艶やか

 お正月、MADと言えども自宅で過ごす。

 茶の間でミカンを食べTVを見るリツコとレイ。

 レイは年の暮れからずっと、リツコの家に泊まっていた。

「ふうう〜〜お茶が美味しいわ〜」

 今日はコーヒーではなくお茶を飲むリツコ、ちょっとおばさん入っているとレイは思ったが口には出さない。

「?博士、あの洋服はなに」

 レイはTVに登場している綺麗な洋服に気がついた。

「あれ?あれはね。晴れ着よ」

「晴れ着?」

 正月らしくTVに登場している女性タレントは晴れ着を着ている。レイも女の子、気になったのである。

「そうよ。何かおめでたい時に着るのよ。お正月とかね」

「・・・・・・・・・」

 リツコの説明を聞きながら、着物に見入るレイ。

「レイも着たい?」

 コクコク

 質問にうなずく。

「ふふ、そうだろうと思って用意しておいたわよ」

「えっ?」

「待っていなさい」

 コタツをでると隣りの部屋から桐の箱を持ってきて開けると、中からは桜色の晴れ着が姿を表した。

「綺麗」

 レイは晴れ着を手に取ると、その美しさに目を奪われた。

「それじゃあ着付けをしましょうか」

「はい」

 晴れ着に袖を通すとリツコはなれた手つきで帯を巻いていく。

「博士上手」

「ふふ、科学者に不可能はないわよ」

 着付けに科学者が必要あるのか?と思いつつも口に出さずにいるレイ。

 

 

「はいできたわよ。鏡で見て御覧なさい」

「はい」

 晴れ着を着たレイは等身大の鏡で自分の姿を見た。

「綺麗・・・」

 白い肌に少し明るい桜色の晴れ着は見事にマッチしており、まるで江戸時代のお姫様のようである。

「似合うわよレイ、まるで少し前の私のようだわ」

「少し前?・・・・・何十年も前じゃ・・・イタイ」

 速攻で頭を叩かれる。

「そんな事言う子には脱いでもらいますよ」

「ご、ごめんなさい」

 晴れ着を着て満足なレイだが、まだあまり楽しくはない。

「あら?嬉しくないの」

「・・・・・碇クンに見てもらいたい」

「ふふ、そうよね。そう言うと思っていたわよ」

 レイの考えなど全てお見通しなのだろうか、それともシナリオ通りなのだろうか。

 ピーンポーン

「あら誰かきたみたいね。レイ出てちょうだい」

「はい」

 呼鈴が鳴った。リツコは出るのが面倒くさいのだろうか、単に動きたくないのだろうか、レイを玄関に向かわせた。

「あけましておめでとうございま・・うわっ!綾波」

「碇クン!」

 玄関先に現れたのはシンジ、二人ともまさかリツコの家で会うとはおもっていなかったので驚いた。一方リツコは玄関での驚き声を聞きながら、お茶を飲みニヤリとしていた。

(ふふ、シナリオ通りね)

「い、碇クン。この晴れ着どうかしら?」

 レイは頬を赤らめながら勇気を振り絞ってシンジの前で回って見せた。

「あ、う、うん似合うよ」

「ありがとう」

 なぜか互いに頬を赤らめあっていた。

「リツコさんはいる?」

「いるけど、どうかしたの?」

「さっき電話が掛かってきて緊急の用だから、来てくれって。何なのかな?」

「わからないわ。上がって」

「うん、おじゃまします」

 二人はリツコのいる茶の間に向かった。レイの後を歩くシンジは、ずっとレイの後ろ姿を眺めている。

(着物姿も似合うな)

「何?」

 不意に向かれ驚きドギマギ、アタフタする。

「な、何でもないよ」

「そう」

 

 

「博士、碇クンが来ました」

「リツコさん、あけましておめでとうございます。それで緊急の用って何ですか?」

「シンジ君、おめでとう。実はねレイを見てちょうだい」

「綾波をですか」

 シンジは言われるがままにレイを見たが普通である。

「どう?可愛いでしょ」

「あ、は、はい」

「良かったわねレイ」

「はい・・・」

 誉められたことで頬を赤らめ下を向くレイ、シンジはまだ何が緊急なのかわからない。

「あの〜それで緊急の用って?」

「もう終わったわよ」

「へっ?」

 まだわからないらしい。

「シンジ君はこれから何か予定は入っているかしら?」

「いいえ、何も入っていませんよ」

「そうならレイと一緒に初詣に行ってくれないかしら?」

「綾波とですか?」

 驚いた、緊急の用がわからないうち終わり、突然レイとの初詣。

「ええ、本当は私と行く予定だったんだけど、急に用が入っちゃって行けなくなったのよ」

「はい、わかりました。行こう綾波」

「うん」

 そしてシンジとレイは出かける為にリツコは見送る為に玄関に向かった。その途中の廊下でリツコはシンジに耳打ちをした。

「シンジ君」

「何ですか?」

「レイは晴れ着を着るのが初めてで歩く事になれていないから、転ばないように手を繋いでちょうだい」

「ええっ?」

 歩きの補助としても手を繋ぐことはちょっと照れる。

「お願いお年玉あげるから」

 そう言うとリツコはシンジの手を取り、サッとお年玉袋を渡した。

「わ、わかりました」

 お年玉に負けたようだ。

「いってらしゃい〜」

 リツコはニコニコして二人を見送った。

 

 

 

「あ、綾波 て、手を繋ごうか」

 照れくさそうに手を差し出した。

「どうして?」

「は、晴れ着じゃ歩きにくいだろ。転ばないように」

「う、うん」

 確かにレイにとっては晴れ着は初めて着るもので、足が自由に動かせずに歩きにくかった。赤くなりながらシンジの手を握った。

「い、行こうか」

「うん」

 こうして二人は互いに歩く速度を合わせ、ゆっくりと神社に向かった。

 

 

「じゃあお参りしようか」

「うん」

 賽銭箱の前に来ると二人は財布を取り出し、賽銭箱に小銭を投げ込み手を合わせた。

(料理が上手になりますように)

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 そして

「綾波は何をお願いしたの?」

「私は・・・・・・碇クンとずっと一緒に居られますようにって・・・・・ぽっ!」

「あ、綾波ってだ、大胆だね」

「碇クンは?」

「僕?僕は料理が上手になりますようにって」

 シンジらしい。

「今でも上手よ」

「うん、けどね。まだまだ作りたいものが沢山あるから、もっと上手になりたいんだ」

「碇クンならできるわ」

「うん、ありがとう」

 そして二人はまた手を繋いでリツコの家へ戻った。帰りになるとお互い照れも無くなり、楽しく喋りながら帰ったのであった。


 アヤナミストのNanshiさんからのリクエストで初詣レイバージョンです。アスカがあってなぜレイが無いとお嘆きであったNanshiさん、いかがでしたか?

 近頃レイを登場させるとなぜかリツコさんまでセットになってくる今日この頃です(笑)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 艶やか