そわそわ
「アスカ〜朝だよ〜」
部屋の外からアタシを起こす声が聞こえる。普段より優しい声、そして落ち着きが無い声、今日が特別な日だから。
「おはようアスカ」
挨拶を無視して洗面所へ顔を洗いに行く、冷たい水で眠気を一気に吹き飛ばすわ。
顔を洗って台所へ、普段よりちょっと豪華な朝食、ここまでする必要があるのかしら?
「おっはよ〜〜ん」
能天気な家主が起きてきたわ。
「おはようございます」
「うぉっはよ〜〜ん、はいこれは美人なお姉さんからヴァレンタインチョコよん」
「あ、ありがとうございます」
高そうな包み紙だわ。バカは貰ってもの凄く嬉しそう、ホント単純ねえ〜アタシは二人のやり取りを横目にご飯を食べ続けたわ。
「さあさあ、開けて開けて」
「良いんですか?」
「良いわよ〜ド〜〜ンと開けて」
「はい」
ミサトの笑顔がもの凄く怪しい、それには気づかないシンジが一生懸命に包み紙を開けているわ。
「ミサトさん、これって・・・」
チョコの箱が見えた瞬間シンジの顔が曇ったわ。箱を見てみると、やっぱりね。
「あっ!ごっめ〜〜ん、うっかりしててアルコール入りチョコを買っちゃった。シンちゃんは未成年だから食べられないわね。アスカも無理だし〜〜捨てるの勿体無いから〜〜」
「返しますよ・・・」
「ごめんね〜〜」
確信犯ね、シンジの顔がもの凄く暗くなったわ。
ごちそうさま。アタシは食べ終わると部屋に戻り、学校へ行く身支度を整えるわ。
「いってらっしゃ〜〜い」
「・・・いってきます」
にこやかに手を振って見送るミサトにこの世の終わりみたいに暗いシンジ、たかがチョコ一個でそんなに暗くなれるものなのかしら。
「はあ〜」
ため息なんかつかないでよ、こっちまで暗くなるでしょうが!
「ごめん・・・」
あ〜〜暗いわね〜それにちゃんと歩きなさい、車に轢かれるわよ。
「うん・・・」
だめだわ、これじゃあ何時まで経っても学校に着かないわ。ほらっ行くわよ。
「うん・・・」
生返事をするシンジの手を引っ張って学校へ向かったわ。
教室では各男子の悲喜こもごもな光景が見れたわ。
「シンジ〜おはようさん」
清々しい顔をしているバカジャージ、ヒカリから貰ったのね。
「おはよう・・・」
「なんや?世界が終わったように暗い顔してるの〜どないしたんや?」
「なんでもないよ」
「はは〜〜ん、もしかして貰えてま、グホッ!」
ジャージは黙ってなさい、アタシは黄金の右ストレートを鳩尾に食らわせてやったわ。
「おはよう・・・」
シンジと同じように暗い顔をした・・・名前は誰だっけ?ええとメガネをかけているからメガネAでいいわ。
「シンジも貰ってないのか?」
「うん」
「惣流からもか?」
「うん」
ちょ、その会話は何よ?アタシが悪者みたいでしょうが。
「地球が滅びればいいよな」
「うん」
あ〜〜ばっかじゃないの、一緒にいると疲れるわ。
「碇クンおはよう」
「おはよう」
むっファーストが登校してきたわ。ふふん、寝癖が付いているわね、だらしないわ。
「碇クンに渡すものがあるの」
「ぼ、僕に?」
シンジの顔が急に明るくなったわ。ファーストのやつ今日が何の日か知ってるのかしら。
「はい、これ」
「これって?」
遠くから盗み見ていたけど、ファーストがシンジに渡したのは・・・
「頭痛薬、頭痛そうに見えたから」
「そ、そうだね。ありがとう・・・他には無いの?」
「無いわ」
どうやら知らなかったようね。またシンジの顔が暗くなったわ。
「ねえアスカ、碇君にチョコ渡したら?用意しているんでしょう」
用意しているけど、今渡さなくてもいいんじゃない。
「碇君、この世の終わりみたいな顔をしているわよ。あっ血の涙を流したわ」
泣く事ないのに、ほんと男の子ってバカよねえ〜
「シ〜ンジ、涙拭きなさいよ。男の子なんだから」
アタシはハンカチでシンジの血の涙を拭いてあげたわ。
「ア、アスカ〜」
「ほら、チョコあげるから泣くのをやめなさい」
「う、うん」
学校で渡すつもりは無かったんだけど、このままだと死にそうだから渡しちゃった。
「アタシに言う事はないの?」
「あ、ありがとうアスカ」
ふふふ、やっと泣き止んだわね。ほんと男の子って単純よねえ〜ちゃぁんとお返しをしなさいよ。
バレンタイン、シンジ君達は、貰えるかどうかドキドキですね。
アスカちゃんはちゃんと用意していましたけど、意地悪して渡さなかったらシンジ君はがっかりだったので早く渡したほうがよかったですね。
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION そわそわ