サーキットの娘
グウォオオーン!!グウォオオーン!!
グウォオオーン!!グウォオオーン!!
サーキットにエキゾーストノートが響き渡る。ポールポジションにアスカ、二番手にシンジが陣をとる。大歓声、二人のボルテージは最高潮に高まっている。
「まあ、私にかなうわけないけどね」
シンジを見ながら勝利宣言をするアスカ、自信たっぷりだ。
「むっ、そんなことわかんないよ。僕だって、得意なんだからアスカには負けないよ」
「そんなこと、勝ってから言うものよ」
シンジを格下の瞳で見ながら、笑う。シンジは見てろ、といった顔でアスカを見る。
スタートの時間が迫る。二人共ハンドルを握り、前をみつめる。レッドシグナルが点滅、3,2,1、グリーンシグナル、GOー 各車いっせいにスタートする。
「よし!決まったわスタートダッシュ」
「しまった!失敗した」
アスカはアクセルワークを成功させ、トップ。シンジは失敗したが2位に食い込んでいる。
「ふふ どうしたのシンジ」
アスカは余裕で緩やかな第一カーブを抜けていく。シンジもやや遅れたがつけている。
「まだレースは始まったばかりだ」
順位は変わらず、二人は緩やかなカーブ、ストレートを走り抜ける。アスカのマシンが最初の急カーブにさしかかる。
「楽勝よ!こんなカーブ」
アスカは見事なシフトダウン、ブレ―キングで見事にクリア。シンジもそれに続く。
「やるな、アスカ」
シンジも見事な操作でクリア。スピードを上げ、また減速アウト・イン・アウト、シフトアップ、スピードを上げる。少し長い直線、アスカを追い上げる。
「シンジにしてはなかなかやるわね、でも私の敵じゃないわね」
ミラーで後ろを確認しながらスピードを上げる。前方は左、右となったシケイン。手前でブレ―キング十分にスピードを落とし、入っていく。そしてマシンを揺らしながらスピードアップ、ストレートへつなげる。
「いつの間にアスカは上手になったんだ?」
「ふふふ、天才である私に不可能は無いのよ」
シンジはアスカを追うが一向に差が縮まらない。むしろ徐々に離されていく。その差2.00.00たいしたことの無い差と思うがレースでは、2秒でも大きい。
「うーん、アスカのマシンは高速が得意だから、でも立ちあがりが遅いからコーナーで勝負だ」
シンジは前のアスカがカーブでブレーキをかけているが、シンジはまだかけない。ギリギリまでもっていく。
キーキーー!!
ギリギリのブレ―キング。アスカに詰め寄る、そして立ちあがりシンジのマシンが早い。アスカの後ろにぴったりつく。
「くっ、やるわねシンジ。アンタのマシンはカーブが得意なようね。でも負けないわよ」
アスカは前方を見、笑う。前方は果てしなく長いホームストレート、アスカはアクセルを踏みマシンのエンジンが甲高いサウンドを鳴らす。
グウオオォォーーー!!!グウオオォォーーー!!!
グウオオォォーーー!!!グウオオォォーーー!!!
「さあ、いくわよ!」
アスカは350km/hオーバーでホームストレートを駆け抜ける。
「なっなんて速いんだ」
シンジのマシンはカーブでアスカを追い詰め、立ちあがりで並ぶが、ストレートになるとかなわない。どんどん離されていく。
「負けるものか!」
シンジもアクセルを踏みこみスピードを上げるが340km/hオーバーアスカに10km/hおよばない。差は3.23.05このままではカーブで差を詰めてもストレートで離される。そのうえここは高速コース、勝負は明らかに目に見えている。
「シンジ 私の勝ちね!」
まだ先は長いがアスカは勝利を確信している。
「まだだよ、アスカ!先は長いんだ。何があるかわからないよ」
シンジはミスの無いハンドルワークで、アスカは多少ミスが有るもののエンジンパワーで、周回を重ねていく。
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
五周目、そろそろ周回遅れが現れ出した。
「ええいっ、もう!遅いマシンはどきなさいよ!」
アスカは周回遅れのマシンに手間取っている。かわすのは苦手のようだ。一方シンジはタイムを下げずに後続車をパスしていく。
「よし!アスカはパスするのが苦手のようだな。ここはチャンスだ」
シンジは周回を重ねるごとにアスカにさを縮めていった。アスカは焦った、しかしそれがミスにつながる。
「どきなさいよ!ほんとっに遅いんだから!!」
キッーキッキー!!
「しまった!!」
ブレーキミス。タイヤスモークをあげながらカーブを曲がりきれずコースを外れる。痛いロスタイム、リタイヤとおもわれたが何とかコースに戻る。
「もらった!」
「はっ?」
アスカのマシンがコースに戻りスピードを上げる横をシンジのマシンが通り過ぎる。
「どうだい?アスカ」
「くっくーー」
悔しがるアスカを尻目にシンジがトップをとる。アスカのマシンが高鳴りする。
グウォーーン!!グウォーーン!!
「待ちなさい、シンジ!」
「ふーん、ここまでおいで!」
アスカを挑発する。
「くー、シンジのくせに」
アスカは怒りシンジを追走する。が遅いマシンにとまどってしまい、なかなか差が縮まらない。
「もーー、どきなさいよっ!」
焦り、ミスがでる。差が広がる。残り周回が少ない。
「くー、シンジに負けるなんて許されることじゃないわ」
「どうしたらいいか?」
(はっ、そうよ!こんな時こそ気を落ち着かせ精神集中よ。)
アスカは気を落ち着かせ冷静になる。瞳が輝く。
「いくわよ!アスカ!!」
アクセル、シフト、ブレーキのタイミングが変わる。それに応じてタイムが上がりシンジを追う。
「え?アスカが追い上げている」
「ふふふ、どう?シンジ」
シンジは先ほどと違う走りに、焦った。今度はシンジにミスが出始め、タイムが落ちる。
・・・
・・・
・・・
・・・
ファイナルラップ、シンジがトップしかしアスカが後ろにぴったりつけている。
「ふっ、シンジ覚悟はいい?」
「まだだよ、僕がトップなんだから」
シンジは冷静さを装っていたが、このままでは抜かれる、焦っていた。アスカは獲物を狙うハンターの様に様子をうかがっている。
最終コーナーアスカが仕掛ける。横に並ぶ・・・ブレ―キング勝負。
キッキーキーー!!キッキーキーー!!
キキキッキーー!!キキキッキーー!!
アスカが一瞬早いブレーキ、やや強引なコーナーどりだがラインを通る。
シンジは一瞬遅れるブレーキ、ミス!ラインを外れる。
「しまった!」
「いただき!」
アスカのマシンはタイヤスモークをあげながら、最終コーナーを無事にクリア。シンジのマシンは曲がりきれず、砂地に突っ込む。
「うわわわわーーー」
ズザザザザーーー!!!ドオオオーーン
「シンジ!!」
砂煙をあげタイヤバリアに衝突、ようやく止まる。シンジは大丈夫なのか?
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
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・・・
・・・
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・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
GAME OVER
1P WIN
2P LOST
「やっぱり私が勝ったわね。シンジ、ツメがあまいわよツメが」
「うーー」
レースゲームの筐体からおり、アスカは腰に手をつけシンジをからかう。
「まあ、そこそこの腕を持っているようね。関心したわ」
「アスカこそ、いつの間に上手になったんだい?」
「私は天才だからこんなの簡単よ!」
「……」 (ホントはわかっているよ)
胸は張り、アスカは得意げだ。
しかしシンジは知っていた。アスカが一人でここに来て練習していることを、あえて口に出さなかったが。
「さあ、シンジ!次は”びいと・まにあ”で勝負よ」
「えーーー」
「なによ!私がせっかく誘っているのに、その態度は!!」
アスカはシンジに詰め寄る。
「わっわかったよ」
”びいと・まにあ”の前につきコインをいれる。
「さあ、勝負よ!!」
「……」 (どうせ、練習しているんだろう、僕は下手なのに…)
結果は言うまでもない。
休日・ゲームセンターでのシンジとアスカの一日でした。
おしまい
「シンジ!次は”でんしゃでごー”よ!!」
「…………」
パフィーの「サーキットの娘」を聴いていて思いつきました。ちなみにコースは私の好きなイタリアのモンツァですが表現が下手ですいません。
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION サーキットの娘