傘
「ヒカリと買い物に行くからお昼はいらないわよ」
アスカはお気に入りのワンピースでおめかし、リビングでTVを見ているシンジに告げた。
「うん、わかったよ」
「じゃあ行ってくるわね」
ウキウキ気分で玄関に向かう、買うものが決まっているのだろうか?靴を履いているとシンジがやって来た。
「アスカ、昼から雨が降るから傘持っていった方がいいよ」
「いらないわよ、面倒くさいし」
「でも今も空が曇っているから絶対に降るよ」
まだ午前10時だというのに空は薄暗く、夕方のようであった。
「シンジ私を誰だと思っているの?」
「えっ?アスカじゃないの」
当然の答えを返し少し首を傾げるシンジ、アスカはビシッとシンジに指を突きさした。
「違う!晴れ美少女アスカ様よ」
「そ、そう・・・・・」
腰に手をあて胸を張るアスカ、シンジは『その自信はどこからくるのだろう?』と思いつつ呆れた。
「行ってくるわね、しっかりと留守番しているのよ」
「うん、行ってらっしゃい」
アスカを見送るとリビングに戻り窓から空を見た。
「・・・・絶対に雨が降ると思うんだけどなあ」
「ヒカリお待たせ〜〜」
「私も今来たところよ」
駅前、ヒカリとの待ち合わせである。
「あれ?アスカ傘は持ってきてないの」
「うん」
「昼から雨が降るって言っていたわよ」
ヒカリは薄黄色の傘を手に持っていた、お気に入りの傘。
「いらないわよ、それより早く行きましょう」
空の薄暗さを気にしないアスカ、ヒカリの手を取るとホームに入っていった。
「ヒカリ、これ可愛い〜〜」
「そうねアスカに似合うわよ」
デパートで服を見てまわる二人、流行の服を体に当て二人だけのファッションショーを行う。
「あっこれも可愛い〜〜〜」
「ヒカリ、こっちはどう?」
女の子の買い物は長い、服売り場をまわっているうちに時間はお昼を過ぎていた。そして二人は最上階のスカイレストランへ。
360度前面ガラス張り、第3新東京を一望できる。だが・・・・・
「アスカ、雨降ってるわよ」
天気予報は当たった。それほど激しくは無いが晴れの日なら見えるビルが見えない。
「本当ね。最近の天気予報は良く当たるわ」
傘を持ってきていないのに慌てないアスカ、さっさと指定された席に歩いていった。
(アスカ、どうやって帰るつもりかしら・・・・・!あ〜あ、そういう事ね)
ヒカリはアスカの考えが読めた。
そして二人は楽しい昼食をとった。
「それじゃあ帰りましょう、アスカどうするの?入っていく?」
お腹もふくれ買いたい物も買った、あとは帰るだけである。だが雨はまだ降っている。
「私はいいわよ。まだちょっと見てまわるから」
ヒカリの傘に入る事を断り、二人は別れた。ヒカリを入り口で見送るとポケットから携帯を出し短縮を押した。
ピリリリリリリリ
ピピピピピピピ
シンジの携帯が鳴った。
「ん?誰からだろう、アスカだ何だろう。もしもしアスカ」
「シンジ、今ねデパートにいるの、それで今雨降っているでしょ。迎えに来て」
アスカからの電話だとわかった時、シンジはうすうす予想していた。
「はあ〜だから傘を持っていけば良かったのに」
「ツベコベ言わない!10分以内に来るのよ!遅刻したら殺すわよ!」
プッ!ツーツー
アスカの大声が耳に響き、そして切れた。
「10分ってそんな無茶苦茶な。すぐ出ないと」
慌てて部屋に駆け込み服を着替える。ポケットに携帯、財布を入れ玄関に向かう。
「ええとアスカの傘は・・・・・あれ?」
傘立てにアスカお気に入りの赤い傘が見当たらない、シンジの傘だけがある。
「あれれ、どこに行っちゃったんだろう?」
玄関をくまなく探すが出てこない。
「どこに行ったのかな?これじゃ迎えに行けないよ」
オロオロし始め、携帯を手に取った。
ピピピピピピピ
ピリリリリリリリ
ピッ!
「もしもしアスカ、アスカの傘が・・「早く来る!殺すわよ!」
プッ!ツーツー
シンジの声はかき消され電話は切れた。
「どうしよう・・・・・ええいしょうがない!」
自分の傘を掴むとマンションを走って出た。
「遅いわね」
アスカはデパートの入り口で空を見上げ立っていた。空を見上げる美少女の姿が絵になり1分毎にナンパをされていた。
「まったくレディーを待たせるなんて、懲らしめてやらないと」
腕を組み頬を膨らませていると、遠くから聞いた事のある声が聞こえた。
「アスカ〜〜」
「やっと来たわね」
シンジの姿を見ると今まで怒っていた表情が緩やかに和んだ。
「遅いわよ!3分の遅刻」
「はあはあ、ごめん」
肩で息をするシンジ、額からは汗が流れ出ている。
「許してあげるわよ、傘をちょうだい」
手を出すアスカ、だがシンジの手には何も持っていない。
「ごめん、アスカの傘が見つからなかったんだ」
「見つからなかった?・・・・あっそういえばネルフに置き忘れていたわ」
「どうしよう、傘を買う?」
「買うなんて勿体無いでしょ。私が気に入る傘なんてそうそう無いわよ」
「じゃあどうしよう・・・・」
ようやく息が整ってきた。今度はアスカの傘で頭が降る回転。
「そんなの別に考えなくていいわよ」
「えっ?」
アスカは素早くシンジの腕に手をまわし1本の傘に入った。
「それじゃあ帰るわよ」
「う、うん」
アスカの急な行動におもわず顔を赤らめるシンジ、二人は1つの傘でデパートを後にした。
雨が降りそうなのに傘を持っていかないアスカちゃん。そして雨が降りました当然傘が要ります…アスカちゃん確信犯ですな(^^)
でもシンジ君遅刻したのに殺されなくて良かった〜〜
タイトルでオチがわかりますね(^^;)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION 傘