スウウウウ〜〜〜〜

 葛城家のリビングに掃除機の小さな音がする、掃除の最中のようだ。いつもの掃除の風景だが今日は違った。

「ほらアスカ、そこにも埃が落ちているよ」

「もう、わかっているわよ」

 普段なら掃除はシンジがしているが今日はアスカがしていた。シンジはフワフワのクッションを枕代わりにして寝転んでおり、掃除をしているアスカに命令をしていた。

 どうしてこうなったかというと・・・アスカが掃除をする少し前にさかのぼる。













一日遅れの・・・













「シンジ、おっはよ〜〜〜」

「おはようアスカ」

 朝、機嫌が良いのかアスカは朝食の準備をしているシンジにニコヤカに挨拶をして顔を洗うために洗面所に向かった。シンジはいつものように振り向いて挨拶をすると再び朝食の準備に戻る。

「シンジ〜」

「ん?何」

「いつも家事大変よね、ご苦労様」

 アスカは椅子に座ると準備をしているシンジの背中を見ながら普段なら口にしない事を話し始めた。

「そうだね、でも慣れちゃったよ」

「そうなの、でもシンジの家事はそれでお終い、これからは全てアタシがやるわよ」

「ふ〜〜〜ん、そうありがとう」

 忙しいのか聞き流すシンジにアスカはプウと頬を膨らませて怒った。

「ちょっとちゃんと聞いているの?アタシが全て家事をしてあげるのよ」

「はいはい・・・え、ええ?!

 ビックリしておもわず振り向いた。

「ふふ驚いたわね」

「ほ、本当なの?これからは全てしてくれるの?」

「ええ」

 目が点になっているシンジに頷くアスカ。

「本当に家事を全部してくれるの?」

「うん、全部して〜〜〜〜〜〜〜あげないよ〜〜〜〜嘘よ〜〜〜」

「へ?」

 先ほどとは正反対の事を言われ再び目が点になった。

「ぷぷぷぷ、引っかかったわね〜今日は四月バカ、エイプリルフールでしょ、しっかり騙されるなんてバカシンジね」

「え?」

 また目が点になり、今日が何日かカレンダーを確認した。

「アスカ、今日は二日なんだけど」

「それがどうしたの?今日が三日とでも言うの?」

「いやエイプリルフールわね、昨日だったんだよ」

「え?」

 今度はアスカの目が点になった。

「だってマナが言っていたのよ、明日はエイプリルフールで嘘をついてもいい日だって」

「それって昨日言われたんだよね」

 シンジはすぐさま理解した、アスカはマナに騙された事を。

「ええ、それがどうしたのよ」

「昨日がエイプリルフールだったんだよ」

「え・・・ええええ!?

「マナに騙されちゃったね」

 シンジはプッと噴出した、マナの笑っている顔が思い浮かぶ。

「あんの鋼鉄が!よくも純情なアタシを騙したわね」

「・・・」

 シンジは何も言えなかった、それなら騙されようとした自分の存在価値は何だろう?と自問自答していた。

「泣かす!あのオンナ、絶対に泣かすわよ!」

 アスカは椅子を倒す勢いで立ち上がると、猛ダッシュで玄関に向かった。

「アスカ、どこに行くの?」

「決まっているでしょ、マナんちよ今から泣かしてくるのよ」

「はあ〜〜〜、昨日騙されたからしょうがないよ、それより今日は嘘をついたらいけないんだよ」

「へ?」

 ニヤリと口元を歪めるシンジにアスカは少し背筋に寒気が走った。







「じゃあ掃除お願いね」

「何でアタシが掃除するのよ!!」

 アスカの頭には埃がつかないように三角巾、手には掃除機を持っている。

「家事を全てしてくれるんだろ?」

「だからそれはエイプリルフールで」

「それは昨日、もう嘘をついたらいけないんだよ」

「う・・・わかったわよ!するわよすれば良いんでしょ」

「お願いね」

 シンジは微笑むとフワフワのクッションを枕代わりにくつろぎ始めた。

「とほほ・・・アタシってなんてへっぽこなのかしら」

 ガックリ肩を落とすと嘘をついた事を悔やみ掃除を始めるのであった。










「アスカ、僕は遊びに行ってくるから洗濯をしてね。後はお昼は食べてくるから自分で作ってね」

「あっちょっと・・・」

 台所を掃除していたアスカに衝撃の一言、シンジは言いたい事を言うと外に遊びに行ってしまった。

「ムカ〜〜〜、何よバカシンジ!急に偉くなってふざけているわ!」

 持っている掃除機を握りつぶしそうなほど怒りが込み上げてくる。

「ふん、こうなったら洗濯を完璧にやってシンジに凄いって言わせてやるわよ!」

 掃除を終え気合を入れると洗面所に向かった。

「さあてと始めるわよ〜〜〜ってなによこの量の多さは」

 洗濯籠が機能していないほど積み上げられた洗濯物、連日の雨で洗濯ができなかった事を物語っている。

「バカシンジ、こまめに洗濯しなさいよね」

 いつもこまめに洗濯していた事に気が付いていない。

「時間かかるわね、ようし!」

 腕を捲くる仕草をすると洗濯機が詰まらない程度に洗濯物を入れ水を入れ洗剤を入れる。

 ガガガガガ〜〜〜

「ふう〜よし!あとは綺麗になるのを待つだけね、あと二回はしないとね」

 洗濯籠にはまだまだ洗濯物が入っている、全て洗濯するには二回は洗濯機を稼動させないといけないようだ。

「終わるわでちょっと休憩」

 台所に向かうと冷蔵庫から牛乳を取り出し、そのままパックに口をつけて一気飲み、冷たい牛乳が喉に染み渡る。

「ぷは〜〜〜、美味しいわ〜〜〜、にしてもバカシンジ、アタシに命令するなんて」

 今思い出してみてもシンジの言葉が腹立たしい。

「でもシンジ・・・いつもこんなきつい事しているんだ」

 何気に見ているシンジの家事作業、実際にやってみるとかなりの重労働である。

「シンジにできてアタシにできないことなんてないわよ!」

 気合を入れなおすと洗面所に向かった、丁度洗濯機が止まったところである。

「干して洗濯してと」

 洗濯機から綺麗になった洗濯物を取り出すと、これから洗う洗濯物を入れスイッチを入れてベランダに向かう。

「うわ〜〜〜気持ち良い〜〜〜」

 ベランダに出ると空は雲ひとつ無い、太陽がさんさんと降り注いでおり洗濯を干すにはうってつけである。

 パンパン!

 しわくちゃになった洗濯物を叩いて広げると丁寧に干していく。

「ふう〜〜〜肩がこるわね」

 物干しはアスカの肩より上にあり干すたびに腕を上げなければならないので肩が痛い。

「ふい〜〜〜頑張るわよ〜〜〜」

 全て干し終えると肩と首を回し凝りを取り再び洗濯機とベランダを往復を繰り返した。











「あ〜〜〜疲れた」

 洗濯を全て終えリビングで大の字になって寝転がった。

「こんな疲れる事シンジ毎日しているんだ・・・」

 毎日何気ない顔をして家事をしているシンジの姿が浮かんでくる。

「・・・アタシ、文句ばっかり言っていたのにアイツは何も言わないで・・・」

 掃除洗濯をしている間アスカは文句ばかり言っていた自分が恥ずかしい。

「もう少し見習わないとね・・・」

 













「アスカ、アスカ」

「う、う〜〜〜ん・・・シンジ?」


 疲れて寝ていたアスカ、シンジの声に目を覚ました。

「アタシ、寝ちゃったんだ」

 目をこすり時計を見てみると午後三時、洗濯が終わって三時間ほど寝ていたようだ。

「お疲れ様、オヤツ買ってきたよ」

 テーブルにはショートケーキと紅茶が用意してあった。

「オヤツ・・・もうそんな時間なんだ」

「慣れない事すると疲れるだろ?」

「うん」

 力なく頷く、相当疲れているようだ。

「ふふ、もうむやみに嘘をついたらダメだよ、家事は僕がするから休んでいていいよ」

「え?良いの?」

「うん、エイプリルフールじゃないのに嘘をついたからお仕置きしたんだよ」

「お仕置きって生意気よ、でも・・・家事って大変なのね」
 
 生意気な事を言われ怒ろうとするのだが怒りきれない。

「大変だけどね、慣れるとそうでもないよ」

「晩御飯、アタシも手伝うわ」

「え?アスカが」

「うん、掃除洗濯したらシンジの大変さがわかったの、だから手伝って良い?」

「大変さがわかってくれて嬉しいよ、ありがたく手伝ってもらうね」

「うん」

 微笑みあう二人、夕食は普通のハンバーグだが違うところが一つあった、そのハンバーグはシンジとアスカの共作だったのである。


 シンジ君に言われて騙された事を知ったアスカちゃんヘッポコですね(笑)

 そしてシンジ君に言われるまま家事をするアスカちゃん、シンジ君の大変さがわかりましたね。これからは全てではないでしょうけどシンジ君の手伝いをするでしょうね。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 一日遅れの・・・