WSA
アスカは自室のカレンダーを穴が開くほど見つめた。
「今日ね」
見つめる先の日にちは14日、マジックで丸が何十にもしてある。
「何をくれるのかしら?」
ふふふと笑う、今日はホワイトデー、ヴァレンタインは恥ずかしい渡し方をして3日間はシンジとマトモに顔を合わせることができなかった。だが恥ずかしさも今日で帳消しである。
「アスカ、朝だよ」
襖の向こうからシンジの声、アスカがまだ寝ていると思い声をかけたのである。
「わかっているわよ」
勢い良く襖を開けた。するとシンジは目を見開いて驚いていた。
「め、珍しい。アスカが起きているなんて」
「私だって早起きすることがあるわよ!」
プイっと怒りながら、汗を流すためにスタスタと風呂場に向かう。
「よし、いい温度ね」
浴槽に手を入れて肌に合う温度を確かめる。朝の入浴は温度が一℃でも違うとアスカは不機嫌になるので、シンジは細心の注意をはらっていた。
「フンフンフンフ〜〜ン♪」
気持ちが良いと自然に鼻歌がでる、しかし今日は格別。
「何をくれるのかしら?」
予想する物を考える。
「あれかな?あれ、もしかしたら私が欲しいやつかな?あれでもいいな〜」
想像はどんどんと膨らむ、全てが欲しいものばかり、そしてひとつひとつの値段は半端な額ではない。シンジには買えないであろう。
「フンフンフンフ〜〜ン♪」
汗を流してスッキリ、バスタオル一枚で台所に向かった。
「シンジ、牛乳〜」
「うん」
美少女がタオル一枚、湯上りで出てきたことは誰もが喜ぶことであるが、シンジはそうではなかった。最初は真っ赤になっていたが、今は慣れて気にしないのである。
ごきゅごきゅごきゅごきゅ
腰に手を当て、一気に飲み干す。火照った体に冷たい牛乳、アスカ至高の時間である。
「ぷはあ〜〜うまい!」
豪快に息をはき、腕で口を拭く。まるでオヤヂのようである。
「アスカ、その仕草オヤヂくさいよ」
案の定言われた。
「いいじゃないの、これがお風呂の後の正式な過ごし方なんだから」
「そうなの?」
「そうよ、知らないの?日本式よ」
「聞いた事ないけど」
シンジは頭をひねるがそんな事は見た事も聞いた事もない。
「知らないなんて、似非日本人ね」
「なんだよそれ」
コップを置くと、着替えるために部屋に戻っていった。
Tシャツに短パンとラフな格好に着替えると朝食を取るために台所へ向かう。
「今日は何かな〜?」
先ほど牛乳を飲んだときに目に入ったのだが、シンジからのお返しが待ち遠しくて、嬉しくて声に出てしまう。
「今日は目玉焼きね。美味しそう〜〜」
「いつもとかわらないよ」
確かにかわらない。一昨日も同じであった。
「気の持ちようよ。いっただきま〜〜す」
ぱくぱく、もぐもぐ。
「おっいし〜〜」
気分が良いと食も弾む、口の周りはご飯粒だらけ。
「アスカ、口拭きなよ」
「あ、うん」
ふきふき
楽しい朝食は進む。
「ごちそうさま〜」
「アスカ、お茶」
「うん。?これはなに」
お茶といっしょに出された小さな箱。聞かなくてもわかる、ヴァレンタインのお返し。
「開けてみて」
「わかったわ・・・・綺麗、私に?」
開けると、光に反射して輝くダイヤの指輪。
「うん、今日はホワイトデーだけどそれはお礼なんて簡単なものじゃないんだ。アスカ、僕と結婚してほしいんだ」
「えっ・・・・」
普段ポケポケしたシンジの顔が真面目である。アスカは本気だと肌で感じた。
「僕はアスカを愛している」
「・・・・・・嬉しい」
瞳から涙があふれ出てくる。普段から強気なアスカが見せた涙、静かに頷いた。
「うん・・・・・・・」
「アスカ」
「シンジ」
二人は抱き合った。
「うふうふ、ふふふふうふふ」
「アスカ、遅刻するよ〜」
布団はベッドから落ち、枕を抱いてよだれをたらしニヘラ〜と笑いながら寝ているアスカ。襖の向こうからシンジの声が聞こえる。
「にはあ〜」
だがアスカは気がつかない。
「アスカ〜入るよ」
入ったら殺されるのだが、もし起こさなくて遅刻しても殺されるので死を覚悟して部屋に入るシンジ。
「アスカ、アスカ、起きないと遅刻するよ」
「うへへへ〜・・・・・・む、むにゃむにゃ・・・あれシンジ?」
「あれじゃないよ。遅刻するよ」
「遅刻って何よ?」
髪は寝癖ではね、体をふらふらさせながら目をこする。
「学校だよ。もう用意をしないと」
「学校・・・・・・あっ〜〜!」
ようやく現実に戻った。
「レディーの部屋に無断で入ってくるなんて、このスケベ!」
バッチ〜〜〜ン!
「うぎゃあっ!!!」
乾いた良い音が響き、シンジは飛んだ。
「まったく、良い夢だったのに、このバカシンジ!」
気絶しているシンジに一蹴り入れるとダッシュでシャワーを浴びに行った。いつもの変わらない生活が始まる。
その後、ヴァレンタインのお返しを貰ったが、夢のようなものではなく普通のクッキーであった。
・・・・・・夢落ちかい!
夢の中では少しは素直なアスカちゃんなのに現実では・・・いつになったら素直になれるのでしょうかね。
起こすだけなのに気絶するシンジ君・・・合掌(^^;)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION WSA