「むむむむむ!」
夕食を食べお風呂にも入り後は寝るだけの葛城家、アスカの部屋。
「むむむむむ!」
アスカはベットの上であぐらをかき、瞳をつむり唸っていた。
(にっくきファーストめ!うまいことやったわね)
「むむむむむ!」
アスカが唸っているレイがした『うまいこと』とはラーメンではない。前回のシュミレーションでMADリツコと共謀?してシンジとラヴラヴなストーリーをした事である。
(こうなったらあたしも)
今度は自分もと邪な考えを持っていた。
(ファーストに勝つには・・・・・これね!)
パラパラと本を捲り始める。どうやら古本屋で手に入れてきたようだ。
「これでファーストにか〜〜〜〜つ!!」
立ちあがり指を天にさした。
その本は『モビルスーツ大全集』
MS5
「ん〜〜どれにしようかな」
次々とページをめくるアスカ、なかなか気に入った機体は無いようである。
「まずは乗る機体がカッコよくないとね」
丹念に機体のデザインを見ていく、アスカの理念として第一に外見がカッコイイ事、第二に武装である。
ペラペラペラペラ
「ステイメンか、カッコいいけど単体じゃあ弱そうね」
ステイメン、言わずと知れたGP-03オーキスと合体してデントロビウムになると最強であるが巨大、とてもケイジに収まるようではない。
ペラペラペラ
「!!こ、これよ」
アスカの眼に適うページが見つかった。その機体は・・・・
NZ-000 クイン・マンサ
ネオジオン軍最強最大のMS、メガ粒子偏光機、ファンネルが装備されており頭部だけでも単独飛行可能である。丸みを帯びたデザインがアスカの眼に適った様である。
「こ、これだわ!これならファーストに勝てる。零号機なんかちょちょいのちょいよ」
発言にかなり問題があるが、チルドレンの仕事は使徒を倒す為である。
「こうしちゃいられないわ!さっそくリツコに頼みにいかなくちゃ!」
アスカは素早く着替えると、ページに折りこみをいれると部屋を出た。
「あれアスカどこに行くの?」
リビングでは主夫の仕事を終えたシンジが、TVを見ていた。
「秘密よ!ネルフにいってくるわ」
自分でばらした事も気づかないほど興奮していた。そして走って外に出ていった。シンジはその姿をただ呆然と見送るだけであった。
「?なんなんだ」
場所は変わりネルフ、MADリツコの怪しい研究室。今日も夜な夜な世界平和?の為に研究が行われている。
「ふふふふ、完成したわ。名づけて『ネコと会話でき〜る』」
凄いネーミングである。これもシナリオの一部であろうか?
ドンドンドンドン!
高々と『ネコと会話でき〜る』を天に突き上げて悦に入っているところに、それを打ち破るドアを叩く音、リツコはムッした。当然である。快感に満足している時に邪魔された事と、呼鈴があるのになぜ押さないのかと。
リツコは決めた。次の実験体はドアの向こうの愚かな子羊と。
「はいはい、何度も叩かないでよ。壊れるでしょ」
手元のスイッチでドアを開けた。果してドアを叩く実験体は誰だろうと、心で笑いながら。
「あらアスカ?」
「まったく居るなら早く開けなさいよ」
リツコは少し驚いた。自分の研究室のドアを叩くのは、急ぎの用か酔っているミサトか、まだネルフに入って日の浅い新入りの三つに絞られ、大抵実験体になるのは・・・・・・全てである。
そして心の中でガッツポーズをした。『アスカが実験体になるのね。今日はお赤飯だわ』・・・と訳がわからない事を考えているリツコ、MADパワーMAXである。
「それでこんな夜更けに何かしら?」
コーヒーを飲み平然さを装うが、心の中ではアスカが実験体となって(まだなっていないが)いるので踊っていたに違いない。
「これを見て」
アスカは早速、折りこみを入れたページを見せた。
「あらクイン・マンサじゃない。これがどうしたの?」
アスカがこんな夜更けに来て、モビルスーツの本を見せた事でリツコはあっさりと理解できたのだが、意地悪にもその理由を聞いてみる。
「あ、あたしの弐号機をこれに改造してほしいのよ」
「あら?どうして弐号機のままでいいんじゃないの?」
「ダメなのよ。一人で使徒を倒してファーストを見返してやるんだから」
何時の間にか『シンジとラヴラヴなストーリー』から『レイに勝つ』事に変わっている。モビルスーツ選びですでに変わっていたのかもしれない。第一クイン・マンサでラヴラヴな話しはできない。
アスカの間違いは『ガンダムストーリー大全集』を選んだ事でなく『モビルスーツ大全集』を選んだ事が間違いなのである。
「わかったわ。アスカがそんなに言うんなら協力してあげるわ」
リツコはコーヒーを飲み干すと『モビルスーツ大全集』を食い入るように見つめた。『協力』と言ったが『自分の趣味』の方がはるかに上回っている。
「さっすがリツコね。楽しみにしているわ」
アスカは満足な顔をして研究室を後にした。そしてリツコは眼鏡をかけると、光速なスピードでキーをたたき始めた。
「うふうふ、うふふ・・・・」
今日も怪しい笑い声が静かなネルフを包む。
アスカがリツコに頼んでから三日後・・・・すでに完成していたが、それを試す機会が無い。使徒が全くこないのだ。
「あ〜あ、どうして使徒が来ないのよ。来るなら来てさっさとあたしに倒されなさいよね」
自室のベッドに寝転がり物騒な事を言うがそれほど自信があるのだろう。
ピピピピピピ!
けたたましく携帯が鳴った。この音は緊急の音、すなわち使徒襲来である。
「よっしゃあ!」
電話にでるとミサトからであった。思ったとおり使徒が、こちらに向かってきておりチルドレンは緊急召集である。アスカはベッドから跳ね起きると、光速でネルフに向かった。
作戦会議がおこなわれる、アスカはそんなのは不要だと思いつつ、早く乗りたいとウキウキしていた。そしてフォーメーションとしてオフェンスとディフェンスにわかれる。アスカはいち早く手を上げた。
「はいはいは〜〜い。あたしがオフェンスしま〜す。シンジ、ファーストはディフェンスよ」
これに関してはミサトは何も言わなかった。アスカの攻撃の上手さを買ったに違いない。
「さあってアスカ、行くわよ」
エントリープラグに座ったアスカは自分自身に気合を入れた。そして三人の機体が地上に姿を現した。無論アスカだけはいつもの弐号機ではない。
弐号機の姿はクイン・マンサ、機体が違う事でネルフ職員は驚くだろう・・・・・・イヤ驚かない。皆『またMADか・・・・・・』と思っていたのであった。ただ三人を除いては。
その一人は制作したリツコ。
(うふ、うふうふ、今日も一段と私の技術が光っているわ)
弐号機を見ながら不気味な笑い。近くに居る職員は引いた。
二人目マヤ。
(先輩、また凄い発明。惚れなおします〜)
リツコを見る瞳がハートになっている。
三人目は乗っているアスカ。
「ふふふふふ、さあいらっしゃい!」
指を鳴らして使徒を迎える。腰に手をあてている弐号機(クイン・マンサ)女性の様に丸みを帯びた機体、じっくり前方を見据えたカメラアイ、アスカの自信も相乗してその姿は威風堂々に見える。
そして使徒が肉眼で見えた時、アスカは動き出した。
「さあシンジ!ファースト!あたしの華麗さをその眼に焼きつけなさい!」
数十メートル走ったところで使徒は攻撃を仕掛けてきた。弐号機(クイン・マンサ)めがけて粒子砲を発射する。だが・・・
ダッ!!
ジャンプ一番、弐号機(クイン・マンサ)は紙一重で逃れる。イヤギリギリでかわし、余分な動きをしなかったのだろう。そして・・・
バシュ!バシュ!
弐号機(クイン・マンサ)の双方の胸のメガ粒子砲が使徒を捕らえる。
ドゴオオオオオオオン!!
激しい爆発音と共に砂煙、使徒直撃である。
「ふふふふ、どうかしら?シンジ、ファースト、あたしの華麗なるテクは」
回線を開き、自信たっぷりに二人に自慢した。シンジはアスカを褒め称えるが、レイは無表情のまま。
ピク・・・・・
その時、本部のセンサーは何かをとらえた。
「アスカ!まだよ。生きているわ」
ミサトは叫んだ。使徒はメガ粒子砲を受けたものの、表面が焦げただけであった。すぐさま再生を始め、動き出す。焦るシンジ、無表情のレイ、まだ悦に入っているリツコ、ハート眼のマヤ、使徒の動きを気にするミサトと緊張しているのかしていないのかネルフ。
「ふっしょうがないわね。このファンネルで決めてあげるわ」
鼻で笑うと瞳を閉じ、精神を集中させる。すると弐号機(クイン・マンサ)の腰のファンネル・コンテナからファンネルが飛び出し、使徒に向かって縦横無尽に飛行する。
「さあやっておしまい!」
アスカが叫ぶとファンネルは一斉にビームを発射した。
バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!
「楽勝!楽勝〜」
休まずに攻撃が続く、使徒の動きが弱まってきたもう少しであろう。だが・・・・
バシュ!
「イタッ!」
ファンネルの一体が弐号機(クイン・マンサ)の後頭部を攻撃した。シンクロ率が高いアスカはおもわず頭に手をやった。
「何で?あたしを攻撃するのよ?使徒はあっちよ」
ファンネルを掴み、使徒に向かって放り投げた。すると・・・・・
ビュンビュンビュンビュン!!!!
「げげげ!?」
ファンネルが一斉に弐号機(クイン・マンサ)に向かって来た。そして攻撃を始める。
「ちょ、ちょっと使徒はあっちでしょうが!」
アスカは叫ぶは命令が効かない。
「イタイタタタ!リツコどういう事なの?」
自分ではどうにもおえずにリツコに訳を聞いた。本部のモニターには逃げ回る無様な弐号機(クイン・マンサ)の姿と焦るアスカの顔が映し出される。
「ズズズズ〜・・・・・それはねアスカ・・・」
いつのまに用意したのかコーヒーを口に含み、飲むと一息つき話し始める。
「失敗したようだわ」
それだけ言うとまたコーヒーを飲むリツコ、ミサトをはじめ職員は一斉にこけた。ただマヤだけは・・・・
(先輩・・・素敵)
「失敗ですむか〜〜!」
本部にアスカの声が響く。
「アスカ、天才と言うものは失敗を重ねて天才になるものなのよ」
「だからどうなんじゃ〜〜〜!!」
リツコはサッと白衣を翻すとその場を後にした。逃げたのか?
「イタ、イタタタタ!!」
その間にもファンネルの攻撃は続く。
「アスカ、ファンネルは内部電源だから後1分で止るわよ」
本部に戻ってきてそれだけを言うとまた立ち去るリツコ。逃げ回る弐号機(クイン・マンサ)を横にミサトはシンジとレイに命令をし、使徒を撃退した。
結局、アスカと弐号機(クイン・マンサ)は無様な姿をさらしただけであった。
「リ〜ツ〜コ〜〜はど〜こ〜?」
ネルフ廊下にアスカの地響きの声が木霊する。弐号機(クイン・マンサ)を降りた後すぐさまリツコを探し始めたが、どこにも居ないのである。
「リ〜ツ〜コ〜」
「ねえアスカ帰ろうよ〜」
すでに着替えたシンジはアスカを説得するが、無視して探すのを止めない。
「リ〜ツ〜コ〜」
「・・・・アスカ、夕飯までには帰って来るんだよ」
夕食の準備があるので諦めたシンジはアスカを残して帰っていくのであった。
「リ〜ツ〜コ〜」
アスカの探す姿に通りすぎる職員は、リツコは無事では済まされないと思った。だが・・・・・・
「たっだいま〜〜」
アスカ、満面の笑みを浮かべて帰宅、夕食に間に合った。
「お帰り〜機嫌が良いね。リツコさんに会えたの?」
出迎えたシンジはアスカの笑みからして復讐?が完了したのだろうと思った。
「リツコ?どうして」
「だってずっと探していたじゃないか」
「はあ〜?知らないわよ。それよりご飯ご飯」
「?」
アスカの答えにシンジは『?』が頭中に浮かんだ。リツコの事を忘れているからである。執念深いアスカがリツコを許すわけが無い。果たしてどういう事だろうかと、夕食中、寝るまで、寝てからもずっと考えた。
「ズズズ〜ふふアスカも甘いわね」
MAD研究室、コーヒーを飲んでレポートに目を通すリツコ。その題名は『セカンドチルドレンの記憶操作』差出人は白衣軍団からである。
どうやらあの後リツコの命令により白衣軍団によって、気づかずに拉致されたアスカはリツコの部分の記憶を綺麗サッパリ変えられた様である。
「うふふ、次はどんな研究をしようかしら。うふふ」
今日も怪しい笑い声が静かなネルフを包む。
はい!jun16作品でなぜか人気一番のMSシリーズです。今回はアスカが主役です、機体はjun16もお気に入りなクイン・マンサにしました。
アスカだから赤い機体、シャア専用でくると思いました?ふおふおふお(^O^)
キュベレイなんかも良いと思いつつ、こちらにしました(キュベレイってHGシリーズで出ていたんですね。知らなかった)
それとMADなリツコさんはいかがでしたか?今回はインパクトが弱かったかな?
失敗した事で怒り狂うアスカちゃん、これはリツコさんの危機か?とリツコさんの安否を心配しましたが(心配していないですね)上手でしたね。
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION MS5