たなばた

「ねえアスカ、ちょっと寄って行かない」

「神社に?」

 学校の帰りにヒカリが神社に寄ろうって言ってきたわ。神社になんか寄ってどうするのかしら?

「ええ、ちょっとだけだから」

「別に良いけど」

 用事なんて何も無いから時間もたっぷりあるし、たまには変わった所に寄り道も良いかもね。

「ふう〜ここは相変わらず坂がきついわね」

 少し丘の上にある神社、坂道を歩くだけで汗が出るわ。






「あ、何かいっぱい生えているわ」

 境内に笹が生えている?

「ふふ、生えてないわよ。飾ってあるのよ」

「笹を飾るの?」

「七夕よ、ここは恋愛の願い事を短冊に書いて飾ると叶うのよ」

「ふ〜〜ん」

 神頼みってわけなのねえ〜

「素っ気無いわねえ〜アスカだって碇君と仲良くしたいでしょう」

「な、なんでシンジの名前が出てくるのよ〜」

「だってアスカ、いつも碇君の話をする時ニコニコしているじゃない」

「な、なな何言ってんのよ〜アタシは美少女だからいつもニコニコしているのよ、バカシンジの話だからってニコニコはしないのよ〜」

「ふふ、わかったわ。碇君にはニコニコしているって話しておくわね」

「だからやめてよ〜」

 ヒカリったら最近アタシをからかうようになったわね。

「冗談よ、言わないわ」

「もお〜それで、ここに来た目的は?」

 大方予想は付くんだけどね。

「短冊に願い事を書いて飾るわ」

 恋愛の願い事だから当然・・・

「勿論ジャージとの仲よね」

 ふふ、ジャージの名前を出されて真っ赤になるがいいわ。

「ええ、叶うといいわ」

「え?」

 普通の返事だわ。

「どうしたの?」

「ジャージの単語に真っ赤になると思ったから拍子抜けしたわ」

「だってアスカにはばれているから、今更恥ずかしがってもねえ〜アスカは碇君との仲を書くんでしょう?」

「ア、アアアアアアタシはか、かかかかかかか書かないわよ。どどどどどどうしてバカシンジとなのよ」

「アスカ、顔が真っ赤よ」

「あ、暑いだけよ。太陽が眩しいわ」

「曇っているわよ」

「アタシは暑いの〜」

 ヒカリったら何言っちゃってんのよ〜

「立ち話をしていると遅くなるから行きましょう」

「どこへ?」

 ヒカリは境内の奥へ進んで行ったわ。

「短冊を買うのよ」

「短冊を?」

「ええ、この短冊に書いて飾るのよ」

 短冊は買うんだ・・・ええ?300円もするの、ボッタクリじゃないのよ。

「アスカは買わないの?」

「ア、アタシはいいわよ」

 紙切れ一枚に300円も出せないわ。




 ヒカリが短冊にお願い事を書いている間、アタシは飾られた短冊を見て回ったわ。みんな恋愛の事を書いているわね。

「アスカ、お待たせ」

 短冊を飾ってきたみたいね、満足げな顔をしているわ。

「じゃあ帰りましょうか」

「アスカ、本当に短冊買わなくていいの?」

「いいわよ、アタシは神頼みなんか当てにしてないわ」

「アスカらしいわね」

「まあね、自分の力でなんとかするのがアスカ様よ」

 叶うかどうかわからないのにねえ・・・







「じゃあまた明日ね」

「うん、バイバイ」

 ヒカリと別れて家路を急ぐ、お腹空いちゃったわ。

 ・・・

 ・・・

 ・・・アタシの足が家とは反対方向へ歩き出したわ。





「戻ってきちゃった・・・」

 なぜか神社へ戻ってきたわ、財布の中には丁度300円ある。

 身体が勝手に動いて300円が短冊に変わった。ど、どうして変わったのよ?

「べ、別に神頼みなんか信じちゃいないのよ」

 七夕と言うイベントに参加するだけよ。

 アタシは誰にも気付かれないようにこっそり短冊に『シンジと仲良くなれますよに』って書いたわ・・・

「あああ、違う、違うわ」

 どうしてシンジの名前が出てくるの、短冊をくしゃくしゃに丸めてやったわ。

「あああ、300円もしたのに〜」

 これじゃあ買った意味がないわ。破けてないわね、綺麗に伸ばして・・・でもしわくちゃだわ。

 ええと・・・シンジの名前を消して・・・『バカと仲良くなれますように』

「これでよし!」

 なぜか鼻息が荒くなっている、どうしてよ?

「誰も居ないわよね」

 周りを見回してこっそり神社を後にしたわ、ヒカリに見つかったら笑われちゃう。





「あれアスカ、神社から出てきてどうしたの?」

「はうあっ!シ、シンジ」

 タイミング悪く、シンジに見られちゃったわ。

「寄り道かい?」

「な、なんでもないわよ。アンタこそどうしたのよ?」

「僕は買い物帰りだよ、セールやっていたんだよ」

 だから学校が終わった途端居なくなったのね。

「神社に何かあるのかい?」

「何でもないわよ。アタシが神社から出てきた事を、人に話したら殺すわよ」

 特にヒカリにね。

「ぶ、物騒だなあ、そんな事しないよ」

「よろしい、それで今日のご飯はなに?」

「ハンバーグだよ」

「ハンバーグ!やったぁ〜」

 短冊のお陰かしら?早速良い事が起こっちゃった。


 七夕、ヒカリちゃんは堂々と短冊に願い事を書きましたがアスカちゃんは書けませんでした。女の子2人のときでも恥ずかしいアスカちゃん(笑)

 こっそり一人で願い事を書いて、さっそくシンジ君と仲良く?なれました。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION たなばた