林檎
ピ〜ンポ〜ン!
何気ない昼下がり、葛城家のチャイムが鳴った。
「は〜〜〜い」
ミサトはネルフ、アスカはリビングで寝転んでTV、となると声の持ち主は主夫シンジである。
「どちらさま?」
玄関を開けて対応する姿はさまになっている、ミサトやアスカにはできそうにない。
「こんにちは」
「あれ?どうしたの」
玄関先にはレイが立っていた、珍しい来客にシンジは驚いたが嬉しさも感じた。
「これおすそ分け」
猫の刺繍がついた布袋の中身をシンジに見せた。
「わあ〜林檎だね」
袋の中には真っ赤に熟した林檎が沢山入っていた。
「いっぱい貰ったからお母さんが持っていきなさいって」
『お母さん』とはリツコの事である、リツコは『お姉さん』と呼ばないと怒るのだがレイは『お母さん』といつも呼んで怒られている。
「リツコさんが、嬉しいな〜あがってよ」
「うん」
「うわ〜〜美味しそう、さっそく食べましょ」
林檎を見たアスカの素直な感想である。敵?であるレイが持ってきても美味しいものは美味しいのだ。
「そうだね、じゃあ包丁を・・・」
「持ってきたから」
レイは袋の中から果物ナイフを取り出した。
「用意が良いね、お皿を持ってくるよ」
「うん」
シンジが皿を持ってくるとレイは真っ赤に熟した大きな林檎を選び、皮をむき始めた。
サッサッサッサ
林檎を回しながら皮を細くむいていく、皮に身がついてなく手際の良さにシンジは驚いた。
「綾波上手だね」
レイは林檎の皮を一度も切らずにむききった、そして皿の上に綺麗にむかれた林檎が置かれた。
「うん、凄い?」
「うん、凄いよ。なかなかできるものじゃないよ」
レイにこんな特技?があるとは想像できなかったので驚き隠せない。
「じゃあ、なでなで」
「え?」
「上手にすると褒めてもらえるの、なでなでして」
「えっあ、そうだね。じゃあなでなで」
ぽっ!
シンジに頭をなでなでしてもらい、頬が赤くなる。しかしそれを見て面白くないのが一人いる。
「ぬあにがなでなでよ!そのくらい誰にだってできるわよ」
アスカである、いまにも林檎を潰しそうな握力で持つとむき始める。
「わああ、手つきが危ないよ」
ナイフを持つ手が震えている、普段家事をしないアスカにとって至難である。
「うっさい!黙ってなさい」
ピッ!
切れた、といってもほんの数ミリであるが・・・・・
「うえええええ〜〜〜〜ん、いったぁ〜〜い!いたいよ〜〜うええええ〜〜ん!」
ほんのわずかでも血が出れば大怪我と思うアスカは大声で泣き始めた。
「アスカ、大丈夫だよ。傷は浅いから」
「いた〜〜い、いたいよ〜〜〜うえ〜〜ん!」
シンジにしてみれば数ミリの傷は家事で何度も経験済みである、どおってことないのだ。
「ほら、泣かない泣かない」
なでなで、なでなで
頭を撫でるシンジ、もう保父さん状態である。
「うぐっひっく・・・ひっく」
「ばんそうこうを貼れば大丈夫だから、泣かない泣かない」
「うぐ・・ひっく・・うん」
救急箱を自室へ取りに行こうとするが、Tシャツの裾をレイに掴まれた。
「どうしたの?」
「多いの」
「えっ?何が」
「アスカのなでなでが2回多いの」
シッカリと数えていたようである、悲しげな瞳でジッとシンジを見つめるレイ、もっとなでなでされたいようである。
「お、多かったの?」
「うん、だから私にも」
「はあ〜わかったよ、なでなで」
ぽっ!
アスカと同じ回数なでなでされ満足である。
「シンジ〜〜早く〜〜」
「あっ、うん」
まだ応急処置されないアスカ、涙が溢れてくる。シンジは急いで自室へ救急箱を取りに行く時思った・・・
(林檎を食べるだけなのにどうして疲れるんだろう)
エヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジは保父の顔も持つのである。
保父、碇シンジ君でした(笑)
レイちゃんにアスカちゃん、2人ともちょっとへっぽこかな、でもシンジ君になでなでしてもらったのでLRSとLASですね(違うかな^^;)
シンジ君・・・苦労が絶えないなあ〜
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION 林檎