縁日
夏休みも後半となり季節は秋の風が吹きつつあるのは昔。今は気温は変わらない。今日は近くの神社で縁日が開催される。
「縁日!楽しみね」
「アスカは初めてだね」
ドイツ暮らしのアスカにとって縁日はヒカリから楽しいものだと聞かされておりワクワクしていた。
「以前本で読んだ事があるけど、実際に体験できるなんて幸運だわ」
「出店が楽しいんだ」
「あー出店ね。鍋とかフライパンを売ってある、シンジは嬉しいんじゃないの」
「?」
シンジは一瞬何のことだかわからなかった。
「鍋って?」
「はあ?出店よ出店、鍋や窯が沢山売ってあるんでしょ」
「それって金物市じゃないの」
「へ?」
アスカはもうダッシュで部屋に戻り、本を開き確認しリビングに戻ってくる。
「ほら見なさい!鍋が売ってあるでしょ」
本の写真にはずらっと並んだ出店、だが売っているものは全て金物である。
「アスカ、ここを見て」
「なによ」
「金物市って書いてあるだろ」
「だからなによ」
「縁日と金物市は似ているようで違うんだよ」
「え?」
アスカは区別がつかない。
「縁日は食べ物やゲームができて大人から子供まで楽しめるけど、金物市は楽しめるのは主婦ぐらいかな」
「そ、そうなの。まったくこの本はダメね、お金損しちゃったわ」
本を足蹴にすると、区別がハッキリわかった。シンジは『ちゃんと書いてあるんだけど』と注意できなかった。できたとしても身が危ない。
「食べ物やゲーム、楽しみね」
「アスカ、そろそろ行こうよ」
「わかったー」
アスカは部屋から出てきた。
「どう?似合うかしら」
「う、うん」
着ていた洋服は黄色のワンピース、最初に着ていた物である。シンジはおもわず見とれてしまう。
「ジロジロ見ないでよ」
「あっ・・・う、うん」
シンジはおもわず下を向いてしまう。アスカはその様子に微笑していた。
日も落ちかける頃2人は神社に向かった。
「シンジ」
「なに?」
「縁日とかでは浴衣を着るのが普通なんでしょ」
「そうだね」
「私も着たかったな」
「アスカなら似合うと思うよ」
シンジの突然の発言にアスカは驚き顔を赤らめた。
「えっあ、うん・・・・」
「今日は間に合わなかったけど、また今度あるからその時までに用意すればいいよ」
屈託のない笑顔、一層顔を赤らめる。神社に近づくにつれて、にぎやかな声が聞こえる。
「これが縁日なのね」
「そうだよ」
石畳の両端に出店が並んでおり家族連れやカップルなどでにぎわっている。
「あっ綿菓子、ファンタスティックなお菓子」
走って出店に向かうと綿菓子を買い1口。
「甘ーい!」
ご満悦なアスカ、シンジは喜ぶ顔に嬉しかった。
「あっリンゴ飴!」
「あっクレープ!」
「あったこ焼き!」
「あっヤキソバ!」
次々と買い食いしていくアスカ、シンジは振りまわされ疲れてきた。
「アスカ、買い過ぎだよ」
「だって美味しいんだもん」
口のまわりにソースをつけながらやきそばを食べていた。
「碇クン」
「え?」
シンジは後ろから呼ばれた気がした。後ろを向いて見ると。
「綾波!」
「こんばんは、碇クン、アスカ」
レイは水色の浴衣にうちわ、巾着をもっていた。あまりの綺麗さにシンジはぽかんとしていた。
「ファースト!どうしたのよ。その浴衣は?」
「赤木博士が用意してくれたの、碇クン似合うかしら?」
「あ、うん似合うよ」
「ありがとう」 (ポッ)
頬に手をあて顔を赤らめた、その姿はシンジを一層ドキリさせる。だがその様子を面白くない者がいる。
(なによデレデレしちゃって、私に似合うっていったのはウソだったの!もうこうなればやけ食いよ。シンジのおごりで)
「シンジ、あれ買って」
いか焼き、いい匂いが漂っていた。
「まだ食べるの?ふとるよ」
「アンタ、今禁句を言ったわね」
胸倉を掴み、持ち上げる。
「え、ごごめん」
「私はふとらない体質なのよ。わかったら買いなさい」
「わかったよ」
シンジは渋々、ポケットから財布を取り出し注文する。買うのを断ったら、治療費の方が高くつく。
ちょんちょん。
「?何、綾波」
「私も食べたい・・・」
レイは気まずそうに小声で言うが、シンジにはその行動が可愛らしく返事をしてしまう。
「いいよ。すいません。いか焼き2つください」
シンジはいか焼きを受け取ると2人に渡した。
「はい」
「サンキュー」
「ありがとう」
モグモグ、パクパク。
「うーん、美味しいわ」
「綾波どう?美味しい」
「うん」
豪快に食べるアスカと、ゆっくりとした動作で食べるレイ。2人とも美少女だがシンジはレイの方に目がいく。
(なーんか、面白くないわね。私がエライってバカシンジにしめさなくちゃ・・・・あっいいのがあるわ)
「金魚すくいよ。シンジ、ファースト金魚すくいをやるわよ」
(いっぱいすくって私が1番、2人をひれ伏かせるわよ。ふふふふ)
3人は早速金魚すくいの前にしゃがんだ。
「勝負よ、シンジ、ファースト」
アスカは気合を入れ、燃え始め獣の眼で金魚を狙う。
「碇クン、どうするの?」
「これで金魚をすくうんだよ」
シンジは水面近くを泳いでいた金魚をサッとすくい、おわんに入れた。
「すごい」
「やってみるといいよ」
「うん」
レイはシンジと同じように水面近くを泳ぐ金魚に狙いを定めすくう。見事にゲット。
「上手じゃないか」
「碇クンのおかげ」
レイはおわんに入れた金魚をじっと見つめ、嬉しくて微笑んだ。
「まったく1匹だけで満足なんて、低いわね」
「なんだよ。アスカはまだじゃないか」
アスカはまだすくい始めていなかった。金魚の動きを追っている。
「真打は最後に出てくるものなのよ。シンジ!大きい水槽が必要になるわよ」
アスカは金魚を見つめ、サッと右手を入れる。
「でええい!」
気合一発。
「あれ?」
ポチャン・・・
金魚をすくったのはいいが破れてしまい、穴のあいた紙を見つめた。
「真打・・・・・」
レイはソッポを向いてため息と同時に呟いた。
「何よ?文句あるの。今のは紙が不良品だったんだわ。もう1回よ!」
再び、金魚を狙う眼になる。
「とおおお!」
ポチャン・・・
「え?」
またもや破けてしまった。
「ふん、金魚の分際でこの私に逆らうなんていい度胸だわ。もう1回」
「「・・・・・・・」」
お金を渡しまた挑戦するアスカ。シンジとレイはすくった金魚をぶら下げて呆れていた。
「むきー!」
10回して1匹もすくえなかった。歯をかみ締めて悔しがっているアスカにおじさんは同情して1匹金魚を渡した。
「はいよ、お嬢ちゃん」
「あ、ありがとう」
「1番大きいから可愛がってくれよ」
アスカが貰った金魚はシンジ達に比べ、1.5倍大きかった。
「よかったねアスカ」
「アスカおめでとう」
「ふ、ふん。嬉しくなんかないわよ」
口では悔しがっていたが、金魚を見ている顔は嬉しくて仕方がなかった。
「まあ、金魚すくいでは負けたけど、今度は射的よ」
射的の出店に来るとアスカは自身満万に銃を構える。
「えい!」
ポコ!
「やったわ!どうかしら私の腕は」
「私もするわ」
ポコ!ポコ!
レイは銃を構え、1発撃つと素早く弾を込めもう1撃、連続で商品をゲットである。
「綾波すごいや」
「簡単」
「むっ、なかなかやるわねファースト!連続撃ちなんて、なかなかシャレた事をするわね」
アスカは負けじと銃を構え、連続で撃つ。
ポコ!ポコ!ポコ!
銃が得意なアスカは次々と当てていった。
「アスカ凄いね」
「まあまあね」
意気揚々と商品を受け取ると、嬉しさから満面の笑みをつくった。レイはソッポを向いて聞こえないように呟いた。
「単純・・・」
「あら?アナタ達」
聞き覚えのある声、振り向いて見るとそこにはリツコが立っていた。
「リツコさん、どうしたんですか?」
「ふふ、久しぶりに来てみたのよ。懐かしいわ」
リツコはレイとおそろいの浴衣を着ていた、手にはヨーヨーを持っている。
「赤木博士、似合っています」
「ふふ、ありがとレイも似合っているわよ」
「リツコは1人で来たの?」
「いいえ、ミサトと来たわよ。ほら」
指をさす方向にミサトはいた。一生懸命にくじを引いている。
「こんどこそは・・・・・・また16等、本当に当たりあるの?」
最下位の16等、バッチである。すでに20個取っていた。
「ミサト、なにやってんのよ。くじ運ないんだから、やめたら」
「アスカ、シンジ君にレイ。来てたの」
「ミサトさん凄いですね」
シンジはジャケットにつけられたバッチを見て呆れた。
「へへ、新しいファッションよん」
「へん・・・」
キッパリと言うレイ、ミサトは肩を落した。
「レイ、言わないでよー、3賞を狙っているんだから」
「なんなのよ、3賞って」
「あれよ」
3等の位置にはビール商品券5万円が飾られていた。
「ふふ、ミサトらしいわね」
「なによ、リツコ6等を見てみなさいよ」
ミサトは6等の商品を指さした、リツコはそれを見ると体全体に衝撃が走った。
パシーン!
「こ、これは・・・・」
「そうよ子猫大全集よ」
リツコは商品に眼を奪われると、無意識のうちに財布を取り出していた。お金を渡しくじを引く。
「これね。私のカンがそう言っているわ・・・・・・・16等・・・・・・・・もう1回」
またお金を渡すとくじを引く、だが16等。リツコの浴衣にもバッチがたまっていった。
「シンジ、行きましょうか」
「そ、そうだね。綾波行こう」
「うん」
3人は熱中する2人をおいて歩き出した。
「お、シンジやないか」
「あ、トウジに委員長」
そこにはトウジとヒカリ。
「碇君達も来てたの」
「そうよ。ヒカリ浴衣似合うわよ」
ヒカリは黄色い浴衣、トウジは毎度のことで黒いジャージ。
「アスカだって似合うわよ。綾波さんも可愛いわよ」
「委員長さんも似合ってる」
「ふふ、ありがとう」
ヒカリとレイが話している横でアスカはニヤリと笑みを浮かべた。
「ヒカリ、どうしてジャージといるのよ。もしかして?」
「なななに言っているのアスカ、ぐぐぐぐ偶然あったから見てまわっていたの、ね鈴原」
ヒカリは顔を真っ赤した。
「そうや。ワシが出店で食べていたら、ちょうどイインチョウがいてな。一緒にまわっとるんや」
トウジはケロッとした顔で言いのけた。
「じゃあワシらは行くからな。シンジまたな」
「うん、じゃあね」
アスカは立ち去るヒカリを捕まえて耳元で呟いた。
「ヒカリ、頑張りなさいよ」
「ななにを頑張るのよ。もう・・・・アスカも碇君と頑張ってね」
負けじと言い返す。
「ちちちち違うわよ。シンジは下僕よ」
「ふふ、そう。じゃあまたね」
ヒカリは笑いながら立ち去り、アスカもまた手を振り笑った。
辺りはすっかり暗くなり、提灯の光が情緒をかもしだしていた。3人は帰るために境内を歩いていた。
「あれ?あそこに居るのはミサトさんとリツコさん」
「あ、本当、何やってんのかしら」
ミサトとリツコはベンチに座っていた。ミサトは浅く座り空を見上げ、リツコは両腕を組み地面を向いていた。
「ミサトさん、リツコさん。何しているんですか」
「・・・・シンジ君・・・・・うわーん。ダメだったのよーーー」
ミサトはイキナリ泣き出した。突然の事にシンジ達は驚いた。
「どうしたんですか?訳を聞かせてください」
「う、ううひっく・・・・実はね・・・・・」
「「「・・・・・・・・・」」」
3人は唖然となった。ミサトはジャケットの裏をめくるとそこにはバッチだらけ。
「当たらなかったのよーーーーーーー」
「無様ね・・・・・・」
リツコは呟いた。自分も当たらなかったのだ。袋にはバッチだらけ。
「・・・・買ったほうが安くつきますね」
「まったく、くじ運がないわね」
「へっぽこ」
「「・・・・・・・」」
2人は3人に言われても言い返す事ができなかった。
「ふうー・・・気を落さないでください、帰りましょう」
「そうよね、この落ち込み帰ったら一杯やるわよ」
ミサトは立ちあがりこぶしを空に突き立てる。
「ダメです。くじを何回したんですか?今月はそれで赤字になると思いますから、ビールは当分禁止です」
「そ、そんなーーーー」
「リツコさん、寄っていきませんか?お茶をだしますよ。綾波もどう?」
「そうね。お邪魔になろうかしら」
「ありがとう碇クン」
5人は神社を後にした。帰りは4人はお喋りをしていたが、ミサトだけは泣いていた。
「ビール・・・・・・」
マンションについた5人はシンジの出したお茶を貰い一息ついた。
「ふふ、元気いいわね」
「碇クン」
「何?綾波」
3人は出店で買った金魚鉢にすくった金魚を入れて眺めていた。
「私の金魚の名前」
「アンタ、何考えてんのよ」
「僕の名前はやめてよ」
「じゃあシンジクン」
「同じでしょうが」
レイのボケにアスカはツッコム、リツコは微笑ましく見ていた。
「ふふ、こういう光景っていいわね・・・・・・ミサトいつまで泣いているの?」
「う、ううひっく・・・だって・・・・ビールが飲めないなんてーーーー」
「お茶を飲みなさい。美味しいわよ」
「ううううひっく。こうなりゃ、やけ飲みよ」
ミサトは泣きながらお茶を一気飲み。
「うう、むなしいよーーー」
「無様ね」
「じゃあアスカ」
「どうして私の名前なのよ」
名前はまだ続いていた。
「・・・・・・アスカに決めたわ」
「やめんかい!」
うーーん、夏の風物詩、縁日。アスカとレイの対決にミサトとリツコのちょっとへっぽこな姿。
金魚対決ではレイに軍配が、射的対決ではアスカに軍配。うーーんほのぼの(^^)
くじ引きでミサトはビール券に目の色が変わり、リツコは子猫大全集に気を奪われ、jun16もあります。くじ引きって当たった事ってないです。当たっているとこを見た事もありません。本当に入っているのでしょうか(特賞とか、1等、2等など)
無事に?レイの金魚にはアスカと命名されました。
レイが遊びに来たら「アスカ元気にしてた?」
「私はいつでも元気よ」
「違うはこっちのアスカ」
「名前かえなさい!」
「イヤ」
「ごはん美味しい?」
「食べてないわよ」
「こっちのアスカ、ごはんやっているの」
「まぎらわしいわよ。名前かえなさい!」
「イヤ」
「アスカお風呂に入りましょう」
「イヤよ1人で入れば」
「・・・・・・」
「待ちなさい、金魚入れたらゆで金魚になるわよ」
「金魚じゃないわ。アスカよ」
「はあ・・・・疲れるわ」
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION 縁日