花火

 あ〜〜つうっ!毎日暑いわね、暑いのにリツコから呼び出し。まったく用があるなら自分から来るのがマナーなのにね。

「リツコさんの用って何だろう?」

「さあ、また変な研究を見せびらかしたいんじゃないの」

 見せられるアタシ達はどんなリアクションしたらいいか困るのよね。



「いらっしゃい、忙しいところ悪いわね」

 口ではそう言っているけど全然悪いとは思っていないのよね。

「ええ、本当に悪いわよ!」

「ア、アスカ」

 シンジが慌てていたけど、アタシは本当の事を言ったのよ。

「それはごめんなさいね、これでも食べなさい」

「バナナなんかで機嫌なんかとれるわけないでしょうが!でも一応貰っておくわ」

 まったく安物のバナナでアタシを誤魔化そうとして、モグモグ・・・美味しい〜

「もう一本ちょうだ〜〜い」

「まだまだあるから食べて良いわよ」

「わお〜〜」

 モグモグ、モグモグ・・・やっぱりバナナは美味しいわ。


「ところリツコさん、用って何ですか?」

「用はね、これよ」

 リツコがテーブルに段ボール箱を置いたわ、中身は何かしら?

「花火?」

 ダンボールの中身は誰が見たって花火が入っていたわ。

「そうよ、夏の定番花火よ。私が作った花火で売り出す計画よ」

 また商売なのね、いったいいくら儲けたら満足するのかしら?

「へ〜リツコさんが作ったんですか・・・あっいたたた急にお腹が痛くなってきた。医務室に行かないと・・・」

 あっシンジが逃げようとしている、ちょっと待ちなさいよ。

「シンジ君、医務室に行かなくても大丈夫よ。この注射を打てばね、ウフフ」

「あ、何故か急に治りました、大丈夫です!」

「あらそうなの残念ね、ウフフ」

 ゾ〜〜〜〜、リツコの笑顔が不気味だわ。


「それじゃあ、売り出す前に貴方達に意見を聞きたいのよ、モニターしてちょうだい」

 そんな事じゃないかと思ったわ。

「爆発しないでしょうね?」

「ええ大丈夫よ、手足が吹っ飛ぶ事は無いと思うわ、多分ね」

「ちょ、ちょっと〜〜多分って何よ」

「今のは聞かなかったことにしてちょうだい」

「んなことできるか〜〜〜!」

 アタシはまだ死にたくないわよ。

「アルバイト料はずむわよ」

「えっいくら?」

「それはね・・・」

 そ、そんなにくれるの?じゃあモニターしちゃおうかな。

「アタシするわ」

「ア、アスカ平気なの?」

「死にはしないわよ、アンタもするのよ」

 危険な花火はシンジにさせればすむものね。

「えっ僕も?」

「当然よ!」

 拒否はさせないわよ、もししたら血の海に沈むと思いなさい。

「決まりね、広場に移動しましょう」





 アタシ達は広場に移動したわ、まだ昼だから今から花火をしてもちょっと味気ないわ。

「アタシはこれをするわ」

 ダンボールから比較的安全に思える手に持つ花火を選んだわ。

「シンジ〜火をつけて」

「うん」

 シンジに火を点けてもらって・・・

「あ〜〜綺麗」

 普通の花火だわ、リツコのことだから変な花火と思ったけど案外いいわね。

「ウフフそうでしょう、昼間でも楽しめる花火よ」

「へ〜〜リツコにしてはマトモな発明ね」

「ちょっと発言にムッと来るけど喜んでもらえたね」

「じゃあ僕はこの花火をしようっと」

 シンジが選んだのはドラゴン花火、地面に置いて火を点けたら火花が飛び出すやつね。

「あっ凄いやこれ」

 小さいのに凄く高くまで火柱が上がるわね、それに時間が長いわ。

「これは長く噴き続けるのよ」

 普通のはすぐに終わっちゃうけど、これは長時間楽しめるわね。

「リツコさん凄いですよ、これは売れますね」

「ウフフありがとう」

 シンジも絶賛しているわ、またこれで儲かっちゃうのね。なんか奢ってもらおうっと。

「シンジ君、これはどうかしら」

「ロケット花火ですか」

「ええ、花火の定番よ」

 飛ばすやつね、ミサトがお気に入りの花火だわ。

「セットして・・・」

 ただ飛ぶだけで綺麗じゃないからアタシは好きじゃないんだけどね。

「火を点けて、あっしまった」

「あっバカシンジ倒してんじゃないわ」

 手に触れて倒れたじゃないのよ、横に飛んでいくわ。

 ビュ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!

 ドオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン!

「「・・・」」

 な、何よそれは?ベンチに当たったら粉々に吹っ飛んだじゃないのよ、それも石のベンチが。

「火薬の量が多かったみたいね」

「多いって問題じゃないでしょうが、ミサイルじゃないのよ」

 人に当たったら死んじゃうわ。

「あら言ってなかったかしら?ロケット花火って」

「花火じゃないわよ!兵器じゃないのよ」

 こんなのが売り出されたら街中が危ないわよ。

「ハプニング花火として今年の夏ブームになると思うんだけど、ダメかしら?」

「ダメに決まっているでしょうが!ロケット花火は発売中止!」

「そう残念ね、シンジ君はどう思うかしら?」

「僕はいいと思いますけど」

 なんで良いのよ?男の血が騒ぐっての?

「流石シンジ君、男の子ね。残ったロケット花火をあげちゃうわ」

「ありがとうございます」

「こら〜貰うんじゃないの!」

 使えないように水をかけちゃえ。

「あ〜〜せっかく貰ったのに」

「大丈夫よシンジ君、完全防水だから雨の日でもできるわよ」

「そうなんですか安心しました」

「そんな事するな〜〜〜〜!」

 まったくリツコも変な花火を作ったわね、折角褒めたのにどこかで脱線するのね。


 リツコさん特製の花火は優れもの、アスカちゃんとシンジ君はちょっとリツコさんを見直しました。

 でもそれだけで終わるリツコさんではありません。花火と称して兵器を作っていました(^^;)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 花火