大晦日

 十二月三十一日、大掃除も終わり正月の用意もでき後は時間が経つのを待つだけ。だが主夫シンジは忙しい。

 朝から台所に立ち年越し蕎麦、おせち料理にと大忙しである。

 コネコネコネ

「ふう」

 そば粉を水でとき麺から作る鉄人シンジ、こねるだけで重労働である。

 コネコネコネ

「よし!後はねかせて」

 蕎麦は完成した、次はおせち料理の準備に取りかかる。最近の主婦はおせちを買うのだがシンジは違う、作るのだ。

 慣れた手つきで次々と材料をさばいていく。

 

 

「そろそろお昼か」

 夢中で調理をしていると時間が早く経つ。もうすぐお昼、家事をしない同居人の昼食を作る。

「簡単なものでいいかな」

 食パンを取りだしピザソースを塗りピザトーストを作りオーブンで焼く。

「う〜〜ん、良い匂い。ピザトーストね」

 チーズがとけパンがこんがりと焼きあがってくると、今までリビングで寝転がっていたアスカとミサトがやって来る。大晦日というのにぐうたらな女性二人。

「シンジ〜まだ〜」

「もうすぐだよ」

 アスカは待ちきれずにオーブンをじっと見つづけ喉を鳴らす、ミサトは素早く冷蔵庫からビールを取り出している。

 そしてこんがりと焼けたピザトーストの完成。

「「「いただきま〜す!!!」」」

 モグモグモグ

 ゴクゴクゴク

 前者は勢いよく食べるアスカ、後者は勢いよく飲むミサト。

 そしてお腹が膨れた事で満足になるとリビングに戻っていった。そしてまたシンジは料理に取りかかる。

 

 

 夕方頃になると料理はだんだんと完成していき台所中に良い香りが立ち込める。そしてその香りはリビングへと流れて行く。

 クンクンクンクン

 鼻を鳴らしてふらふらとアスカがやって来た。食べ物の事となると鼻が利く。

「できているじゃない。美味しそうね」

「まだ半分もできてないよ。煮豆も味が染みてないしね」

「ふ〜〜ん、日本料理って大変なのね」

 料理の奥の深さに感心するアスカだが、目線はすでに完成している料理へ向いていた。

「1個貰うわよ」

 皿の料理に手が伸びるが素早くシンジが皿を持ち上げた。

「ダメだよ。おせち料理はお正月に食べなきゃ」

「良いじゃないのよ」

「ダメ」

「ちぇ〜〜シンジのけちんぼ。いいもんお菓子を食べるから」

 アスカはプウ〜と頬を膨らませるとリビングへ戻っていった。

 

 

 クンクンクンクン

 そして今度は・・・・・

「おお!美味しいそうじゃない」

 ビールを買いに行っていたミサトが帰ってきた。

「ええ、腕によりをかけましたから」

「さっすがシンちゃん!どれどれ一口」

 ミサトの手が皿に伸びる。だがシンジはそれをせいした。

「ダメですよ」

「良いじゃないのよ〜いじわる〜」

 ぶりっ子するミサト、今年(ピ〜〜)歳。

「ダメです!TVでも見ていてください」

 そこでミサトは真剣な顔でシンジに話した。

「シンジ君、おせち料理はね。大晦日に食べる事が日本に古くから伝わる伝統なのよ」

「はいはいわかりました。お菓子がありますから食べていてください」

 受け流すシンジ。

「シンちゃ〜〜ん」

 一気に顔が崩れた。

(ふふふ、こうなったら意地でも食べてやるわ)

 心に誓うミサト。本当に作戦部長であろうか?

「シンちゃん頑張ってね〜〜」

 ニコニコしてその場を離れるミサト。だがその瞳はテーブルの上の料理の位置を把握していた。

 

 

 

 そして数分後・・・・・

 ソロリソロリ・・・・

 忍び足でやって来たミサト、シンジは調理に夢中で気がつかない。

(ふふふ、シンジ君もまだまだね。いただきま〜〜〜〜す)

 ニヤリと笑い、肉に手が伸びた!しかし・・・・・

 ドコ〜〜〜ン!!

ぎゃあああ!!

 ミサトの背後から影が迫り、脳天を直撃。シンジは振り向いた。

「ミサトさん!やっぱり来ましたね」

「いたたた、何がやっぱりよ。ペンペン?」

 頭をさすりながら後を見てみると、そこにはペンペンが立っていた。

「来るだろうと思ってペンペンに見張りを頼んだんですよ」

「クエクエ!」

 ビシっとシンジに向かって羽を上げるペンペン、満足そうである。

「ミサトさん、明日になれば食べられますから我慢してください」

「いいえシンジ君!これはペンペンとの対決なのよ。口出しは無用よ」

「へ?」

 興奮しているミサト、ペンペンに対して火花を散らす。

「ペンペン、誰のおかげで生活できると思っているの」

「クエ」

 言えるような台詞ではない。ペンペンは瞬時にシンジを羽指した。

「むむむむ!どうやらお仕置きが必要ね」

「ミサトさん、落ちついてください」

 ミサトをなだめるシンジだが興奮は最高潮。ペンペンはそれを無視してあくび。

「ふっ、ペンペン!年越しは気絶で向かえなさい」

「クエクエクエ!」

「ミサトさん!ペンペン!」

 シンジの制止も聞かずに戦いが始まった。

 

 

きええええ!!

クワワワ!!

 互いに最大の力でぶつかった。

 ドゴオオオオオンン!!!

 

 

ギョエエ〜〜・・・・・・・・・」

「ミサトさん!」

 ミサト敗れる!台所で大の字に沈黙、どうやら気絶で年越しのようである。ペンペンは試合の終わりの様に礼をする。

「ミサトさん!ミサトさん!」

「・・・・・・・・・」

 揺さぶるが返事はない。

 

 

(へへへ、いっただきま〜〜す)

 シンジがミサトを一生懸命に起こそうとしている隙に、アスカはコッソリとやって来ておせち料理をつまみ食いしていた。

(う〜〜〜〜ん美味しい!)

 葛城家の大晦日は騒がしい。


 一年の終わり大晦日も葛城家は騒がしいです。

 シンジ君の活躍の場かと思いましたが、なぜかミサトさんとペンペンの対決になってしまいました(^^;)

 アスカちゃんはちゃっかりとつまみ食い。

 それでは良いお年を〜〜〜!

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 大晦日