暑い

「はあ〜〜〜今日も暑いわね〜〜」

 夕方、アスカは額に浮き出た汗をハンカチで拭きながら道を歩いてた。

「ちょっと買いすぎちゃったかな」

 両手には大きな袋、ヒカリと買い物をしてきたようである。

「ふう〜〜さっぱりしたものでも食べたいわねえ〜〜、そうめんなんかがいいわ。その後はお風呂に入ってスイカを食べる。これで決まりね」

 すでに食べるものは決まっているがそうめんを食べたいとシンジには言ってはいない。

「シンジの事だから用意しているわね」

 足取りは軽い。

 

 

「たっだいま〜〜〜」

「おかえり〜〜ご飯用意できているよ」

 台所からシンジの声が聞こえた、アスカの帰宅に合わせて準備していたのだろう。

「本当〜もうお腹ペコペコ〜〜」

 服を着替えに自室に戻り軽い足取りで台所に向かった。

「な、何〜〜〜?

 アスカはご飯を見て絶句した。

「何って鍋焼きうどんだよ」

 テーブルにはグツグツ湯気が出ている鍋が乗っていた。

「あふあふ、おひしいわね〜〜〜暑い時は暑いものが一番ね」

 すでにミサトはビールを飲みながら汗をかき鍋焼きうどんを味わっている。

「クエックエックエ〜〜」

 ペンペンも器用にうどんを飲みこんでいた。

「さっアスカも冷めないうちに食べなよ」

「んなもん暑い時に食べられるわけないでしょうが!そうめんはどうしたのよ?今日はそうめんじゃなかったの?」

「そうめん?違うよ」

 シンジは首を傾げた。

「何で違うのよ、アタシがそうめん食べたかったのを知っているでしょうが」

「はあ〜?そうめんなんて一言も言わなかったじゃないか」

「下僕は言わなくてもアタシが食べたいものを用意しておくのが常識でしょうが」

「なんだよそれ?」

 アスカの理不尽な怒りでシンジはムッとした。

「まあまあ二人とも、喧嘩しない。うどん食べて汗を流せばスッキリするわよ」

 ミサトは二人をからかいもせずに仲裁した、よほどうどんが美味しいのだろう。

「そうめんは明日するから食べなよ、冷めちゃうよ」

「暑くて食べられないわよ、シンジ!冷ましなさい」

「え〜〜?冷ましたら美味しさが半減しちゃうよ」

 料理人にとって最高の瞬間で食べてもらえないのは辛い。

「アタシのせくしいな舌を火傷させる気なの?冷ましなさい」

「わかったよ、何だよそのせくしいな舌って」

「五月蝿い!アタシの全てがせくしいなのよ」

「わけわからないや」

 シンジは頭をかきながらリビングに行こうとした。

「どこいくのよ?さっさと冷ましなさい」

「うちわをもってくるんだよ、そうしないと冷ませないよ」

「うちわであおいだらゴミが入るでしょうが」

「じゃあどうするんだよ?」

 アスカの怒りにまたちょっとムッとするシンジ、だが激しく文句を言えないのは悲しい。

「アンタがフ〜フ〜しなさい」

「はあ?」

「だからフ〜フ〜よ」

 アスカはそっぽを向きながら叫んだ、顔が少し赤くなっている。

「わかったよ」

 シンジは面倒くさがりながらうどんを箸で掴み冷まし始めた。

「早く冷ましなさいよ」

「わかったよ、フ〜〜フ〜〜」

「あら〜〜アスカ、熱いわねえ」

 この状況を見てミサトは黙っていられない。

「う、五月蝿いわね!何が暑いのよ?」

「ノンノン、違うわよ暑いじゃなくて熱い。もうお姉さん熱くて食べらんないわ〜〜」

 タンクトップの胸元を広げ手でうちわを作りあおぎニンマリ笑った。

「ミサトさんも熱いですか?」

「ん、大丈夫よ、アスカのを冷やしてあげてね〜〜」

「ミサト五月蝿い!」

 一生懸命冷やしているシンジにニッコリ微笑むミサト、だがアスカはそのミサトの態度が腹立たしい。

「はいはい、ご馳走様」

「もう食べたんですか?残っていますけど」

 ミサトの鍋には三分の一うどんが残っていた。

「違う、違うわよ。別の意味のご馳走様よん、ねえアスカ」

 アスカを見てニヤリと口元を歪めた。某髭司令官のように。

「酒徒は黙って飲んでろ〜〜〜〜!シンジまだなの?」

「ん、そろそろ良いかな」

 シンジはうどんをアスカに渡した、湯気は先ほどより出ていない。

「そう、ありがと」

 アスカはうどんを食べた。

 もぐもぐ、もぐもぐ

「熱くない?」

「大丈夫よ、冷えていても美味しいわ」

「そう、良かった〜〜」

 シンジはホッとした、『美味しい』は料理人にとって最大の誉め言葉なのであるから。

「アスカ〜本当に冷えているの?私にはもう熱くて熱くて見てらんないわ」

「五月蝿い〜〜あっちに行っていろ〜〜〜!」

 アスカの叫びがミサトに直撃。

「はいはいお姉さんはク〜ラ〜にでも当たってきましょうかね」

 ミサトはニヤリニヤリして台所をあとにした。

「アスカ、何を怒っているの?」

 シンジは状況を飲めずにわからなかった。

「良いのよわからなくて、そうめんも良いけどうどんも良いわね」

 アスカは鍋焼きうどんが気に入ったようだ。別の意味でかもしれないが。


 暑い時はサッパリしたものが食べたいですが、暑い夏を乗り切るには熱いもの一番!

 そうめんが良かったアスカちゃん、でもシンジ君のフ〜フ〜でうどんが好きになりましたね。多分明日も鍋焼きうどんでしょう(笑)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 暑い