「アタシッ!今日から夏休みよ!」

「僕もだよ」

 今日から夏休みだ。普段より遅く起きてきたアスカは夏休みだから浮かれているよ。

「今日から何をしようかな〜」

 ちょっと遅めの朝ごはんを食べるアスカを背に、僕は洗い物をして今日の計画を考えた。

「僕は宿題をしようかな」

 早めに終わらせておいた方が、後々焦らなくていいからね。

「な、何ですって〜〜〜!?」

「びっくりした、どうしたの?」

 アスカが突然立ち上がり大声を上げた、ビックリするよ。

「夏休みの初日に宿題ですって〜〜?何考えてんのよ!夏休みといったら遊ぶのが当然でしょ」

「夏休みの宿題も当然だと思うけど」

「アンタバカ〜夏休みは長いんだから後からやればいいのよ」

「そう言って去年のアスカは、最後の日に焦って僕の宿題を写していたじゃないか」

 まったく写すのに僕も手伝わされて困ったよ。

「きょ、去年の事は去年なのよ。今年は違うのよ」

「違わないと思うけどなあ〜去年のようにならないよう、僕と一緒に宿題を終わらせよう」

「嫌よ〜!宿題を夏休み初日からするなんて何様のつもりよ?ミサトに言いつけてやる〜〜」

 何様のつもりって言われてもなあ。あ〜あ、ミサトさんの部屋へ走って行ったよ。そろそろミサトさんの朝ご飯を用意しようかな。

「シンちゃん!アスカから聞いたわよ」

 ミサトさんがアスカから起こされてやってきた。相変わらず髪がボサボサだなあ。

「夏休み初日から宿題をするですって?」

「はい、早めに終わらせておくんですよ」

「な、何て事なの・・・シンちゃんが不良になるなんて、私の育て方がまちがっていたのね」

「ちょっと不良ってどうしてですか?」

「夏休みと言ったら遊ばなきゃダメよ。宿題なんて不良がすることなのよ!」

 ミサトさんの考え方が間違っていますよ。

「ほらシンジ!ミサトも言っているでしょうが」

「でも宿題をしないと」

「こうしちゃいられないわ、シンちゃんを更生させる為に出かけるわよ!」

「出かけるの?やった〜〜準備してくるわね」

「出かけるってどこへですか?」

「気にしなくていいのよ、シンちゃんも早く準備してきなさい」

「あ、まだ掃除があるんですけど」

「そんなのは後回しよ、私も準備してくるわ」

「は、はあ」

 ミサトさんの勢いに押されて僕は準備をしに部屋へ戻った。











「準備できたかしら」

「はい」

「オッケーよ」

 僕とアスカが準備をしてリビングで待っているとミサトさんがやってきた。

「さあ行くわよ〜」

「お〜〜!」

「ん〜〜アスカは元気が良いわね。シンちゃんも元気よくお〜〜よ!」

「あ、はい・・・お〜〜」

 僕はちょっと照れくさく拳を突き上げて返事をした。

「シンジ〜〜元気ないわよ」

「そんな事ないよ」

 アスカが元気良すぎるんだよ。

 僕とアスカはミサトさんの車に乗り込み出かけた、どこへ行くんだろう?








「ねえミサト、どこ行くの?」

「そうねえ〜夏休み初日だからかる〜〜くドライブして高原でご飯にしましょう」

「まあ初日だからそんなもんね」

 窓を開けてのドライブ、風が気持ちいいなあ。

「シンちゃん、楽しんでる?」

「あ、はい楽しんでますよ」

「本当〜?良かったわ」

「シンジ〜楽しんでいるなら、もっと楽しそうな顔をしなさいよ」

 隣に座っていたアスカに両頬を指で押し上げられて無理やり笑顔を作らされたよ。

「ほ〜ら楽しくなったでしょう」

「う、うん」

「ふふ、仲が良いわね〜」





 それから暫くして高原の駐車場に着いた。近くに売店があるぞ。

「あそこでお昼ご飯を買って食べましょう」

「うん」

「はい」

 ここの高原は牛や馬が放し飼いにしてあるんだね、見ながらご飯を食べよう。

「ご飯はここで食べましょうか」

 ミサトさんは車に積んでいたシートを広げると僕たちは腰を下ろした。

「「「いただきま〜す」」」

 アスカはサンドイッチ、僕はおにぎり、ミサトさんは牛丼・・・牛丼!?

「ん〜〜やっぱり牛を見ながら食べる牛丼は最高ね」

「うわっミサトって最悪ね」

「うわっそういう事言うの?アスカが食べているサンドイッチだって卵が入ってるじゃない、ほらあそこにいる鶏の卵だったかもしれないわよ。もしアスカに食べられなかったら今頃ヒヨコでピヨピヨ歩いてたかもしれないのにねえ〜〜」

「・・・シンジ、食べて・・・おにぎりちょうだい」

「あ、うん」

 ミサトさんの言う事を真に受けて顔が真っ青になっているよ。

「あ〜〜牛丼が美味しいわ。あらアスカはシンちゃんのおにぎりを食べているの?」

「おにぎりが食べたくなっただけだもん、ミサトのいじわる」

「ふふ、ごめんごめん冗談よ。暖めてもヒヨコにはならないから安心して食べて良いわよ」

「もういいわよ、お腹いっぱいよ」

 頬を膨らませてそっぽを向いたよ。

「ふ〜〜食べたわ〜牛さんに感謝してごちそうさまでした」

 ミサトさんは牛に手を合わせてごちそうさま。

「さあてこれからどうしましょうか?」

「アタシ、馬に乗りたいわ」

「良いわよ」

 へえ〜馬に乗れるんだ、ああお金がいるんだね。

「ミサト、お金出して」

「え〜自分で出しなさいよ」

「イヤ〜さっきアタシの食欲を無くした罰よ」

「はいはいわかったわよ」

 ミサトさんは渋々お金を出した。アスカは馬に跨ると飼育員の人が馬を歩かせた。

「シンちゃんも乗る?」

「僕はいいですよ」

「そう、じゃあ写真を撮ってあげなさい」

「はい」

 僕は携帯を取り出すとアスカを撮りはじめた。

「アスカ〜〜こっち向きなさ〜〜い」

 ミサトさんの声にアスカが気付いて手を振ってきた。

「シンちゃん今の笑顔を撮っておきなさい」

「あ、はい」

 ミサトさんに言われるままにシャッターを押した。

「撮れた?」

「はい」

 携帯の画像を見せた。

「うんうん、良い笑顔ね。後で添付して私の携帯に送ってね」

「はいわかりました」

 アスカの画像を見てミサトさんは嬉しそうに微笑んでいる。

「十四歳の笑顔は良いわね」

 携帯を僕に返すとミサトさんはアスカに手を振って笑っていた。そっかミサトさんは・・・

「あ〜楽しかった。シンジ次乗りなさいよ」

「あ、僕は」

「シンちゃんお金なら出すわよ」

「あ、はい」

 流石に断れないな。僕は馬を撫でるとゆっくりと背中に乗った。

「高いなあ」

 普段より目の高さが違うから違和感があるなあ。

「シンジ〜〜」

 アスカの声が聞えた、見てみると携帯で僕を撮っている。

「シンちゃ〜ん」

 ミサトさんが僕に手を振ってきた。僕も笑顔で振り返したぞ。

「どう楽しかったでしょう」

「うん」

「アタシの写真、後から添付してちょうだいね。アタシもアンタの写真を送るからね」

「わかったよ」

「それと待ち受けにするのも許可してあげるわよ」

「それはいいや」

「なんですって〜〜!?」

 やっぱりね、怒ると思ったよ。

「シンちゃんからかったらダメよん」

「はい」

「何よ、ミサトもシンジもムカつく〜〜こうなったら無理やり待ち受けにしてやるわよ」

「あ、僕の携帯が」

「こうしてこうしてこうよ!」

 待ち受けがアスカになったよ、せっかくペンペンの画像だったのに。

「替えたりしたら承知しないわよ」

「わかったよ」

 携帯を壊されそうだから替えるのやめとこう。

「楽しんだわね、そろそろ帰りましょうか」

「うん」

「はい」














「たっだいま〜〜」

 帰りも安全運転で無事に帰ってきたぞ。

「シンちゃん、楽しめたかしら?」

「はい、今日はありがとうございました」

「ふふ、良かったわ。夏休みはね宿題をするだけじゃないのよ。遊ぶ時は遊ぶ、勉強する時も遊ぶのよ」

「それはちょっと違うような気がしますけど」

「んもう〜シンちゃんのいけず〜〜」

 ミサトさんは勉強より遊ぶ方に重点を置くんだよね。でもそれがミサトさん良い所かな。


 夏休み、遊びたくてしょうがないアスカちゃんに宿題を済ませたいシンジ君。

 ミサトさんは保護者なのに遊ぶアスカちゃんの味方です(^^;)でも結果的にシンジ君も楽しめた夏休み初日でした。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 夏