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輝く太陽、雨が降る気配は無い最高の洗濯日和である。シンジは鼻歌を歌いながら上機嫌で洗濯物を干している、リビングにはアスカが寝転がりファッション雑誌を読んでシンジを手伝おうという気持ちは全然ない。
「おはよう・・・」
ミサトがやって来た、心なしか顔色に陰りがあり声も小さい。
「おはようございますって、もうお昼ですよ」
すでに太陽は空高く上り午後一時を過ぎていた。
「私にとっては起きた時がおはようなの・・・」
「どうしたんですか?元気が無いですね」
「ええ、ちょっとね、こほっこっほ」
ミサトは手を口に持っていくと小さく咳払いを数回繰り返した。
「風邪ですか?」
「違うわ、ちょっと気分が悪いの」
「大丈夫ですか?寝たほうが良いですよ」
グウタラなミサトでも気分が悪い時がある。
「大丈夫よ、ある所に行けば気分が良くなるから、シンちゃんも行ってくれる?」
「病院ですか?良いですよ」
ニッコリ微笑むシンジ、だがこれが悪夢の始まりである。
「そうじゃあ行きましょうか、峠へ」
先ほどの陰りの顔が嘘のように眩しいほどの笑顔が表れた。
「え?・・・」
HEAVEN'S DRIVE 4
「いやだ〜〜〜いやだ〜〜〜〜!!」
「んもう〜〜行くって言ったじゃない」
「僕が言ったのは病院です〜〜〜」
シンジは柱にしがみ付き叫びまくった、よほど行きたくないようである。
「行きましょうよ、すっきりするわよ」
「いやだ〜〜〜!!」
引っ張るミサトだがシンジは石のように重く動く気配は無い。
「一人で行ってもつまんないのよ行きましょう、ジュースおごるから」
「水で良いです」
ミサトが諦めるまで柱から離れる気はないだろう。
「うっさいわね、シンジ行ってあげなさいよ」
雑誌を読んでいたアスカ、シンジの絶叫があまりにも五月蝿いので文句を言ってきた。
「いやだ〜〜アスカが行けば良いじゃないか」
「いやよ!」
アスカもミサトの運転は嫌である、シンジが拒否し続ければ次の標的は自分に向けられるのでさっさと行ってほしい。
ドケシッ!
「んぎゃっ」
アスカはシンジの顔面に蹴りを一発、その瞬間気絶し柱から離れた」
「サンキューアスカ」
「さっさと行ってきなさいよ」
「んじゃ行ってきま〜〜〜す」
気絶しているシンジをおんぶすると高速で家を出て行ったのであった。
「ふう〜〜ようやく静かになったわね」
「う、う〜〜〜ん・・あれ?ミサトさん・・・げっ」
「おっはよ〜〜〜じゃあ行くわよ」
グオオオオオオオオン!!!
シンジは目を覚まし隣のミサトを見た瞬間全ての事を理解した。車は爆音を上げ駐車場から飛び出した。
「母さん、僕は今から会いに行きます・・・」
発進してからわずか数秒、シンジはユイの元へ旅立った。
「ありゃ?シンちゃん出発早々寝るなんてよっぽど疲れているのね」
疲れていない気絶しているのである。
「私の華麗なるドライビングテクニックを見せたいのになあ」
グオオオオオオオ!!!
愛車アルピーヌ・ルノーは峠を目指し国道を爆走していった。
「今日は一分縮めようかな」
峠の入り口、ミサトはこれから走る峠を見上げると時計をセットしカウントダウンに入る。
「5・・・4・・3・2、1」
グオオオオオオ!!
シフトをローに入れアクセルを踏みタイミングよくクラッチを離しギアをロスすることなく動力を伝えた。
「んしゃっナイスタイミングね、最高のスタートだわ」
自分のテクニックに酔いしれる暇も無くカーブに差し掛かる。
「ふっ子供騙しのカーブだわ」
鼻で笑うと減速せずにクリアー、さらに加速を続ける。
「ふっふっふっふ、今日はコーナリング重視にセットしたのが良かったわね」
タイヤはしっかりと地面を捉え鋭くカーブに入っても挙動を乱すことなく次々にクリアをしていった。
「おっと、魔のカーブだわ、用心しないとね」
魔のカーブ、走り屋にとって一番事故が多い場所、ミサトでも気を抜けば事故を起こす場所である」
「十分に減速してクリアっと、あら、あれは」
魔のカーブをクリアしてシフトアップしていくと前方に走っている車が見えた。
「あれはランエボ、それもVとはなかなか渋いわね」
前方を走っていたのはWRCで圧倒的な強さをほこったランサーエボリューションVであった。
「今時お目にかかれるなんて、勝負してみたいわね」
走り屋としての血が騒ぐ、ステアリングを握る力を込めるとアクセルを踏み、後ろにぴったりついた。
「さあ、どんな走りを見せてくれるのかしら」
パッシングライトを上げ前方車のドライバをあおる。
「どこで勝負をしかけるのかしら?」
神経を研ぎ澄まし相手の出方を伺う。
「さあ、さあ」
パッシングを連続して行うミサト、マナーは無いに等しい。
「さあ、さあ、さあ!」
気合を入れるミサトだが前方はスピードを上げる気配は無い、制限速度を守っている。
「何やってんのよ!峠をゆっくり走るなんてそれでも走り屋なの!!」
あまりの遅さにイライラが溜まってきた。
「こんのボケ、邪魔よ邪魔!!」
切れた、峠の中央ラインは黄色、追い越し禁止なのだがスピードを上げると横一列に並び窓を開けた。
「こんのボケがちんたら走ってんじゃないわよ、ヘタクソ!!」
大声で叫ぶが相手はスモークシールドを貼っており運転者が見えない。
「顔ぐらい見せなさいよ!この宝の持ち腐れが!!」
スーーー・・・
窓がゆっくりと開きミサトにその運転者の顔が見えた。
「あっ!・・・」
顔を見たビックリ口を開けた瞬間固まるミサト。
「50%減給半年、ボーナス無しだ」
スーーー・・・
グオオオオオオオオ!!!
それだけ言うと窓は再び閉まり、先ほどまでのスピードが嘘のように一瞬にしてその場から消え去った。
「そ、そんなあ・・・」
「う、う〜〜〜ん、もう付いたかな?」
シンジは目を覚ました、空は夕焼けにいわし雲が漂っている。
「あれ?ミサトさん、どうしたんですか」
「・・・」
運転席にはシートに体育座りをして膝に顔を埋めているミサトが姿があった。
「ミサトさん、どうしたんですか?ってまだ峠じゃないですか」
外を見ると絶景の眺め、まだ峠の四分の二の所である。
「私は・・・私は・・・悪くないもん」
「ミサトさん、帰りましょうよ」
「ただ走りたかっただけないの・・・ただ最速を求めたかっただけなのに・・・ただ最強になりたかっただけなのに・・・」
「ミサトさん!」
「それなのにどうして?私は何故ここにいるの?」
「ここにいるのってミサトさんが来たいから来たんじゃないですか」
「だからみんな最速を目指せば良いのに」
「目指したら違反で捕まりますよ、帰りましょう」
「えぐえぐ、ひっくっひく・・・」
「ミサトさん〜〜」
シンジの声が聞こえないのか、独り言を呟き続けるミサトであった。
ミサトさん峠を走らないと元気にならないんですね、一人で行くのは味気ないので犠牲者はシンジ君(笑)
いつものように調子が良かったのですが、勝負を挑もうとした相手が・・・(^^;)まさかこんな所にいるなんてミサトさん思いもしませんでしたね。
減給とは葛城家の生活は苦しくなりそうです(笑)
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION HEAVEN'S DRIVE 4