june

「綺麗ね〜〜」

 日曜日の午後、アスカはリビングでテレビを見ていた。テレビでは六月らしく、ウエディング特集を放送しており、ドレスの華やかさにお菓子を食べながら溜め息を付いていた。

「アタシにも似合うドレスね」

「クエクエ」

「うわっ大胆な胸元」

「クエクエ」

「カラフルな色だわ」

「クエクエ」

「斬新なデザインね」

「クエクエ」

「和風なドレスね」

「クエクエ」

「やっぱり純白よね」

「クエクエ」

 独り言のように呟くアスカに、隣で一緒に見ているペンペンは相槌を打っていた。

「ジューンブライドかぁ〜いいわよね」

「クエクエ」

「アタシは誰と結婚するのかしら?う〜〜ん」

 アスカはテーブルに転がっていたボールペンを手に取ると、広告の裏側の白い面に何かを書き始めた。

    加持アスカ

「うふふ、良いわよね〜加持さんのお嫁さん。でも最近ミサトと仲が良いのが、ちょっと面白くないのよね」

 溜め息を付くと、再び書き始めた。

    日向アスカ

「う〜〜ん、なんかしっくりこないわね〜〜日向さんって眼鏡の印象しかないから、想像できないわ。そう思わない?」

「クエクエ」

ペンペンは頷いた。

 再び書き始めるアスカ。

    青葉アスカ

「青葉?青葉って誰だったかしら?う〜〜ん、顔が思い出せないわ。ペンペンは知っている?」

「クエクエ」

 ペンペンは大きく左右に首を振った。

「そう、アンタも知らないんなら、アタシが知っているはずが無いわよね」

 印象が薄い青葉であった。

「ええと・・・あとは・・・」

    碇アスカ

「な、なんでこいつの名前を書いちゃったのかしら。ぜ、全然アタシには似合わないわ」

 否定をしながらも顔は耳まで真っ赤であある。

「クエクエ」

「えっ、似合うですって?な、何馬鹿なこと言ってんのよ。照れるじゃない」

 アスカは顔をクッションで隠した。隠した顔には微笑が浮かんでいたのであった。

「楽しそうだね、何をしているの?」

 そこへ、お風呂掃除を終えたシンジがやって来た。

「な、なんでもないわよ」

「クエクエ」

「え、何?」

「あ、こらペンペン」

「グエエ〜〜」

 シンジに先ほどの出来事を教えようとするペンペンをアスカは強引に口を塞いで冷蔵庫へ押し込んだ。

「まったく〜油断も隙もあったもんじゃないわね」

「いったい何をしていたの?」

「べ、別に知らなくて良いことなのよ」

「ふーん、あれ?ここにあった広告しらない?」

「え、あ」

「あ〜それそれ」

「だめ〜〜」

 アスカは広告へ手を伸ばそうとしたシンジより先に取り、書いた名前を見せないように背中へ隠した。

「特売の広告だから見るんだよ」

「み、見なくていいわよ。こんなの見なくてもいいでしょ」

 広告を渡して名前を見られたら恥ずかしい。

「必要だよ、今日の特売はかなり安いんだよ」

「スーパーに行けば貼ってあるでしょう。だからここで見なくてもいいの!」

「でも〜〜」

「デモもストライキもないの!アタシも一緒に行ってあげるから用意しなさい」

「アスカも行くの?」

「当然よ!さあ行くのよ」

 本当は行く予定はなかったが、もう後には引けない。

「僕はこのままで良いよ」

「そう、じゃあ行くわよ」

「あ、うん」

 シンジの手を引っ張りながら、先ほど背中に隠した広告をわからないようにポケットに入れた。

「あれ?広告ポケットに入れたの」

「五月蝿い!さっさと行くわよ!」


 シンジに指摘され、顔が真っ赤になるのを手を強く握ることで誤魔化すアスカであった。


 アスカちゃんも女の子、当然ウエディングドレスに興味があります。そして将来のお婿さんの苗字を書いて想像するアスカちゃん、やはりシンジ君がお似合いでしょうか(^^)

 広告の裏に書いたのがまずかったですね。広告は主夫シンジ君が一番チェックする品です。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION june