産買っていたんだっけ。

「お土産高かったろう?お小遣い大丈夫だった?」

「べ、別にナオコさんに出してもらったから問題ないわ。何も買わないで帰ってきたら、アンタ達が可哀想だから買ってきてあげたのよ。感謝しなさい」

 ふん、これでアタシの偉大さに気がつくわよね。そして今から写真を見せて羨ましがらせてやるのよ。

「アスカ、今日はごめんね。ミサトさんが今度遊びに連れて行ってくれるって」

 ふんだ、今更遅いわよ。

「温泉に行きましょうか、ゆったりと疲れが取れるわよ」

 温泉なんて行ったって・・・

「ふん、罪滅ぼしってわけね。しょうがないから行ってあげるわよ」

 ようやく保護者としての自覚がでてきたわね。温泉のパンフレット見せられても嬉しくなんか無いわよ。

「アタシこの温泉に行きた〜い」

「ここなんて良いんじゃないの?」

「こっちがいいわよ、シンジもそう思うでしょう?」

「僕はこっちがいいなあ」

「ダメよ、アタシが決めるのよ!」

 やっとゴールデンウィークらしくなってきたわね、これから楽しみだわ。


 アスカちゃんはどこかへ連れて行ってもらいたいのに、その気がないミサトさん達(^^;)

 結局一人でリツコさん家へ愚痴を言いに(笑)

 でもラッキーなことにナオコさんのお陰でスイスに行けましたね。帰ったら温泉への計画が発動、楽しいGWになりますね。

「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


リツコおかあさんシリーズ 連れて行って