MSV

「・・・・・・・・」

 リツコの怪しい研究室、レイは無造作に置かれていた一冊の雑誌を手に取り眺めていた。

 パラ・・・・・パラ・・・・・

「・・・・・・・」

 何気なく内容に眼を通していく。

 パラ・・・・

」 

 カラーページで眼が止まった。興味深そうに書かれている内容を読んでいき、理解が進んでいくたびに紅い瞳が一段と増していった。

「・・・・・カッコイイ」

 見出しにはこう書かれていた。

 νガンダム特集!君もニュータイプ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日からレイはのめりこんでいった。プラモデルにグッズ、DVDに本、普通の中学生ではそろえられる金額ではないのだがエヴァンゲリオンのパイロットであるレイにとっては、問題無かった。

 その日からレイの行動は変わった。

 学校・・・・・

「綾波おはよう」

「・・・・・・・」

「綾波?」

 シンジはレイの眼に見えてる場所で挨拶をしているのだが、返事が無い。

「・・・・・・・アムロ」

「え?」

 ボソリと呟くとスタスタと教室に入っていった。後には首を傾げるシンジが取り残された。

 授業中・・・

「これが人類にとって月への第1歩です」

 教師が社会の時間に人類が初めて月に上陸した事を説明していた。

「・・・・・・月・・・アナハイム・・・・ガンダム」

「え?」

 また呟きにシンジ1人だけが聞こえ、不思議におもっていた。

 授業が終わるとレイは鞄を取りだし、席を立った。

「綾波どうしたの?」

「ネルフに」

「集合なの?」

「私だけ・・・・さよなら」

 簡潔に言葉を交わすと教室を後にした。

「・・・・・ロンド・ベル」

「え?」

 教室を出る際にレイの発言にシンジはまた不思議におもった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネルフ、レイはリツコの研究室に来ていた。

「以外ね、レイが興味を持つなんて」

「・・・・・・」

 リツコはレイから渡された雑誌を見ながら、コーヒーを飲んでいた。

「・・・・・似ているの」

「何がなの?」

「名前」

 リツコは口に含んでいたコーヒーをおもわず苦笑し噴出しそうになった。だか反対に可愛くもおもえた、今まで興味を持たなかったのだが、それなりに興味を持ち成長をしている。

「ふふ、どうしたいの」

「・・・零号機をこれに・・・」

 真っ白な頬がリンゴのように赤くなりながら、雑誌を指差しうつむいている。リツコは母親のように聞いていた。

「そう、これねえ。どうしようかしら」

 可愛らしさに、わざと意地悪をしてみる。レイは泣きそうになるが力いっぱいお願いした。

「・・・・・これに」

「ふふ、わかったわよ。安心しなさい、私も興味があったから作ってあげるわよ」

「ありがとうございます」

 レイは顔が明るくなり笑顔になった。リツコもその様子に嬉しくなった。

「絶対に気に入るわよ」

「はい」

 その日からリツコは、研究室に1週間泊まりこんだ。

「フフフフフ血が騒ぐわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビービービ!

 ネルフに警報が鳴り響き、マヤがモニターで確認して叫ぶ。

パターン青、使徒です!

 ネルフ内に緊張が走る、ミサトはすぐさま.現在の状況を確認する。本部にはレイ1人いることがわかった、シンジとアスカは家におり迎えを出させている。

「レイだけでは危険だわ、早く!」

「フッ、ミサト心配ないわ」

 ミサトの焦りと対照的にリツコは白衣のポケットに手をつっこんでおり、モニター先の使徒を直視していた。

「何言ってんのよ!急がせて」

「私の発明に不可能は無いわ、レイ出撃よ」

「ちょっちょっと、リツコ!」

 ミサトの言葉を無視して、リツコはレイに命令する。

「了解」

「マヤ、準備をお願いね」

「はっはい」

 本来はミサトの指示なのだが、リツコに言われては従うことしかできないマヤは準備を始めた。

「120秒後に発進できます」

「レイ、いいわね」

「はい」

 モニターにはレイが写っておりリツコと対話をしていた。ミサとは呆れて腕を組みながら見ていた。

(リツコ、また変なもの発明したのかしら)

「レイ、発進よ!」

「アムロ、いきます!」

 ガタッ!

 ミサトは2人の掛け声、いやレイの声に体勢を崩してこけた。

「ちょちょっとリツコ、何?」

「いいわよレイ、完璧ね」

「リツコ?」

 ミサトの声が聞こえていないのかモニターに集中しており、こぶしを握り締めていた。

 ガチャ!

 地上に出た零号機は容姿が変わっていた。額には左右2つづつに伸びたアンテナ、胸にはエアダクト、全体に白と黒のデザインバックパックの中央にバズーカ、フィン・ファンネル、そしてシールドにはユニコーンのマーク。

 まさにνガンダム。

「はあー・・・・・」

 ミサトは頭を抱えて『またリツコの病気がでた』と呆れかえっていた。

レイ!ファンネルよ

「了解」

 リツコはマイクを握り締めモニターに向かって絶叫していた。その姿に1人を除いて呆れていた。

「先輩・・・ステキ」 (ポッ)

 ファンネルが飛び出し空中を舞い、使徒にビームを発射するがAT・フィールドに阻まれダメージを受けない。

「なんでこんなものを地球に落とす!」

 レイは意味不明な言葉を発していた。使徒は攻撃を仕掛けて来る。

「レイ!バリアよ」

「了解」

 ファンネルが零号機の前にシールドを展開し、行く手をはさんだ。その隙にレイは背中に積んであるニューハイパーバズーカを取り使徒ゼロ距離で連発する。

シャア!

 ミサトはレイの言葉にもはや指揮をとる事さえバカらしく思い、すでに晩酌のことを考えていた。

(レイ・・・・・・・私の仕事ってなに?やっぱりビールには枝豆よね。帰ったらシンジ君に作ってもらおう)

 ガキッ!

 使徒はバズーカの連発が効かなかったのか、零号機の頭を掴み握りつぶそうと力をこめた。

レイ!シンジ君達はまだなの?

 ミサトはレイのピンチに到着しないシンジ達にあせったが、その肩に手を乗せるリツコがいた。

「ミサト、ガンダムの名は伊達ではないわ」

「はあ?」

 リツコはミサトに1枚のDVDを渡し、レイに叫んだ。

レイ!アクシズの半分は地球に落ちるわ

させるかっ!

(・・・・・ネルフ辞めようかな)

 ミサトは2人のやりとりを見ながら転職を考えていた。

「あっ忘れていたわ、ミサト」

「何よ?」

 リツコは振り向くとポケットから本を取り出し、ミサトに渡した。

「本?」

「そうよ逆襲のシャアをおさめたDVDと小説よ。登場人物が違っているから把握しとくといいわ」

「はあ・・・・・・・」

 ミサトは小説をぱらぱらめくりながら気のない返事、だがやる気のない返事がリツコを激怒させた。

ミサト!何なのその気の抜けた返事は!10周年記念ガンダムなのよ、コロニー再現にはCGを使い主題歌はあのTMネットワークなのよ

 リツコはずずっとミサトに詰めより説教を始めた。

「そっそうなの・・・」

そうよ!あなたは何もわかっていないわね。いいわ戦闘が終わったら時間をかけて教えてあげるわよ

「ええ?」

 驚くミサト、折角早く家に帰ってビールと枝豆を楽しみにしていたので涙が出てきた。

(どっどうしてよー・・・・)

「ミサトどうしたの?涙なんか流して、そう嬉しいのね。わかったわF91も教えてあげるわよ、これも映画と小説があるから後で渡すわね」

イッイヤアアアアァァァァァァ!!!

 ミサトは耳を塞ぎながら、走ってその場を立ち去った。

「あらあら嬉しがっちゃって」

 走り去っていく姿をリツコはうなずき、モニターに眼を戻した。

 バタッ!

「使徒、完全に沈黙」

 眼を戻したと同時にマヤが報告した。モニターには戦いを終えた零号機がうつっていた。

「レイ、よくやったわ」

「赤い彗星・・・」

 レイのまた訳のわからない発言にスタッフは頭をひねり、リツコだけは微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミサトさん、ビールと枝豆用意できましたよ」

「ん、ありがと」

 その日、シンジ達がネルフ着く前に戦闘は終わりミサトは逃げるように自宅に戻った。

 ゴクゴクゴク!

 今日の悪夢を振り払うかのように一気飲みをするミサトにアスカは枝豆をつまみ食いをしながら呆れていた。

ぷはー!生きかえるわ!!

「何オヤヂみたいな事言っているのよ。まったく到着する前にファーストが倒すから、私の出番がなかったわ」

「来なくて良かったわよ」

「何ですって?」

 アスカは自分が必要ないと思いテーブルを叩いた。その衝撃で枝豆が宙に浮く、ミサトはビールを飲みながらなだめた。

「違うわよ、今日リツコの病気がでたのよ」

「リツコの病気・・・・」

 以前の事を思い出しているアスカにミサトは無言でうなずいた。

「そうよ」

「・・・・まっまあ、たまには譲る事も大事よね」

 身震いをしながら枝豆を口に運ぶ。

 ピーンポーン!

「はーい」

 テレビを見ていたシンジが玄関に向かう。台所の方が近いのだが2人は出るつもりは無い、必然的にシンジになる。

「どちらさま?」

 ドアを開けるとダンボールを持ったレイが立っていた。

「こんばんは、碇クン」

「綾波どうしたの?」

「葛城三佐に渡すものがあるの」

「そうなんだ、あがってよ」

「おじゃまします」

 シンジはダンボールを持つとレイと一緒に台所に向かった。

「あらレイどうしたの?」

「ミサトさん、綾波が渡すものがあるようですよ」

「赤木博士から・・・」

「!リツコから?・・・」

 ミサトの背中に汗が流れ、一気に酔いがさめる。

 ガサゴソ、ガサゴソ。

「はい」

 レイはDVDとカバーがかかった本をミサトに渡した。言うまでも無く『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』

「はっははは・・・・・ありがと・・・」

「3日後に感想を出してください」

「はい・・・・・・」 (シクシク)

 ミサトは涙を流しながらビールを飲み干し、逃げ出そうと考えていた。

「まったくリツコは何考えているのかしら?」

 アスカは小説をめくりながら、MADリツコを思い浮かべていた。その傍らでレイはまた何かを取り出そうとしていた。

 ガサゴソ、ガサゴソ!

「アスカ、これ」

「?」

 レイは洋服をわたしアスカは何だろうと広げてみた。

「!こっこれは・・・・」

 アスカは驚愕した。

「そうよ、それは・・・・」

「言わなくてもわかっているわ。これは1年戦争時のシャアの軍服ね」

「そう」

(アスカ・・・詳しいんだね)

 シンジはどうして昔の事を知っているんだろうと思いながら、アスカの様子を見ていた。

「どうして私に?」

「赤い彗星・・・・・」

「はあ?何バカな事言っているのよ。私は赤い彗星より真紅の稲妻の方が好きなの」

(・・どっちもどっちとおもうけど・・・・・) 

シンジは口に出さずに、ただただ自分に振られないように静かにしていた。ミサトはやけ飲みになっていた。

「いらないのね?」

「まっまあ必要無いけどくれるのなら、貰っておくわ!感謝しなさい」

 アスカは絶対に渡さないくらいに軍服を握り締めていた。

「・・・・似合うわよ」

「とっ当然よ!私に似合わない服なんて無いのよ」

 レイは真っ赤になってソッポを向いているアスカにクスッと笑い、シンジに話しかける。

「碇クン」

「なっ何?綾波」

 シンジの顔を見たとたん悲しい表情を浮かべた。

「ごめんなさい・・・碇クンには無いの」

「はっ?」

 何の事と一瞬考えたがこの状況では、シンジに渡すものが無いと浮かんだ。

「あっいいよ僕は」

「ごめんなさい」

 別に貰っても困るだけだから、無くて良かったと思っていたシンジだがレイはすまない顔をしていた。

「ごめんなさい」

「綾波、気にしないでよ」

「仕上げが間に合わなかったの」

「へ?」

 レイの言葉に固まった。

「明日にはできるから」

「なっ何が?」

 シンジは額から汗が滲み出してきた。

「ザクレロの衣装」

「・・・・・・・・・・・」

 固まった。

 

 

 次の日、衣装が届けられアスカの強引さとレイの瞳を潤ませた攻撃に、シンジは泣く泣く衣装を着ることになった。

(・・・・・・・・・・)

「はっは!よく似合うわよ、シンジにぴったり」

(・・・・・・・・・・)

「碇クン、ステキ・・・」 (ポッ)

(・・・・・・・・・・)

 転げまわりお腹を抱えて笑っているアスカ、両手を組んでウットリと見つめているレイ、シンジは涙を流すだけであった。

(・・・・・・・・逃げ出したい・・・・・・)

 

 

 その後無理やり撮られたシンジの写真はネルフ内で好評となり、焼き増しされ所員全員が所持することとなった。

 アスカは軍服を自分の部屋で、毎日こっそり着て楽しんでいた。

 ミサトは感想を出したが、リツコに認められずに1週間の集中講義を受ける事となった。

 レイはリツコの魔の研究室で無造作に置かれていた、一冊の雑誌を眺めていた。

「・・・・・・・ステキ」 (ポッ)


 リクエストがありましたのでνガンダム編?です。

 映画、良かったですね。長年のライバルレイとシャア対決、感動です。

 最後にアクシズから光りが流れ落ちましたが、jun16は2人だと思っています。皆さんはどう思いますか?

 レイはおもいっきりのめりこんでしまいましたが、次はどうなる事でしょうか?

 アスカは嫌々ながらも気に入っていますし、シンジは・・・・・

 ミサト、災難ですね(^^;

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION MSV