0606
アスカは朝早く家を出た、行き先をシンジに知らせぬまま、夜までには帰ってくると言い残して。
「ふうー」
シンジは洗濯をしながら、ため息をついた。その手は元気なく洗濯物が洗濯機に放り込まれる。
「アスカ、どこに行ったんだろう」
ここ数日アスカは学校が終わると、シンジと帰らずに一人で下校して遅く帰ってきていた。理由を聞いても教えてくれない、無理に聞こうとすれば怒る、ビンタが飛ぶ。
「・・・・まさか彼氏でも、できたとか・・・・」
「アスカ、かわいいし・・・・」
「・・・・」
シンジは悪い方へと考えていった。
ヒカリの家、アスカは数日前からシンジのプレゼントを作っていた。
「ふうー、もう少しね」
ヒカリの部屋で、アスカは黙々と作業をしていた。
ガチャ!
「アスカ、少し休憩したら、もうお昼よ」
「わかったわ」
ヒカリが紅茶とサンドウィッチを運んできた。アスカは手を休め紅茶をすする。
「へえ、上手じゃない」
「当然よ!私が作ったんだから」
アスカは胸を張る。
「ふふ、碇君の為だからね」
「違うわよ、私が天才だから上手なのよ」
アスカは真っ赤になって否定した。
「はいはい」
「もう」
休憩も終わり、アスカはまた作業に取りかかった。
「さあ、ラストスパートよ」
「はあー」
シンジは一人寂しく、昼食を取っていた。
「アスカ・・・・・忘れているのかな・・・」
シンジはスプーンを食器に突つきながら、食が進まなかった。
「クエクエ」
ため息をついているシンジにペンペンがやってきて話すように鳴いた。
「クエクエ!」
「ペンペン・・・僕を慰めてくれているのかい?」
ペンペンは首を振り、手をばたつかせていた。
「ありがとうペンペン」
ギュ!
シンジはペンペンを抱きしめ感傷に浸った。
「クエー」
「よし完成!」
夕方、アスカは作業を終えた。
「やったわねアスカ」
「ええ、あとは包むだけね」
アスカは完成品を綺麗にラッピングした。そしてリボンをつける。
「これで・・・・よし!」
プレゼントを見てアスカは満足そうだ。
「ヒカリ迷惑かけてごめんね」
「いいわよ、早く帰らないと碇君心配するわよ」
「ありがとうヒカリ、それじゃあまたね」
アスカはプレゼントを抱えて、急いでヒカリの家を出た。
「はあはあはあ」
アスカは包装が崩れないように慎重に走っていた。家が近づくにつれ、アスカの顔は笑顔に変わっていく。
「アスカ遅いな・・・」
シンジは夕食の用意をしていた、今日は少し豪華な料理。
「一人寂しく歳をとるのか・・・・」
ますます暗くなるシンジ、そこに元気よくドアを開ける音が聞こえた。
「ただいま!」
アスカの声にシンジは玄関に行った。
「おっお帰り、遅かったんだね・・・・」
シンジはアスカの元気の良い声にデートが楽しかったと勘違いしていた。
「まあね」
アスカは笑顔でプレゼントは背中に隠していた。
「シンジ、リビングに行っていて」
「え?」
「早く!」
「うっうん」
シンジは言われるままにリビングに行き、アスカもそれに続いて向かった。そしてシンジとアスカは向かい合って立った。
「シンジ、目をつぶっていて」
「どうして?」
「いいから」
「うん」
シンジは目をつぶった、何をされるかとドキドキしていた。
「はい!」
「?」
シンジは恐る恐る目を開けた。アスカは恥ずかしそうに両手にプレゼントを持ってシンジに差し出していた。
「アスカ、何これ?」
「プレゼントよプレゼント!今日はアンタの誕生日でしょうが!」
「・・・アスカ」
「もう、なんて顔をしてんのよ!早く受け取りなさい」
「うん、ありがとうアスカ」
シンジは赤くなりながら受け取った。
「大きいね、開けていい?」
「いいわよ」
シンジは丁寧に包装を剥がした。アスカはその様子を恥ずかしそうに見ていた。
「これは」
ラッピングの中身はシンジが笑っている水彩画がでてきた。
「アスカこれ」
「そうよアンタよ、私が丁寧に書いてあげたんだから感謝しなさい」
アスカは腕を組み照れくさそうに、ソッポを向いていた。
「ありがとうアスカ宝物にするよ」
「当然でしょ!ご飯はまだなの、お腹へってんのよ」
「ふふ、もうすぐできるよ」
シンジは水彩画を部屋に置いて、急いで夕食の用意をした。その間アスカは照れくさかったのか部屋から出てこなかった。
「アスカ、できたよ」
配膳が済み、アスカが部屋から出てくる。いつもより豪勢な夕食。
「アスカありがとう、大変だったんじゃないかい?」
シンジはこの数日間アスカがどうして遅く帰ってくるのか、わかった。
「別にあのくらい30分でできるわよ」
「そうだね」
シンジはアスカが照れを誤魔化しているのを可愛く思った。
「頑張ったんだから、私のプレゼントは豪華にするのよ!」
「えー30分で書いたんだろう」
「それでも豪華にするのよ」
「わかったよ・・・」
渋々了解したが、シンジはアスカの為に豪華にしようと思っていた。
二人はその後一言もしゃべらないで食べていった。アスカは急に箸を置いた。
「シンジ・・・・たったっ誕生日おめでとう・・・」
アスカは俯き真っ赤になりながら小声で言ったが静かな台所ではシンジの耳によく届いた。
「ありがとうアスカ」
(*。*)番外(*。*)
「シンジ君誕生日おめでとう」
ミサトはラッピングされリボンの付いた大きなプレゼントを渡した。シンジは感動したまさかミサトからプレゼントをもらえるとは思っていなかったからだ。
「ありがとうございます、ミサトさん!うわ重いな何が入っているんですか?」
「ふふ、開けてみて」
「はい」
びりびり!
シンジは包装された紙を剥がすとそこには
エビチュ・ビール 1ダース
「・・・・・・・」
あっけにとられるシンジ。
「何ですかこれ」
「見てのとおりビールよ、シンちゃんの誕生日プレゼント」
にこやかなミサト、困惑するシンジ。
「・・・僕飲めませんよ」
「あら?そうなの」
ミサトはとぼけたが誰が見てもシンジは未成年。
(何をたくらんでいるんだ?)
「飲めないの、それじゃあ、どうしようかしら」
パカ!
ミサトはふたを開けてビールを手に取り、わざとらしく底を見る。
「あれこのビール今日までじゃない!シンちゃん飲めないんじゃしょうがないし、捨てるのももったいないし」
「・・・・・」
シンジはビールの底を見た。明らかにマジックで0606と記入してある。
「捨てるのもったいないわね」
ミサトは大声で言った。
「・・・わかりました。ミサトさん飲んでいいですよ」
シンジは呆れていた。
「そう悪いわね!さっ早く冷やして飲まないと今日中までだからね」
ミサトはビールを抱えると急いで冷蔵庫にしまった。
LASでもないですね。LASとは二人がラブラブなお話・・・・最後の方だけですね。
ああ、これもjun16がボケなだけに・・・題名も番外にでているし・・・
アスカがシンジの為に贈った水彩画、シンジの一生の宝物ですね。
番外も書いてみました・・・まあミサトのプレゼントらしいですね。
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION 0606