宿題Ver.レイ

「夏休みの今日で終わりだね」

「ええ」

 起動実験を終えたシンジとレイはネルフの歩いていた。

「明日から皆と会えるから楽しみだね」

「ええ」

 ここ数日は起動実験がありトウジ達とは会えなかった、わずかな期間だが会えなくなると寂しいものである、明日は起動実験は無いので会う事ができるので心弾んでいた。

「宿題はやった?」

「・・・・・・・・・・・・」

 レイの返事は無かった。返事が無かった事で一瞬で見ぬいたシンジは立ち止まった。

「綾波・・・宿題やってないの?」

「宿題・・・・・・私三人目だからわからないわ」

「い、いやそれは何人目でも分ると思うんだけど・・・・・」

  もはやレイのジョーク?は通じなくなった、シンジは苦笑いするとこめかみを人差し指でかいた。

「そうなの?」

「そうだよ」

「そう・・・さよなら」

「どこ行くんだよ?」

 レイはクルリと回れ右すると今来た廊下を戻ろうとした。

「碇クン・・・こういう時どんな顔をすればいいの?」

「こ、困った顔をすればいいと思うよ」

 流石のシンジも呆れる。レイは困った顔を作ろうとするが、どんなのが困った顔か分らず涙を流し始めた。

「これは涙?・・・しくしく、悲しくないのに何故?碇クン」

「な、何?」

「宿題手伝って・・・・・・」

「うん・・・・・・・」

 シンジは今までの会話は何だったのであろうかと考えるのもあまりにもバカらしいので考えなかった。とりあえずポケットからハンカチを取り出しレイに渡す。

「綾波、涙拭きなよ」

「うん、ありがとう」

 ふきふき

 涙を拭き終え、ハンカチをシンジに返・・・・さずに鼻に持っていこうとする。

「わっちょっと待って!はいティッシュ」

 素早くポケットからティッシュを取り出すとハンカチと入れ替えた。

 チ〜〜〜〜〜〜ン!ぐすんっ!

「花粉症は辛いの」

「そ、そうだね。じゃあティッシュあげるよ」

「ありがとう・・・・ぽっ」

 ティッシュを受け取るとジッと見つめ頬を赤らめる、銀行で貰ったティッシュなのに何故に赤らめるのだろうか。

(碇クンがくれた・・・・嬉しい)

 シンジからもらった事が嬉しかったらしい。

「じゃあ行こうか」

「うん」

 二人は仲良くレイのアパートに向かった。

 

(碇クンに宿題を手伝ってもらえる手伝ってもらえる・・・・ぽっ)

(手伝ってもらったら・・・・・・・・

「碇クン手伝ってくれてありがとう」

「礼は良いよ、僕達は夫婦じゃないか」

「えっ?」

「宿題はもうこれでしなくていいんだよ」

「どうして?」

「僕の為に味噌汁と作ってくれれば良いんだよ」

「碇クン・・・嬉しい」

「レイ・・・」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・ぽっ、こんな展開になったらどうしましょう・・・・・嬉しい)

 

「綾波、綾波」

「えっ?」

 別世界に行っているレイはシンジの声で戻ってきた、わけがわからず左右を見まわす。

「綾波どうしたの?もうすぐつくよ」

「味噌汁は赤味噌が良い?白味噌?具は豆腐で良いかしら?」

「はあ〜?味噌は赤が60、白が40の割合で混ぜているけど、具はワカメも入れるよ」

 レイの言葉の意味がわからなかったが律儀に答えるのは料理の事だったからであろう。

「わかったわ、碇クンは赤60、白40、具は豆腐、ワカメが好き」

 頭にインプットされた永遠に忘れないだろう。

 

「つ、ついたから降りよう」

「うん」

 電車を降りると後は歩きである。まだ日は高く気温は高い、二人は汗を流しながら体力を消耗しないように無言で歩いていくのであった。

 

 

 

 数10分後アパートに到着した。

「碇クンあがって」

「うん、お邪魔します」

 靴を脱ぎあがるシンジ、以前は埃だらけであったが指導の甲斐があり現在はピカピカになっている。

「・・・・・・しくしく」

「わっイキナリどうしたの?」

 突然泣き出すレイ、当然シンジは慌ててします。

「お邪魔しますなの?」

「そ、そうだけど、それがどうしたの?」

「お邪魔します・・・・しくしく」

 またもやわけがわからないシンジ、レイにとっては『お邪魔します』ではなく『ただいま』と言ってほしかったようだ。

(しくしく・・・必ず言わせてみせる)

 泣きながらも闘志が燃えるレイであった。

 

「じゃあ早く終わらせようね」

「うん、あら?」

「どうしたの」

 部屋は相変わらず殺風景であったが以前よりはマシである。レイはテーブルに置かれている封筒に気が付いた。

「リツコ博士からだわ」

 封筒には『赤木リツコ』と書かれておりレイ宛てであった。中身を取り出して読んでみる。

 

レイへ

起動実験お疲れ様、今日で夏休みは終わりですが

忙しくて宿題を全然やっていなかったでしょう

本当は自分の力でやらないといけないのですが

心優しいがやっておきました

MAGIを使用したので答えは全て合っています

困った事があったら悩まずにの私に話しなさい力になります

可愛いの為にの私が必ず助けますから

それでは夜更かしをせずに早く寝るんですよ

リツコより

 

「・・・・・・」

 読み終えたレイの手から手紙がスルリと床に落ち、呆然と立ち尽くした。

「綾波、何て書いてあったの?」

「・・・・・・」

「?」

 答えないレイ、シンジは手紙を拾うと読み始める。

 

 

「・・・・・・リツコさん」

 手紙の内容に唖然とする。それもそうであろう『姉』の部分が他の字よりもはるかに大きい。だがレイにはそんな事は問題ではない、リツコは『お母さん』なのだから、今問題なのは・・・・

(碇クンと宿題ができない・・・・・しくしく)

 そう、宿題を手伝ってもらうためにシンジは来たのだ。そしてレイ妄想ワールドを期待していたのだが、それもガラスが音を立てて砕け散った。

「そうか〜宿題もう終わっちゃったんだね、それにしても文章がリツコさんらしいや。じゃあ僕は帰るから明日学校で」

 呆然と立ち尽くすレイにサヨナラの挨拶をすると帰っていった、ドアの音が虚しく耳に響く。

「しくしく、しくしく、お母さん余計なお世話なの」

 普通宿題をやってもらったら嬉しいものだが今日は違った、止めど無く涙が溢れ出る。

「しくしく、しくしく・・・・・」

 

 

 

 

 その頃ネルフ、リツコの研究室では・・・・

「ふう〜〜〜レイ喜んでいるでしょうね」

 休憩中のリツコ、コーヒーを喉に入れると息をはいて椅子に深く腰をかけ、喜んでいるレイの姿を想像して微笑んだ、その表情は母親そのものである。

「ふふ、として良い事をしたわね」

 相変わらず『姉』を強調する、だがレイは・・・・・

 

 

「お母さんのばかぁ〜〜〜しくしく」


 学生にとっては来ては欲しくない8月31日です。

 天然レイちゃんになってしまいました、アヤナミストに怒られそうなSSだ(^^;)

 せっかく二人で宿題をしてラヴラヴに持っていこうとしたレイちゃんですが、リツコさんの余計なお世話に計画が台無しになってしまいました。

 リツコさんは『姉』として良い事をしたつもりですが、レイちゃんには『お母さん』余計なお世話になってしまいました。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 宿題Ver.レイ