ンイタンレバ

「へえ〜逆チョコなんてのがトレンドなんだ」

 朝食を食べ終えたシンジがリビングで、アスカが読んでいた雑誌を暇つぶしに読んでいた。他の同居人2人は休日なのでまだ布団で夢の中にいた。

「そういえば今日はバレンタインかあ〜これはアスカにチョコをあげないと怒られるのかな?」

 デジタル時計に表示されている日付は2月14日、バレンタインデー当日である。

「買うとしたらアスカにミサトさんに綾波の分かな」

 ページを捲っていくと売れ筋チョコの特集が載っている。

「うわ〜どれも高いなあ〜お小遣いじゃ買えないよ」

 お小遣いでは一個しか買えない値段であった。

「デパートに行ってみようかな」

 新聞のチラシにデパートのバレンタイン特集があったのを思い出した。

「これなら買えるぞ」

 お小遣いで十分に買える値段であった。部屋に戻ると財布の中身を確認して着替えて家を出て行った。そのシンジの後姿をこっそりと襖の隙間から見つめる瞳があった。

「よしっ計画通り!」

 瞳の主はアスカであった。ワザと雑誌の逆チョコ特集のページを開いてテーブルに置いていたのである。小さくガッツポーズをすると、大きなあくびをしてまた眠りに入った。












「へえ〜男の人も多いなあ」

 デパートのチョコレート売り場に着いたシンジは男性の多さに驚いた。

「ちゃんと逆チョココーナーがあるんだ」

 シンジは逆チョココーナーへ向かった。

「どれが良いかな?」

 試食を口に運ぶ。

「うん、美味しいなあ。これにしようかな」

 違うチョコを口に運ぶ。

「これも美味しいなあ、迷うなあ〜」

 財布と相談して選んでいく。

「ミサトさんのはこれでいいかな」

 ミサト用に選んだのは、チョコの中に麦酒が入っているタイプであった。

「綾波にはこれがいいかな」

 レイ用はホワイトチョコである。

「アスカにはこれだな」

 アスカ用はお腹がいっぱいになるようにチョコの詰め合わせを選んだ。

「さあ帰ろうっと」

 レジを済ませるとデパートを出るのであった。









「まずは綾波に渡しに行こう」

 電車を降りレイのアパートへ向かおうとすると、前方から見慣れた人物が歩いてきた。

「あれは綾波じゃないか」

 レイが駅の方に向かって歩いて来ていた、シンジは手を降ると走って近づいた。

「やあ綾波、どこへ行くんだい?」

「碇クン、お買い物に行くの」

「買い物に行くんだ。荷物になるかもしれないけど、これをあげるよ」

 シンジは先ほど買ったチョコを渡した。

「これは?」

「バレンタインのチョコだよ」

「バレンタイン?」

 レイは首を傾げた。自分の中の知識でバレンタインは女性から男性に贈るものだと思っているからだ。

「逆チョコってのがトレンドみたいなんだよ」

「逆チョコ?」

 レイはまた首を傾げた。

「じゃあ僕は行くね。また学校で」

「うん、サヨナラ」

 シンジは手を振ると急いで家へ帰るのであった。その場に残ったレイは貰ったチョコをずっと見続けていた。

「碇クンからのチョコ・・・嬉しい」













「ただいま〜」

「おかえり〜〜」

 奥からミサトの声が返ってきた、起きているようである。シンジはリビングへ向かった。

「どこ行ってたの?」

「ちょっとデパートへ行ってきたんですよ。これはミサトさんにです」

「わおっ何かしら?」

 ミサトは早速ラッピングされた包み紙を開いた。

「わお〜チョコレートじゃない。どうしたの?」

「今日はバレンタインじゃないですか」

「バレンタイン?あ〜〜今日はそうだったわね。でも女性から贈るものでしょう。もしかしてシンちゃん、おね〜さんに愛の告白かしら?」

 ミサトの顔がにやけた。

「違いますよ、逆チョコですよ」

「逆チョコ?」

 シンジは逆チョコの説明をした。

「な〜〜んだ、そんなのが流行っているんだ。知らなかったわ、ありがたくいただくわねん」

 ミサトはチョコを口に運んだ。

「ん〜〜〜麦酒味のチョコとはわかっているわね〜」

 気に入ったようである。

「アスカは起きていますか?」

「うん、部屋に居るわよ」

 シンジはアスカの部屋の襖をノックした。

「アスカ〜」

「な〜に?」

「ちょっと渡したいものがあるんだけど」

「いいわよ、入って」

 許可が出たので襖を開けた。

「何よ渡したいものって?」

 わかっているのだが、あえて知らないフリをする。

「これなんだけど」

 袋から大きなラッピングされた箱を出した。

「何?可愛らしいリボンまで付けちゃって」

「アスカにバレンタインだよ」

「アタシに?贈る側になるなんて女の子になっちゃのかしら?」

「違うよ、逆チョコだよ」

「逆チョコ?」

 意味を知っているが知らないフリをする。

「あれ知らないの?アスカが読んでいた雑誌に載っていたんだよ」

「そ、そうなの?興味が無かったから読んでいないわ」

「そうなんだ、逆チョコってのはね」

 シンジは知ってて知らないフリをしているアスカに説明をした。

「ふ〜〜ん、アンタも流行りものが好きねえ〜ありがたく貰っておくわよ」

 嬉しいのだが冷静さを装う。

「開けていい?」

「うん、良いよ」

 シンジがどんなチョコを買ってきたか気になる。

「わお〜〜チョコがたくさん」

「気に入ってもらえたかな?」

「まあアンタにしてはいい贈りものね」

「よかった、じゃあ僕は行くね」

「ちょっと待ちなさい」

「何?」

 アスカはシンジを呼び止めると机からラッピングされた箱を取り出した。

「貰うだけじゃ不公平だから、本当のバレンタインよ」

「僕に?」

「何驚いた顔をしてんのよ。いるの?いらないの?いらないならアタシが食べちゃうわよ」

「い、いるよ!」

 シンジはチョコを受け取った。

「アタシが選んだチョコだからありがたく食べなさいよ」

「うん、ありがとうアスカ」

「うふふ、ホワイトデーを期待しているわよ」

「ホワイトデー、僕も期待しているね」

「なんでよ、ホワイトデーに逆なんて聞いた事ないわよ。だから貰うのはアタシであげるのはシンジよ」

「そ、そんな〜」

 ガッカリするシンジにウインクをして微笑むアスカであった。


 逆チョコを贈るシンジ君、見事にアスカちゃんのワナにはまっています(笑)

 チョコを貰ったアスカちゃんですが、ちゃんとシンジ君にチョコを用意してホワイトデーを期待しています。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION ンイタンレバ