風邪〜ミサト〜

 何気ない朝、シンジはいつものように朝食に腕をふるい。アスカは料理に舌鼓を打つ。

 そこへ、髪はボサボサ、大あくび、タンクトップに短パンというだらしない姿でやって来た。

おっはよ〜〜〜はっは、はくしょおおおんんんこんちくしょおう!

 豪快なクシャミ、語尾には意味が無い言葉。鼻をズズズと吸い上げる。

「ちょっとお!ツバ飛ばさないでしょ」

 せっかくのシンジの料理にツバが飛び、アスカはプンプン怒る。

「ごめ〜〜ん。くしゃああああああん!てやんでえ〜〜!

 謝りながら今度はアスカの顔にめがけて、ツバが飛んだ。

「げえええええ!なにすんのよ。バカミサト」

 アスカはミサトに蹴りを入れると、顔を洗いに洗面台に向かった。

「ミサトさん、風邪ですか?」

「う〜〜ん、そうみたいね。規則正しく生活してるのに、なぜかしら?」

「・・・・・」

 腕を組んで真剣に考えるミサト、シンジは呆れて言えない。

「まあいいわ。ビ〜ルビ〜ルっと」

「ダメです。風邪なんですから!」

「え〜〜?いいじゃない〜」

「ダメです。食べたら薬を飲んで寝てください」

「ビ〜ル〜〜」

「ダメです」

 泣くミサトだがシンジは容赦なくイスに座らせた。

「食べられます?」

「何とかね」

「今日は休んだ方がいいですよ。後からリツコさんに電話しておきますから」

「ん、そうね。どうせヒマだし、休めば治るわね」

 ミサトはズズズと味噌汁を口に流し込む。だが味気ない、なぜか?

(ビ〜〜ル)

 恨めしそうにシンジを見つめていた。

「ビ〜ルは治ってからです」

「がっくし・・・・・はっくしょん。ちっくしょおおおん!

 泣きながら味噌汁。少ししょっぱい。

「ったく、クシャミする時は手をあてなさいよね」

 念入りに顔を洗ってきたアスカ、席に座る。

「それじゃあ、豪快にクシャミができないからねえ〜」

「まわりが迷惑なのよ」

「はいはい」

 まだ怒っているが、ミサトはたしなめる。

「ミサトさん、顔が赤いですよ」

「そう、本人は大丈夫だけど。はっは・・・

「手をあてろ〜」

はっくしょおおおおおん!どひょおおおん!

 アスカに言われ手をあてたが、声は響いた。

「大丈夫ですか」 

 ピト

 シンジはミサトの額に手をあて、自分の額と比べた。

「う〜〜ん、少し熱がありますね。顔もどんどん赤くなっていってますよ」

「もうシンちゃんたら、イキナリ手をあてられたから照れちゃったのよ」

「じょ、冗談はよしてください」

 素早く手を離して赤くなった。

「あら〜赤くなっちゃって、風邪が移っちゃったかな。一緒に寝ましょうか」

 にやけてからかうミサト。

「な、何言ってんのよ!風邪で頭がおかしくなったんじゃないの?病院に行きなさいよ」

 『一緒に寝ましょう』の言葉に敏感に反応して立ちあがるアスカ。

「風邪同士が一緒に寝たらすぐに治るのよ。知らないのアスカ〜?」

「そんなわけないじゃないのよ」

「それともアスカも一緒に寝たいとか〜?」

 笑いがこみ上げてくるミサト、アスカは怒りで顔が真っ赤、シンジは照れていて顔が真っ赤。

「一生風邪ひいてろ〜〜」

 捨て台詞を残しごちそうさま。部屋に戻っていった。

「ふふふ、可愛いわね。はっくちゅん!おおうっと!

「風邪薬です。飲んでください」

「あれ〜シンちゃん。怒った〜?」

「知りません!」

「は〜〜い」

 ニコニコしながら渡された薬を飲み、冷蔵庫へ向かう。

「わっミサトさん!何開けているんですか」

「だって薬を飲むにはビ〜ルで飲まないといけないって憲法に書いてあるのよ」

「水って書いてありましたけど」

 冷蔵庫を閉め、水を渡す。

「チッ、引っ掛からないわね」

「当然です」

 こんなウソに誰が引っ掛かるんだろうと思いつつ、ミサトを部屋に押し戻した。

 

 

 そして朝食の後片付けを終え、二人は仲良く学校へ向かう。シンジは家を出る祭にミサトの部屋の襖を開けた。

「ミサトさん。お昼はコンロの上に用意してますので温めて食べてくださいね。食べた後は薬を飲んで安静にする事、後はビ〜ルは飲んだらダメですよ」

「はいはい、わかっているわよ。いってらっしゃ〜〜い」

「絶対に飲んだらダメですからね」

「わかったわよん」

 念を押すシンジ、ミサトは布団の中からニコニコして手を振って見送った。

 ガチャ!

 玄関の音が聞こえる。二人は出たようである。ミサトの口元が不意に動いた。

 ニヤリ!

 素早く布団から起きあがると、目指す場所はあそこしかない。

「ふっふ〜〜ん、シンちゃんも甘いわね。ビ〜ル、ビ〜ルっと」

 ガラッ!

 ニコニコしながら襖を開けて、お宝が眠る冷蔵庫へ。だが・・・

「クエ!」

 ペンペンが羽を広げてミサトの前に立ちはだかった。

「あらペンペン?何してんの。ちょっとどいてね」

 横を通るミサト、だが・・・

「クエ!」

 素早く移動して立ちはだかる。

「コラ!どいてよ」

「クエ!」

 ペンペンは冷蔵庫を指差し、ビ〜ルを飲むゼスチャーをして羽を交差させる。ダメと言う事である。

「ダメ〜?ペンペンには関係ないでしょ」

「クエ」

 ペンペンは一枚の紙を渡した。そこには・・・・

 

ミサトさんへ

信用できないのでペンペンに見張りを頼みました。

絶対飲んだらダメですよ。

シンジ

 

「なっ、ふっシンジ君もなかなか味な真似するじゃない」

 鼻で笑う。

「ペンペンそこをどきなさい!誰が養っていると思っているの?」

 ミサトは主としてどかせようとしている。だが・・・

「クエ」

 紙のシンジを指差した。当然といえば当然であろう。

「むっ育ててやった恩を忘れたようね」

「クエ」

 育てたのはほぼシンジである。

「誰が主が思い知らせてあげるわよ!」

 腰を低くし攻撃体勢を取る。ペンペンはすっと立ったままの状態でミサトを見ていた。

はああああ!

 ミサトの攻撃。

「クワアアア」

 シュッ!

 ペンペンはあくびをして、パンチが顔面に当たる瞬間消えた。

「えっ?消えた」

「クエ!」

 声がして現れたのはミサトの後である。空中で回転して、後頭部へそのまま・・・

 バシュッ!

はぎゃあ!

 回し蹴り、不意を突かれたミサトは、そのまま食らって床に倒れた。

「クエッ!」

 羽と羽を合わせポーズを決めると、ミサトの足を持って引きずり部屋に運んだ。

 

 

 

「「ただいま〜〜」」

 二人の帰宅。

「クエ〜」

「ペンペン、ミサトさんはどうだった?」

「クワ!」

 羽で丸を作り、飲んでない事を告げた。

「ありがとう。今日は魚にするよ」

「クエ〜〜!」

 ペンペンは羽を羽ばたいて喜んだのであった。


 ペンペンに負けるミサトさん・・・・主の威厳台無し(笑) 

 ペンペンにとってはシンジ君が主ですからね。

 jun16の描くペンペンはなぜか強いです。なぜ?それはね・・・・秘密。

 それと副題に〜ミサト〜と付いている事は・・・ニヤリ!別Ver.が?

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 風邪〜ミサト〜