ねがい
「シンジ!笹を用意するのよ」
「え?」
アスカの突然の発言に意味がわからなかった。
「アンタバカア?もうすぐ七夕でしょ、さっさと用意しなさい」
ドイツ育ちのアスカに七夕の風習はないのだが、何処からか仕入れてきた情報によりこの行事に参加したいと言い出した。
「用意ってこの辺、はえてないよ」
「なら買ってきなさい」
「えー」
不満の声を漏らした、帰ってくるなりいきなり命令するのだからたまったものじゃない。
「早くする!」
「わかったよ」
渋々腰を上げ、財布の中身を確認して出かける。
「短冊も買ってくるのよ」
「はいはい」
「返事は1回!」
シンジが玄関を閉めたのを確認するとアスカは顔がにやけだした。
(ふふふふ、これでねがいがかなうわね)
口に手を押さえ笑いをおしころしていた。
回想中
アスカとヒカリは商店街を歩いていた。
「ん、ヒカリあれはなに?」
指を指す方向には大きな七夕が飾ってある、アスカは近づいて眺めてみた。
「これはね七夕よ」
「七夕?」
「そう七夕、7月7日におりひめとひこぼしが天の川で年に1度会える日なのよ、そして笹にねがいを書いた短冊をつるすとかなうのよ」
「ふーん」
「ロマンチックよね」
「そうなの?」
ヒカリは笹を見つめて瞳を輝かせていたがアスカはそんな風習はなかったので、別に気にしなかった。
「そうってアスカ、愛し合った2人が年に1度しか会えないのよ!その日は星の海で時間が許す限り一緒にいて、日にちがかわったら来年まで会えないのよ!だから私達は短冊にねがいを書いて2人の幸せを喜ぶの」
「そっそう」
ヒカリの迫力に圧倒され納得した。
「アスカもやってみたら?楽しいしねがいがかなうかもよ」
「本当?」
「ええ」
アスカは七夕をやりたくなってきた、そしてねがいも頭に浮かんできた。
(私のねがいは・・・・・)
「わかった、やってみる」
(はやく帰ってこないかな)
時計を見ながらシンジが笹を買ってくるのが待ち遠しく家の中をウロウロしていた。
「ただいま」
シンジの声が聞こえると、走って玄関に行った。
「遅かったわね」
「ごめん、なかなか無くて探したよ」
手にはこの時代にしては、立派な笹を持っていた。
「まあシンジにしては上出来ね、早速短冊をつるすわよ」
「まってよ、最初は飾り付けをしてからだよ。短冊は最後につるすんだよ」
「えー?」
アスカはがっかりしたが商店街で見た七夕にも奇麗な飾りがあったのを思い出し、納得した。リビングにもどるとシンジは袋から折り紙や色々な飾りを取り出した。
「これで作って飾るんだよ」
「ふーん」
シンジは折り紙を切るとわっかの鎖を作り出した。」
アスカは商店街での飾りを思い出し作り出したが、どうも上手く行かない。初めての事でどうやるのかわからなかった。
「もう!何なのよ、面倒くさい」
折り紙にはさみを入れるが、形が歪になりクシャクシャになる。
「アスカ、それはね、こうするんだよ」
「あ・・・・ありがと」
横から修正をいれるシンジの手が触れ、アスカは赤くなりくちごもった。
ドキドキ
(シンジって、器用ね)
それからはシンジが教えてアスカが作るといった図式になった。
「これくらいでいいかな、飾ろうか」
「ええ」
2人は飾り付けをし始めた。
(結構楽しいわね)
アスカは手に作った飾りを持ち何処に飾るか思案していた。
「たっだいまー!」
2人が飾り付けが終わった頃玄関から元気な声が聞こえた、ミサトの帰宅である。
「お帰りなさい」
「おかえり」
「あれ?七夕じゃない、なつかしいわね」
ミサトは七夕をなつかしそうに、見つめていた。その後ろからヒョコと見覚えのある姿が現れた。
「碇クンこんにちは」
「綾波どうしたの」
「早くテストが終わったから、誘ったのよ」
(むーーどうしてくるのよ!)
レイの登場にアスカはいささか気分が害し始めた。その様子をミサトは見逃さなかった。
「アスカ、七夕は楽しくするのよそうしないと、ねがいはかなわないわよ」
「なに言っていんのよ!」
ミサトは流すように着替えるために部屋に戻った。
「碇クンこれは何?」
「ああ七夕と言ってね、ねがいを書いた短冊をつるすんだよ、綾波も書くといいよ」
「ねがい・・・・・・」
レイは興味深そうに奇麗に飾られ笹を見ていた。
「ちょっとシンジ!どうしてファーストもいれるのよ」
「いいじゃないか、七夕はみんなで楽しむものなんだよ」
「そうよアスカ!シンジ君私もいれてね」
「わかったわよ」
着替えを済ませたミサトが早くもペンを持ち、考え始めていた。アスカは渋々快諾した。
「綾波これにねがいを書くんだよ」
「これに・・・・」
レイは短冊を受け取ると、手に持ったまま動かなくなった。
「あ綾波?どうしたの」
「・・・考えているの」
「そっそう」
レイが考えている間にミサトやアスカは次々にねがいを書いていった。
ミサトの場合
[ビールが沢山飲めますように]
[ビールが毎日飲めますように]
[ビールが永遠に飲めますように]
[やっぱりビールが朝、昼、晩の食事にでますように]
アスカの場合
[もっと美しくなりたい!]
[洋服がほしい!]
[化粧品が沢山ほしい!]
[やせたい!]
2人は自分だけの欲求を書き尽くした頃にレイはようやく動き出しペンを取った。
レイの場合
[碇クン、私と1つにならない?]
アスカはレイがどんな事を書くか興味があり覗いてみると、真っ赤になってしまった。
「くおらファースト!アンタ何書いてんのよ」
「何って私のねがい・・・」 (ポッ)
「アンタ、そんな事は書かないの」
「そう・・・」
レイは残念そうに短冊を見つめていた。シンジはそれを見て、真っ赤になった。
「なっなに書いているんだよ、綾波!」
「これつるしたい」 (ポッ)
「だっダメだよ」
「あらいいじゃない、レイが考えて考え抜いたねがいなのよ」
「ダメ!絶対ダメ!」
アスカはミサトにこれでもかというくらい顔を近づけて拒否した。
「ファーストもいいわね!別なのを考えなさい」
「・・・・・・」 (クスン)
レイは心惜しそうに拒否された短冊を見ながら、新しいねがいを考えはじめた。そしてシンジも書き始めた。
シンジの場合
[料理が上手になりますように]
[チェロが上達しますように]
[健康でありますように]
[天の川]
シンジらしいねがいだが最後は大抵書く人がいるものである。終えた頃レイが書き始めた。
レイの場合(改正版)
[碇クンと一緒に食事がしたい]
[碇クンと一緒に歩きたい]
[碇クンと一緒に勉強したい]
[碇クンと一緒になりたい]
書き終えるとアスカの検閲が始まった。
「ふんふん、なるほど!なによ最後のは!」
短冊を突きつけるがレイは冷静な表情を変えずに頬を赤らめた。
「ねがい・・・」 (ポッ)
「アンタねえ」
「いいじゃないアスカだって、欲求丸出しよ」
ミサトはアスカの短冊をヒラヒラさせて、頬ひじをついていた。
「ミサトだってビールだらけじゃない!」
「2人ともやめてよ、終わったから飾ろう」
シンジは恐る恐る、仲裁にはいり何とかその場を収め、つるし始めた。
「ようし完成よ!」
アスカは見事な七夕を見て嬉しかった。
「それじゃあベランダに飾ろうか」
シンジは紐と笹を持ってベランダの柱にくくりつけた。穏やかな風がカサカサと音をたてる。
「んー風流風流、何か一杯やりたいわね。シンジ君ビール」
「ご飯まで待ってくださいよ」
「んーシンちゃんの意地悪ー」
「綾波も食べていきなよ」
「うん」
「とほほほ・・・・ビール・・・」
ミサトは無視され涙を流した。アスカはレイが夕食を食べていくのをよくは思わなかったが、仕方が無いと考えて部屋に戻って何か作業をしていた。
(決行は夜中ね)
楽しい夕食も終わり、レイはシンジが送っていった。無論アスカが変なことをしたらどうなるか、わかっているでしょうねと忠告は怠らない。
サー・・・・
夜中、寝静まった頃、襖が開いた。
コソコソコソ・・・・
暗闇の中を音を立てないようにつま先で歩き、ベランダに向かった。
ガチャ・・・・ガラ・・・ガラ・・・ガラ・・・
窓をゆっくりと音がしないように開けると、笹に何かをくくりつけた。
アスカの場合(追加分)
[シンジが私の魅力に気づいて、告白して一緒になれますように
待っているからはやく気づきなさいバカシンジ]
(*。*)番外(*。*)
ゲンドウの場合
[ユイー]
冬月の場合
[ユイ君]
リツコの場合
[最新の研究室がほしいわ、それと実験体もね]
マヤの場合
[せんぱーいと住みたい]
シゲル・マコトの場合
[[出番をくれー]]
リョウジの場合
[立派なスイカになるように]
七夕です。LASにしようと思ったらレイやミサトが出てきていつのまにか・・・・まあ最後で強引にしめました。
ミサトのねがいは頭にはビールしかないのでしょうか。
アスカは最初のはカムフラージュで最後のが本当のねがいですね。
シンジ、一般的。
レイ・・・・シンジひとすじですね。
短冊にこんなの書いちゃあ・・かなうかな?
番外はまあギャクです。
みんなのねがいはぶっ飛んでいます。
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION ねがい