リツコおかあさんシリーズ
海へ行こう
「おかあさん、海へつれてって」
「え?海」
「うん、泳ぎたいの」
朝食中にレイが言った、一年中夏であるが八月のこの時期TVでは海水浴の話題で持ちきりである。
「そういえば今年海に行ってなかったわね」
「うん、だからつれてって」
「ごめんなさいレイ、お仕事が忙しくて行けないのよ」
「え〜〜〜?」
レイは残念だった、しかしそれはリツコも同じである。レイを海に連れて行ってやりたいのだが仕事をほっぽり出すわけにはいかない。
「連れてって〜〜〜」
「我侭言わないで我慢して」
駄々をこねるレイをしずめようとするがなかなかしずまらない。
「連れてってよ〜〜〜」
「困ったわね〜〜〜マヤに任す事はできないし・・・そうだわ!レイ、海に行けるわよ」
「本当?」
「ええ、本当よ」
リツコに何か良い案が浮かんだようである。
「レイ準備をしなさい出発するわよ」
「は〜〜〜い」
朝食を食べ終えるとレイはすぐ準備に取り掛かり、リツコは後片付けをし受話器を取ってどこかに電話をし始めた。
「レイ、準備はできたかしら?」
「うん、いつでも良いよ」
レイは麦藁帽子に水色のワンピース、水着を入れたネコの耳がついたリュックを背負って準備完了いつでも出発できる。
「じゃあ行きましょうか」
「あれ?おかあさんはそのままで良いの?」
リツコの服装はいつもネルフに行く服装と同じであった。
「ええ、おかあさんは行けないから代わりを頼んだのよ」
「代わり?誰なの」
「ふふ、お楽しみよ」
リツコはレイの手を握ると駐車場に向かい、目的地へ向けて出発した。
「あれ?シンジお兄ちゃんちだ」
リツコ達の目的地はミサト宅、リツコはレイを車から下ろすとマンションに入った。
「ねえ代わりってシンジお兄ちゃんなの?」
エレベータ内、リツコの代わりとなるとシンジが適応であるが。
「残念違うわよ」
「違うの?じゃあアスカお姉ちゃん?」
「アスカも違うわ、もう一人いるでしょ」
「もう一人?う〜〜〜んおかあさんの代わりになる人は・・・いるのかな?」
「ふふ、確かにおかあさんの代わりにはならないかもね」
リツコの代わりになる人物がシンジ、アスカの他に思い浮かばずにいるレイにおもわず笑うリツコであった。
ぴ〜〜んぽ〜〜〜ん
「は〜〜〜い」
呼び鈴を押して数秒後玄関内からシンジの声が聞こえた。朝シンジは家事で忙しいのだが他の同居人が出ないのでシンジが出なければならない。
「どちらさ・・・あ、リツコさんおはようございます」
「シンジ君おはよう」
「シンジお兄ちゃんおはよう」
「レイちゃんおはよう、麦藁帽似合っているね、どこかにお出かけかな?」
シンジはレイの頭を撫でると微笑んだ。
「うん、海に行くの〜シンジお兄ちゃんも一緒に行こう」
「うん、良いよ〜一緒に行こうね。それより朝からどうしたんですか?」
「その事なんだけどミサトは起きているかしら?」
「ミサトさんに用ですか?まだ起きていないんですよ」
「まだ寝ているの?仕事があるのに」
リツコは呆れた、休みの日ならともかく仕事がある日なのにまだ寝ているとは社会人としての自覚が全く無い。
「ええ、時間ギリギリまで寝ているんですよ」
「まったく困ったものね」
「ミサトさんを起こしますから上がって待っていてください」
「ええ、お邪魔するわね」
「お邪魔しま〜〜す」
リツコとレイはリビングへ向かいシンジはミサトの部屋に向かった。
「ん、二人とも朝からどうしたの?」
リビングにはまだ寝癖がついたまま新聞を読んでいるアスカがいた。
「おはようアスカお姉ちゃん、海の行くの〜〜〜アスカお姉ちゃんも行こう〜〜〜」
「海、良いわね〜〜〜アタシも行くわ」
青い空に青い海、太陽の光をあびながらジュースを飲みメイド服のシンジが横に立っている姿を想像するアスカ、お嬢様気分である。
「ミサトさん、起きてください朝ですよ」
葛城家の秘境、ミサトの部屋に入ったシンジは布団に潜り込んでいるミサトを起こすが・・・
「う〜〜〜ん、あと一時間・・・zzz」
「一時間も寝たら遅刻ですよ、リツコさんが来ているんですよ起きてください」
「リツコ〜?何かようなの?呼んできて〜」
「呼んできてって、ミサトさんが起きてくださいよ。え〜〜〜い!」
ミサトの我侭に呆れるシンジ、おもいっきり布団を引っ剥がした。
ゴロゴロゴロゴロ、ドンッ!
「んぎゃ!」
「起きましたね、リビングでリツコさんが待っていますから来てくださいね」
勢いで転がり壁に顔面からぶつかるミサト、かなり痛いようであるがシンジは心配もせずに戻っていった。
「いたたたた、んもうシンちゃんたら強引なんだから、美しい顔が怪我したらどうするのよ〜、いたた」
赤くなった鼻をさすりながらリビングへ向かうミサトであった。
「リツコ〜〜こんな朝っぱらから一体なんの用なのよ?」
「朝っぱらってもう八時よ」
「まだ八時、もう一眠りできるわね」
「ミサト、あなたって人は・・・呆れるわね」
「冗談よ冗談、で用は何?最高機密かしら?」
「実はね・・・」
「実は?・・・」
リツコの真顔に真剣になるミサト、最高機密なのかおもわず生唾を飲んだ。
「実は、レイを海に連れていってほしいのよ」
「はあ〜?」
「私は仕事でどうしても連れて行けないのよ、ミサトなら暇でしょ」
「そうね、ミサトは暇ねえ」
リツコの言葉に頷くアスカ。ミサトも一応は忙しいのだがリツコほどではない。
「暇って、私だって今日は仕事なのよ」
「それなら大丈夫よ、碇司令から辞令がきてるわよ」
リツコはバックから折りたたまれた紙をミサトに渡した。
「辞令?これってファックス用紙じゃない」
「そこに辞令が書かれているのよ」
「そんなのって辞令って言えるの?」
ミサトは首を傾げながら紙を広げた。確かに辞令と書いてある。
「なになに、『葛城三佐は今日、レイ君を海に連れて行くこと 碇ゲンドウ』あら本当だわ」
「ええ、それとシンジ君とアスカも連れて行ってね」
「え〜〜面倒くさい」
頬をふくらますミサト、お守りは面倒である。
「何が面倒よ、アタシが海に行くのよ。むしろ感謝しなさい」
「ミサトお姉ちゃん、連れてって」
指をミサトに突きつけるアスカと抱きつくレイ、ミサトはお守りを考えただけで頭が痛くなってきた。
「ミサト、拒否権は無いわよ」
「無いの、もし断ったら・・・コレ?」
「ええ」
自分の首を切る動作をするミサトに頷くリツコ。
「しょうがない、連れてってあげますか」
「お願いね、それとこれは碇司令から臨時給与よ」
「わお、本当〜碇司令太っ腹〜〜〜」
封筒を受け取り、中身を見て笑いが止まらないミサト、お守り代としては多すぎる。
「じゃあ私は行くから、レイ良い子にしているのよ」
「は〜〜い、行ってらっしゃい」
リツコはレイの頭を撫でると腕時計を確認するとネルフに出勤した。
「よし!海に行くわよ〜さあ準備をして」
臨時給与で元気が出たミサトの声が家中に響く。
「ミサトさんその前にご飯を食べてください、アスカも早く」
「おっと、そうだったわね。ご飯を食べないとパワーが出ないわ」
そして場面は変わって海、ネルフ専用のプライベートビーチに到着した。
「う〜〜〜〜ん、暑いわね〜〜〜〜」
「うみ、うみ、うみ〜〜〜シンジお兄ちゃん泳ごう〜〜〜」
「ふふ、まずは準備体操からだよ」
「綺麗な海ね、これ全てアタシのものだわ」
トランクスタイプの水着のシンジと浮き輪を持ち水色ワンピースの水着を着たレイは準備体操を始めた。
「着いた早々泳ぐなんて元気良いわね〜」
「お子様なだけよ」
紫のビキニで豊満なバデーを披露するミサトと赤いビキニを着たアスカはサングラスをかけ、日傘の下で寝転がった。
「よし!準備体操終わり、泳ごうね」
「うん!」
レイとシンジは海に向かって走り出した。
「うわ〜〜気持ち良い〜〜」
「レイちゃん気持ち良いね」
浮き輪で漂うレイと平泳ぎをするシンジ、気温と水温が絶妙でまさに海日和である。
「アスカ」
「何?」
日傘の下で寝転がっている二人、何もしなくても汗はでてくる。
「オイル塗ってくれないかしら?」
「嫌よ、どうしてアタシが塗んなきゃならないのよ」
「良いじゃない、ケチねえ〜」
「じゃあアタシにも塗ってくれる」
「いや」
「じゃあアタシも嫌よ」
「それじゃあシンちゃんに塗ってもらいましょう」
「そうね、シンジ〜〜〜〜!!」
二人とも自分で塗るという事を知らない、折角楽しんでいるシンジが可哀想である。
「アスカ、何か用なの?」
アスカの声で呼び戻されたシンジとレイ、二人とも頭からびしょ濡れである。
「オイル塗ってよ」
「ええっ?!」
おもわず声をあげ頬を染めるシンジ。
「な〜〜に照れてんのよ、ただ塗るだけじゃない。変な事考えてんでしょスケベ」
「へ、変な事なんて、考えてないよ」
「じゃあ塗ってよ」
「そ、それは・・・」
慌てふためくシンジをからかい笑うアスカ。
「シンちゃ〜〜〜ん、私も塗って〜〜」
「ミ、ミサトさん!」
ミサトはうつ伏せになるとブラの紐をほどき、悩ましい声でシンジをからかう。
「んもう、シンジお兄ちゃんをからかわないで!私が塗ってあげる」
レイはオイルのキャップを外しタップリとオイルを手につけるとアスカとミサトに塗り始めた。
「レ、レイが塗るのね・・・」
レイに塗られちょっぴり残念なアスカであった。
「ん〜〜〜レイ、そこよそこ、ああん」
「ミサト〜変な声ださないでよ、気持ち悪いわね」
「だってレイの塗りが気持ち良いんだもん、極楽ぅ〜」
「ミサトお姉ちゃん肌すべすべしてる」
背中を塗るレイ、確かにミサトの肌は歳行っている割にすべすべであった。
「ふっふっふっふ、まあね美女の宿命ってやつかしら」
「な〜〜にが美女よ、アルコールな身体してるのに」
「そのアルコールがすべすべした肌を作っているのよん、シンちゃんビール取って〜〜〜」
「ビールは持ってきてませんよ。はい」
シンジはクーラーボックスからジュースを取り出すとミサトに渡した。
「え〜〜持ってきてないの?」
「当たり前じゃないですか、車はミサトさんしか運転できないんですよ」
「飲んでもできるのに〜〜〜」
飲酒運転になるのだかミサトには関係ない、ガックリ肩を落とすとジュースに口を付けた。
「はいアスカ、レイちゃん」
「ありがと」
「ありがとう〜」
続いてアスカ、レイにジュースを渡し、自分の分を取り出した。
「ん〜〜〜美味しいわね。シンジ飲んだら泳ぐわよ」
「え?僕は泳いだから疲れちゃったよ」
「泳ぐのよ」
「は、はい」
疲れているのだがアスカの迫力に圧倒される、泳がないと二度と泳げない身体にされるだろう。
「私も泳ぐ〜〜〜」
「レイはしばらく休憩よ。シンジ、行くわよ」
「あ、うん
アスカはレイにサングラスをかけるとシンジの手を握り海へ走り出した。
「私も泳ぎたいのに〜〜」
「レイ、休憩しておきなさい」
頬を膨らませるレイの頭を撫でると二人を優しい姉の目で見るミサト、いつもからかっているが優しいときは優しいのである。
「は〜〜〜い」
「ふふふ、シンジ〜」
「待ってよアスカ〜〜〜」
太陽が照りつける海岸を走る二人
「捕まえて御覧なさい」
「ようし」
スピードを上げるシンジ、流石のアスカも追いつかれるだろう
「きゃ」
「ほら捕まえた」
アスカの手を握るシンジ、二人とも頬が少し赤い
「シンジ・・・」
「アスカ・・・」
「・・・なんてシチュエーション、絶対無いわね」
平泳ぎをしながら妄想に走っていたアスカはため息をついた。
「アスカどうしたの?」
隣を泳いでいたシンジ、アスカのため息を疑問に思った。
「何でもないわよ、上がりましょう」
「うん」
「あ?雨かしら」
海から上がった二人、天候は晴れているのだが雨が降ってきた。
「うわ、ひどくなってきたよ。急ごう」
「うん」
シンジは無意識にアスカの手を握るとミサト達の元に走った。
「ミサトさん、戻りましょう」
「ええ、レイ起きて」
「う〜〜〜ん、zzz・・・」
泳ぎ疲れて起きないレイ、ミサトは抱っこをし、シンジはクーラーボックスと日傘を持つと荷物を置いてあるペンションへ走り出した。
「うわ〜〜〜やみそうにないわね」
着替えがすんだ四人、アスカは窓から外を見るがまだ雨は降っているやみそうな気配はない。
「そうね、残念だけど帰りましょうか」
「そうですね、レイちゃん帰るよ」
「うみゅう・・・帰っちゃうの」
半分眠っていたレイ、泳ぎ疲れてもう泳げなくても帰るのは残念である。
「だけどまた来ようね」
「うん」
レイを抱っこするとペンションを後にしてミサトの車に乗り込むのであった。
海ですがリツコさんは残念ながら行けませんでした。代わりの保護者はミサトさん、本当にミサトさんで良いのでしょうか(^^;)シンジ君が保護者ですね。
楽しむレイちゃんに妄想に走るアスカちゃん(笑)シンジ君と泳げたから良かったですね。
でも突然の雨で残念ならがお終い、でもレイちゃん存分に楽しめたでしょう。
「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
リツコおかあさんシリーズ 海へ行こう