読書
10月になると夏の暑さも段々と影をひそめ、昼間過ごしやすく朝夕涼しくなり薄着の長袖でも問題無いのは昔の事、暑い日が続く。
「みなさん、もう秋ですね〜昔はこの時期になると涼しくなり・・・・・」
老教師の授業、授業を進めているかと思えば急に脱線し昔話を語り出すが・・・・・
(すやすや、すやすや・・・・・碇クン、ぽっ)
(zzzzzz、zzzzzzz・・・・・シンジ〜ご飯おかわり〜〜)
(へえ〜昔は日が落ちるのが早くなったんだ〜〜)
(ぐが〜〜ぐが〜〜〜・・・・・もう食えへんで〜〜〜)
(真剣な態度で授業を受けるシンジ君・・・・素敵だ、好意に値するよ)
と、チルドレンは多種多様な授業を受けていた。
「秋の夜長は読書が最適です、私も昔は良く本を読みました。みなさんもこの機会に本を読んだらどうですか?この学校の図書室は沢山の本が置いてありますから・・・」
淡々と話しつづける老教師、だが生徒は誰も聞いていなかった。二人を除いては・・・・
(ふ〜〜ん、読書の秋かぁ〜〜何か読んでみようかな)
チルドレンの中で真面目なシンジ、いつも音楽を聴いているのでたまには活字に親しむのも良いと思い放課後に図書室に寄る計画を立てた。
(いつもお料理の本ばかり読んでいるからたまには別な本も良いわね)
委員長なので当然真面目なヒカリ、ここ数年料理以外の本は読んだ事が無かったので放課後に図書室に寄る計画を立てた。
そして退屈?な授業は終わり休み時間。
「ぽっ・・・・良かった」
一人窓の外を眺め頬を赤らめるレイ。
「夕食、美味しかった〜〜〜」
すでに夢の中で今日の夕食を食べたアスカ。
「やっと終わった〜〜」
授業の疲れで肩をほぐすシンジ。
「美味い!美味いの〜〜!」
早弁するトウジ。
「シンジ君・・・素敵だ、僕と一緒に行こう」
自分の世界に入っているカヲル。
「平和だね〜〜〜」
その光景をみて呟くケンスケ、世界はこの普通?の中学生によって守られている。
そして次の授業・・・・・・
自習
と大きく黒板に書かれた。その一時間は生徒にとってパラダイスである、席を立とうが喋ろうが自由であり真面目に自習をする生徒はほぼいない。パラダイスの始まりなのだが先ほど老教師に感化されたヒカリが。
「この時間は図書室で読書をします」
先生に信頼されている委員長のヒカリ、自習時間を任されており何をするのかも決めて良い。
この発言に対してクラスメートからはブーイングの声は出なかった、いつも居る教室よりもたまには違う図書室で遊ぶのも良いだろうという考えであった。
始業のベルが鳴る前に生徒は図書室に移動し、読みたい本を選び席に座ったがシンジは・・・・
(どれにしようかな〜〜〜)
ベルが鳴って五分、まだ迷っていた。
「碇君は何を読むの?」
「ははっ、まだ決めていないんだ。委員長は何を読むの?」
頭をかきながら決めかねているシンジ、ヒカリは決まったのだろう手に持っている。
「これ、世界の料理人伝記、レシピも乗っているから一石二鳥なのよ」
「ふ〜〜ん、委員長にピッタリだね」
「そうでしょう、碇君にはこれなんかどうかしら?世界の伝統料理、作れそうなのが乗ってるみたいよ」
「ほ、他のを探すよ」
パラパラとめくって見ると毎日読んでいる料理の本とほぼ変わりが無かった、学校に来てまで見る必要は無いと思い返した。
「そう、早く見つかると良いわね」
「うん」
ヒカリは読むために席に向かった、そしてまた探し歩くシンジ。
「く、くくくくくっおっかしいの〜〜」
部屋の片隅で本棚を背もたれにしてあぐらをかいて座っているトウジ、読んでる本が面白いのか声を押し殺して笑っている。
「トウジ〜〜何読んでいるの?」
「おおっ!シンジか、これやこれ」
トウジは本の表紙を見せた。
「漫画〜〜、読んで良いのかい?」
「別に良いんや、これも字が書いてある立派な読書や、どや?シンジも読むか?」
横に積まれた漫画から一冊をシンジに渡した。
(漫画があるんだ変わった図書室だなぁ〜)
「どや?面白そうやろ」
「そうだね、でもいいよ。他のを読むから」
シンジは漫画を返すとまた探し歩く。
「・・・・・・・・・・・ぽっ」
図書室の中にあるインターネット室でレイはネットをしながら頬を赤らめていた。
「綾波、何をしているの?」
マウスを動かすレイ、シンジの声に気づき振り向いた。
「小説を読んでいるの」
「へえ〜〜ネットで読めるんだ」
感心するシンジ、家事と同居人2人の世話に負われる毎日で世間に疎い。
「何を読んでいるの?」
「ちるどれんらいふって言うえるあ〜るえすを読んでいるの、一組のカップルがいてラヴラヴだけどそれを邪魔する悪い人がいて良い所で駄目になる悲しい作品なの、けどまだ連載中だからきっと最後に二人は結ばれて悪い人は殲滅されると思うの」
「ふ〜〜ん、そうなると良いね。じゃあ僕は本を探すから」
「ええ、頑張るわ・・・・・ぽっ」
シンジの後姿を見つめ頬が赤くなるレイ。再びモニターに目を移し小説を読みふけるのであった。
「何よこれ〜〜ふざけているわ!」
本棚の前で立ち読みしているアスカ、内容が気にくわないのか本を握り締め怒っていた。
「アスカ、どうしたの?」
「あっシンジ〜〜これ見てよ〜」
「これ?・・・・・・・・」
見せられた表紙に言葉を失った。
(さ、さるかに合戦・・・・凄いの読んでいるなあアスカ)
「おサルさんがカニに負けているのよ、ふざけているでしょ?カニの奴助っ人を頼んで勝つなんて恥ずかしくないのかしら、そう思うでしょ」
「む、昔話だから興奮しないで」
「昔話だろうが何だろうが、おサルさんは勝たなくてはいけないの!ええいっ!書きなおしてやる〜〜」
突然マジックを出し内容を書き換えて行く。
「あ、あ〜駄目だよ、落書きしちゃあ」
「落書きじゃないわよ、内容を書きなおしているの、おサルさんの完全勝利にね」
「そ、そう・・・」
キュッキュとマジックの音が響く、シンジは止め様にもアスカの迫力に止められなかった。
「ふう〜〜〜完璧ね、ほら見て、あれ?シンジ?」
満足して訂正されたさるかに合戦アスカVerを見せようとしたがシンジの姿はすでに無かった。
「ふんふんふんふ〜〜〜ん」
足を組み窓から外の景色を眺めお得意の第九を歌っているカヲル、何も読んでいない。
「カヲル君、相変わらず歌が上手だね」
「ふふ、ありがとうこれは僕の十八番だからね」
「本は読まないの?」
「どうも人の書いた本は読む気になれないんだ、だから自分で考えて読んでいたところさ」
髪をかきあげニッコリと微笑む、カヲルファンの女の子が居たなら気絶するであろう。
「ふ〜ん、自分で考えるんだ凄いね。どんなのを考えたの?」
「ふふ、僕の口から言わせる気かい?照れるよ」
「そ、そう・・じゃあ遠慮しておくよ」
カヲルの妖しげな雰囲気に汗が流れ落ち、その場を逃げ去るシンジであった。
「沢山あるけど読みたいような本は無いなあ」
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン!!
「あっ終わっちゃった」
自習の時間は終わった、探しまわったシンジであったが何も読む事無く一時間を潰しただけであった。
読書の秋、真面目に読んでいるチルドレンは一人もいませんでした(笑い)
多少読んでいるといえば、トウジ君とレイちゃんでしょうか。
アスカちゃん、昔話で熱くなれるなんてへっぽこですね(^^)
カヲル君は何を考えていたのでしょうか?シンジ君、最初にヒカリちゃんから渡された本で良かったかな。
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION 暑い