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 アスカとヒカリ、二人はデパートにいた。明日はバレンタイン、チョコを買いに来たのだ。

 特設コーナには大勢の女性が買いに来ている。チョコの種類も沢山あり、安いものから高いもの、値段にみあったデザインと見て回るだけで一日費やすだろう。

「ヒカリ〜決まった〜?」

「ううん、まだ〜アスカは?」

「私も〜〜」

 目に入ったチョコを手にとって品定め、だが気に入ったものが無く置いていく。二人してまた見まわる。

「あっ!これカワイイ〜〜」

 アスカが手にとったのは長方形のチョコにホワイトで天使が二人向かい合って描かれているチョコであった。

「これ加持さんにあげよう〜〜」

 決まったようである。

「アスカ決まったの?」

「ええ、ほら加持さんにあげるには、子供っぽいけど可愛いでしょ」

「可愛いわね、私はもう決めちゃったからレジにいくわよ」

「ええ」

 アスカの言葉にヒカリは?マークが頭に出た。

「あれ?アスカそれだけなの」

「ええ、そうよなんで?」

 ヒカリもアスカの言葉に?マークが頭に出た。

「それは加持さんのでしょ」

「ええ」

「碇君のは?」

「シンジ〜〜?シンジのは無いわよ。あげないから」

「ええ〜〜!?どうしてあげないの」

 当然の疑問である。

「別にシンジにあげてもしょうがないでしょ。ヒカリも鈴原だけにあげるんでしょ?」

 ヒカリは呆れながら、アスカの目の前に一つは豪かなチョコ、二つは普通のチョコを見せた。

「確かに鈴原にはあげるけど、碇君と相田君にもあげるわよ」

 『鈴原』の言葉のところは少し顔を赤らめるヒカリ。

「面倒くさいわよ」

「義理でもあげなくちゃダメよ。アスカ、いつも世話になっているんだから」

「私、世話になんかなっていないわよ。アイツが勝手に世話をしているだけよ」

 また呆れるヒカリ、ため息がこぼれる。

「アスカ〜お弁当作ってもらっているでしょ?」

「うん」

「掃除してもらっているでしょ?」

「うん」

「洗濯してもらっているでしょ?」

「うん」

「お料理作ってもらっているでしょ?」

「うん」

 質問に頷いていくアスカ。

「それを世話してもらっているって言うの!」

「う、うん」

 反論ができない。

「だからたとえ義理でもあげるものなの、碇君喜ぶわよ」

「う〜〜〜・・・わかったわよ」

 アスカは説得?されてシンジ用にチョコを見て回った。

 

 

(う〜〜〜面倒くさいな、まあ言われてみれば世話してもらっているのかな?)

 自覚無し。

(どれが良いかな?シンジだからこれでいいかな?)

 手にとったのは100円チョコ、その名の通り100円の形チョコである。

(・・・・これじゃあね)

 元の置き場に置く。それからこまめに手に取るが気に入ったものがない。

(無いじゃないの!あ〜〜もう、どうしてバカシンジのチョコ為だけに苦労するのよ)

 だんだんと怒りがこみ上げてくる。このままでは買わない率が高い、すでに買い物を済ませたヒカリはそんなアスカの心境を察した。

「アスカ、迷うならそれと同じチョコ買ったらどう?」

 アスカの手には加持用に買うチョコが握られている。

「え〜加持さんと一緒なの〜〜?」

「決まらないんでしょ?良いじゃない同じでも」

「加持さんの質が下がっちゃう〜〜」

 露骨にイヤな顔をするアスカ、こんどはヒカリの怒りがこみ上げてくる。

「いい加減にしなさい!碇君は加持さんとは同等、それ以上じゃないの!それに決めなさい!」

「は、はい!」

 ヒカリの迫力に押され、チョコを手に取るとレジに走って行った。

 こうしてヒカリは満足して、アスカは渋々デパートを後にした。

 

 

 

 その日の夜、アスカはベッドの上でチョコを見ながら考えていた。

(・・・・・・ヒカリに押されて買っちゃったけど、どうやって渡そうかしら)

 義理の為に買ったとはいえ、豪華すぎる。値段からして義理の部類には入らないだろう。

(義理よ、アンタにあげるわ・・・誰にも貰えないんでしょ?あげるわよ・・・な〜んかしっくりこないわね)

 チョコの渡し方シミュレーションは夜遅くまで続いた。

(はあ〜〜100円チョコがよかったかな)

 

 

 次の日

「ZZZZZZ」

 アスカは深い眠りについていた。ずっと渡し方シミュレーションをおこなっていたので疲れたのだろう。

「ZZZZZ」

「アスカ〜起きないと遅刻するよ」

 襖の向こうからシンジの声が聞こえる。

「ZZZZZ」

 だが聞こえていない。夢の中だろう。

「アスカ〜〜」

「ZZZZZ」

 ススス〜

 襖をゆっくりと開けるシンジ、起こす為に部屋に入ってきた。だがアスカは何時も入ることを許していない。

(まったくこれで文句言われるから、イヤになっちゃうよ)

 そう、起こさなかったらその事で文句を言われる。それで部屋に入って起こしても文句を言われる、ひどい時には世界を狙えるビンタが飛んでくるのである。

(はあ〜・・・今日は叩かれませんように)

 息を殺してアスカに近づく。

「アスカ、朝だよ〜起きないと遅刻するよ」

「ZZZZ」

 優しい声で起こしにかかる。普通に起こすのが恐いシンジ。

「アスカ〜〜」

「ZZZ・・う、う〜〜ん。シンジ〜〜?・・・・」

 布団から顔を出すが、焦点があっていない。

「う、うん。遅刻するよ、早く起きないと」

「・・・・・う・・・・う〜〜ん、うみゃうみゃ・・・」

 ガバッ!

 アスカはベッドの上に正座すると、チョコを両手に持ってシンジの前に出した。

「?何」

 シンジは当然わからない。アスカを見るが、髪は寝癖で跳ね、瞼も半分閉じており、上半身は左右にふらついている。

「シンジ・・・いつもありがとう・・これはお礼よ・ありがたく受け取りなさい」

「えっええ?」

 渡すとまた布団に潜り、眠りだした。シンジはチョコを受け取って固まった。

「・・・・アスカが僕に?ありがとう」

 アスカの行動に思考が鈍ったが、段々と嬉しさがこみ上げてくる。そしてアスカを起こすのを忘れてスキップして部屋を出た。

 

 

 その後シンジは一人で学校に行ってしまい、アスカにビンタを食らうのだがそれでもシンジはニコニコしているのであった。


 寝ぼけて渡したチョコは果して義理でしょうか?それとも?

 嬉しさのあまり起こすのを忘れたシンジ君、この日、一人学校に行ってはダメじゃあないでしょうかね(でも大丈夫これはLASだから)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION VA