リツコおかあさんシリーズ
雪が降る
「へっくしゅん!!」
シンジはネルフの通路を歩いていると身に寒さを感じ大きなクシャミをした。
「やけに冷えるなあ、冷房の効きすぎなんじゃないかな?」
寒さはどんどんと増していき腕には鳥肌が立ってきた。
「うお〜〜寒い、寒すぎる〜〜」
半袖でいられる状態じゃない、腕を手で擦り暖めるとロッカーに走っていった。
「ふう〜ここは普通だな」
走って乱れた呼吸を整える為に椅子に座り一息ついた。
PIPIPIPI
シンジの携帯が鳴った、着信相手を見るとアスカからであった。
「はい、もしもし」
「遅いわよ、何やってんのよ早く中庭に来なさい!」
「中庭?これから実験だよ」
「そんなの中止よ、早く中庭に来る!五秒できなさい!」
「五秒って無理だよ」
誰でも無理である、ロッカーからは走っても五分はかかる。
「無理でも来る!」
「わかったよ、でも五秒は無理だよ」
「んな事わかっているわよ、早くしなさい。レイも待っているのよ」
「レイちゃんも?」
「そうよ、今から遊ぶんだからね。それとジャージを着てきたほうが良いわよ」
「ジャージ?」
「ええ遊ぶからね」
「わかったよ、それじゃあね」
「はいは〜〜い」
シンジは携帯の電源を切るとロッカーからジャージを取り出し着替え始めた。
「ジャージで丁度良かったかな」
トレーニング用のジャージは長袖なので少しは寒さをしのげる。
「靴も履き替えてっと」
靴紐を結ぶとロッカーから出た。
「よし、寒くないぞ」
軽い準備体操をすると中庭に向かって走り出した。
「うわっ何だ?」
中庭に着いたシンジが見たのは一面に広がる銀世界であった。
「遅いわよ」
「シンジお兄ちゃん遅刻〜〜」
待っていた二人、アスカはご立腹であった。
「これって雪?」
「そうよ雪よ」
真っ白いダウンジャケットにマフラー、手袋と防寒対策完璧のアスカはシンジの問いに頷いた。
「何で雪があるの?」
一年中夏の日本で雪が降るのは不可能である。
「おかあさんが人口雪発生装置を作ったの」
レイはピンクの毛糸の帽子に黄色いジャンバー、手袋とこちらも防寒対策は完璧である。
「へ〜〜リツコさんが」
リツコの発明と聞いて納得した。
「このリモコンでね、雪を降らせることもできるんだよ」
レイはボタンを押した、すると設置されている機械から雪が降り出した。
「凄いな〜雪なんて初めてだよ」
「凄いでしょ〜フフン」
アスカは腕を組んで自慢げである。
「何でアスカが威張るの?凄いのはリツコさんじゃないか」
「アタシがリツコに言って作ってもらったのよ。だからアタシも偉いの」
「それは違うんじゃないかな」
首を傾げる。
「兎に角アタシも偉いの!今から雪合戦を始めるわよ」
アスカは昨日雑誌で読んだ雪合戦をしたくてウズウズしていた。
「突然だね」
「突然で良いじゃない、チームはアタシとレイ、シンジは一人ね」
「僕一人?」
「男の子でしょう、アタシとレイは女の子よ」
「それはそうだけどアスカ一人でもいけそうな気が」
「いちいち五月蝿いわね〜始めるわよ。レイいくわよ」
「うん」
アスカとレイは頷き合うと距離を保つためにシンジから離れた。
「あっちょっと」
「シンジお兄ちゃんいくよ〜〜え〜〜い」
不意を付かれたシンジはレイに先制攻撃を許してしまった。
「おっとっと」
しかし雪玉のスピードがそれほど速くなかったので身体をひねってかわした。
「レイちゃんいくよ、それ〜〜」
ぺちゃ
「うへぇ〜〜冷た〜〜い」
下投げでゆっくり投げたシンジの雪球は放物線をえがきレイの顔に当たった。
「ははは、大丈夫かい?」
「やったな〜〜それ〜〜〜」
「おっとっと」
レイの投げた雪玉はまたもやかわされてしまった。
「そ〜〜れ」
「わわわ」
ぺちゃ
シンジのゆっくり投げた雪玉をかわそうと右往左往するが、また顔に当たった。
「ちゅめたい」
「今度は上手にかわすんだよ」
和やかな雰囲気でレイとシンジの雪合戦が進んでいった。そのレイの後ろでは・・・
「うふ、うふふふふふ完成よ」
先ほどからずっと雪玉を作っていたアスカは雪玉を一つ手に取った。
「このアスカ様特製の雪球で勝利はアタシのものに」
手に取った雪玉は色が雪の白ではなく氷の半透明に変わっている。
「丹精こめて作ったアタシの雪玉はどんな敵でも貫くわよ」
アスカの雪玉は氷玉に変わっていた。
「さあシンジ、お逝きなさい!」
大きく振りかぶりシンジ目掛けて氷玉を投げた。
「うおっ」
レイとの雪合戦に夢中になりアスカの存在を忘れていた。体勢を整えるが避ける事ができない。
シュワッ
「えっ?」
アスカは驚いた、シンジの目の前で氷玉が消えたのである。
「な、何今のは?」
目を擦りシンジの顔を良く見てみるが当たった形跡はない。
「シンジ、アンタ今何をやったの?」
「僕は何もしてないよ」
「シンジお兄ちゃん凄い、消しちゃったね」
「消えるなんてそんな事ないわ、もう一度」
アスカは氷玉を作らないで今度は雪玉を作って投げた。
シュッ
「まただわ」
今度はアスカの手元を離れてから僅か一メートルの距離で消えた。
「どうなっているのよ?シンジがやったんでしょ」
「僕じゃないよ」
「わかった!アスカお姉ちゃんの投げる球が凄すぎて途中で融けちゃったんだよ」
「「うそっ」」
ユニゾン、二人は驚いた。
「確かにアタシの玉は凄いけど融けるなんてそんな事ないわよ」
「そうかな〜?融けると思うよ。だってアスカは怪力・・・しまった」
シンジは思わず口を押さえた。
「シ〜〜ンジ、アンタはか弱くて可愛いアタシの事をそう思っていたんだ?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「か、か弱いってアスカの事?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「そうよ、アタシの事よ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「そ、そうなんだ」
アスカから殺気がひしひしと伝わってくる。
「ええそうよ」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「そうだね、あっ!僕用事思い出した、じゃあ」
シンジは回れ右をするとその場から逃げ出した。
「待て〜〜い!」
「うっうわ」
逃げるがアスカの足の速さには敵わない。
「脳漿をブチ撒けろ!!」
アスカの拳がシンジの後頭部を正確に捉える。
「うわああああああああああああ!!!碇シンジ死亡確定!!享年14歳、エプロンと夜空が似合う男でした・・・」
シンジは息絶えうつ伏せに倒れ雪に埋もれた。
「きゃああ〜〜シンジお兄ちゃんの鼻血で真っ白な雪が一面赤い雪に〜〜〜なってな〜〜い」
鼻血でほんの僅かな雪が赤に染まった。
「か弱いアタシの事を怪力だなんて失礼しちゃうわね。レイ行くわよ」
「えっでもシンジお兄ちゃんが」
「そんなの放っておきなさい、すぐ目を覚ますわよ」
「そうなの?」
「そうよ、お腹空いたから食堂に食べに行くわよ」
「う、うん。でも放っておけないよ。シンジお兄ちゃん起きて!起きて」
「・・・」
返事が無い。
「死んじゃったのかな」
「死んでないわよ、起きなさい!」
ドゴッ!
アスカはシンジの背中に拳をつき立てた。
「はうっ!あれ?ここは?」
「良かった〜〜死んじゃったのかなって思っちゃった」
レイは思わずシンジに抱きついた。
「レイちゃん?あれ僕は何していたんだろう?」
「何でも無いわよ、これから食堂に行くからアンタの奢りよ」
「ええ〜〜どうして?」
「無駄な体力使わせたからよ。レイ行くわよ」
「うん、シンジお兄ちゃんも早く早く〜〜」
シンジの手を引っ張る。
「あ、うん」
「まったくもう」
アスカは呆れた顔でシンジを見ると食堂へ向かうのであった。
雪合戦、アスカちゃんの投げた球は耐え切れずに融けてしまいます(笑)アスカちゃんの剛速球では雪合戦になりませんね。レイちゃんとシンジ君だけの雪合戦です(^^;)
そして口が滑ったシンジ君は若い命を真っ白い雪の上で散らせてしまいました。でも普段から散る事になれているのですぐに復活しましたね。その代償がご飯の奢りです(笑)
「jun16 Factory」はリツコおかあさん推奨HPです(爆)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
リツコおかあさんシリーズ 雪が降る