「良い感じに積もっているじゃないの」

「そうだね」

「寒いの」

 ネルフ内部の広場に人工的に降らせた雪の中にチルドレンが立っていた。

「それじゃあ滑るわよ〜」

 真っ赤なボードウェアに身を包み、真っ赤なスノーボードを装着するとリフトに乗り込んだ。

「ちょ、ちょっと待ってよ」

 初心者なシンジはスキーである。板の装着に戸惑っている間にもアスカが乗ったリフトは進んで行った。

「碇クン頑張って」

 シンジと同じくスキーを選択したレイはすでに装着を終えていた。

「お待たせ、板を着けるの早いね」

「バランスを取って板を思いっきり踏みつけるようにすればいいわ」

「うん、リフトに乗ろう」

「ええ」

 二人リフトに乗ろうと進むが、滑ってなかなか進まない。

「あ、歩くの難しいね」

「進まないの」

 進むどころか後退している。

「あ〜アンタ達、何やってんのよ?遅すぎて滑ってきたわよ」

「ア、アスカ早いね」

「あったりまえでしょ、ドイツでは雪上のトビウオって呼ばれていたのよ。こんな初心者コースは目をつぶっていても滑れるわ」

「雪でトビウオって凄い例えだね」

「さあ早くリフトに乗りなさいよ」

 シンジの背中に蹴りを入れた弾みで滑り出した。

「う、うわっ」

「碇クン滑っている」

 レイもシンジの後に続いてリフトに乗り込んだ。







「うわっ急だね」

「コースが長いの」

「急じゃないし、長くない」

 頂上に来た三人、アスカ以外は足がすくんでいる。

「それじゃあ、どうぞ」

「「え?」」

「先に滑りなさい」

「先に滑れって滑れないよ」

「滑り方知らない」

「ボーゲンくらい知っているでしょう?それで滑れば良いのよ」

「ボーゲン、ハの字ね。碇クン滑りましょう」

 レイはゆっくりと斜面を滑り始めた。

「そうそう、ゆっくりで良いのよ上手じゃない。さあシンジも行くのよ」

「あ、う・・・うん」

 ゆっくりと滑っているレイに付いて行こうと思うシンジだがなかなか滑り出せない。

「さっさと滑りなさいよ、ファーストだって滑っているのよ。男の子でしょう」

「わ、わかったよ」

 意を決すると滑り始めるシンジであった。

「そうよ、ゆっくりで良いのよ」

「う、うん」

 転ばないようにバランスをとりながらゆっくりと滑るシンジ、余裕がうまれレイを見ようと前を見たが居なかった。

「あれ綾波がいない?」

「碇クン、後ろ」

「え?」

 レイの声が後ろから聞えたと思ったら、姿はすでに前にあった。

「あらファースト上手じゃない」

「簡単ね」

「上達するの早すぎるよ〜」

 レイはターンを決めつつ滑っていった。

「さあシンジもファーストのように滑るのよ」

「む、無理だよ〜」

「無理じゃないわよ」

 焦りながら滑るシンジの横で笑うアスカであった。







「はあはあはあ、疲れた」

「何で疲れるのよ」

 滑り終えたシンジの額には汗が流れていた。

「ボーゲンで足が痛いよ」

「碇クン、足だけで滑ろうとするから痛くなるの」

「膝を柔らかくしなさいよ、ガチガチよ」

「う、うん」

 二人からアドバイスを受けるシンジ、心なしか頬が赤くなっている。

「碇クンどうしたの?」

「あ、その・・・2人のスキーウェアが似合っているなと思って・・・」

 白のスキーウェアのレイと赤のボードウェアのアスカにシンジは見とれていた。

「な、何本当の事を言ってんのよ」

「碇クン嬉しい」

 シンジの言葉に頬を染める二人。

「まあね〜スキー場で女の子は可愛く見えるからねえ〜」

「あっミサトさん」

「さっすがシンちゃん、二人を口説くなんてプレイボーイねえ〜」

「く、口説くなんて違いますよ」

「あら〜私には口説いているように見えたわよん」

「私口説かれているのね、嬉しい」

 頬を赤らめるレイ。

「アタシを口説くなんて百年早いわよ!」

 強がっているが同じく頬を赤らめるアスカ。

「ミサトさん、仕事中でしょう。ここに何をしに来たんですか?」

「何って当然滑りに来たのよ」

「ビールを持っているじゃないですか」

 ミサトは片手にはスキー板、片手には缶ビールを持っていた。

「そうよ、ビールは頂上に埋めておいて、滑ってまた頂上に上がった時に飲むのが美味しいのよね」

「だから勤務中でしょう」

「今は休憩時間だから問題ないわよ。シンちゃんも飲む?」

「飲みません」

「あら〜真面目ねえ〜じゃあ一緒に滑りましょう」

「あ、ミサトさん」

 強引に頂上に連れて行かれるシンジ、アスカとレイも二人に続いた。

「また連れてこられてしまった」

「う〜〜ん、人工にしては良く作られているじゃない」

「でしょう、なかなか楽しめるわよ」

「面白いの」

 滑る準備をするミサトとアスカとレイに対してシンジは手間取っていた。

「三人並びなさい、写真を撮ってあげるわよ」

「あらミサトにしては気が利くわね」

「当然よ、楽しい思い出は撮っておくものなのよ、シンちゃんが真ん中ね」

「あ、はい」

 すでにアスカとレイは撮影位置に立っているが、シンジはなかなか立ち位置に移動できない。

「シンジ〜早くしなさいよ」

「碇クン頑張って」

「う、うん。うわっ」

 ストックで地面を押して移動しようとしたが、バランスを崩して前に倒れこんだ。

「あ、バカシンジ!」

「きゃっ!」

 丁度倒れこんだ先には二人が居て巻き添えになった。

 モニュ、モミュ

「「ああん」」

「わお大胆、じゃなくてシャッターチャンス!」

 倒れこんだ瞬間シンジの手はアスカとレイの胸を掴んでおり、その一瞬を見逃さないミサト。

「こんのスケベシンジ!」

「雪の上でなんて碇クン素敵」

 バッチ〜〜ン!

 頬を赤らめる寝転がっているレイに対して、アスカはシンジに対してビンタを見舞った。

「あ〜〜れ〜〜〜」

 ビンタをされたシンジは、そのまま斜面を転がり続けるのであった。

「いや〜〜ビールが美味しいわね」


 スキーを楽しむ三人、初心者シンジ君には難しすぎ?

 本当に楽しんだのはシャッターチャンスを見逃さなかったミサトさんかもしれません(笑)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 雪