お裁縫
「シンジ〜〜ボタン付けて〜」
夜、アスカがパジャマの上着を持ってリビングで家計簿を付けているシンジの所にやってきた。
「ボタン取れちゃったの?」
「うん、軟弱なボタンねすぐ取れちゃったわ」
パジャマに着替えている最中に取れたのであろう、パジャマの下を履いたままTシャツ姿でシンジに取れたボタンを見せた。
「ええと裁縫道具はどこだったかな?」
暫らく使っていない裁縫道具、記憶の中から探し出すがどこに閉まったかなかなか思い出せない。
「アスカ、ボタンも付けられないの?」
寝転んでTVを見ていたミサトが呟いた、あくびをして眠たそうである。
「うっ・・・そ、そう言うミサトはどうなのよ?できるの」
一瞬たじろぐアスカ、裁縫、家庭科は国語と共に苦手な教科である。
「私ができるわけないじゃない、ボタンが付けれなくても生きていけるわよ」
「それはそうですけどミサトさん、せめて女性としてボタンくらいは付けれたほうが良いんじゃ・・・」
ミサトが裁縫できない事を知っていたが、『ボタンが付けれなくても生きていけるわよ』と言われると呆れてしまう。
「良いの良いの、シンちゃんに任せちゃうから」
「僕はやりませんよ」
流石にやりたくなくなる。
「そう?じゃあ接着剤で付けとこうかしら」
「・・・」
プラモと間違えているミサト、シンジは声が出なくなった。
「シンジッ、裁縫道具はどこ?アタシ自分でつけるわ」
ミサトのだらしなさを聞いたアスカは同類になりたくない、自分で付けることに決めた。
「ええとね、確か・・・僕の部屋だから持ってくるよ」
思い出した、自分の部屋である。裁縫道具はシンジ以外誰も使わないので自分の部屋に置いていたのである。
「最初は針に糸を通そうか」
「ええ」
アスカは針を持つと、糸の先端を口に入れ湿らし針の穴に通し始めた。
「な、なかなか入らないわね。え〜〜〜い」
「よく見て入れるんだよ、指が震えるけどそこは我慢して」
「ええと・・・入らないわね〜シンジやってよ」
細かな作業が苦手なアスカ、すぐに諦めると針と糸をシンジに渡した。
「しょうがないなあ、こうやるんだよ」
「あっ」
何気に糸を湿らすシンジにアスカは一瞬驚いた。
「?どうしたの」
「な、なななんでも無いわ」
「変なの、ほらできた」
慌てふためき真っ赤になるアスカにシンジは首を傾げた。
(シンちゃんってば気がつかないのよねえ〜)
その様子を半分眠りながら見ていたミサトは鈍感なシンジにため息をついた。
「あとは自分でできるよね?」
「ええ、やってみるわ」
針を受け取ると上着とボタンを重ね針を通していく。
ちくっ!
「あぎゃっ!いた〜〜〜〜いっ!」
ごろごろごろごろ〜〜〜〜
針が指に刺さりおもわず転げ回るアスカ、シンジにしてみれば大げさである。
「アスカ大げさすぎるよ」
「大げさじゃないわよ、ほら見てよ血が出てる〜〜〜いたい、いた〜〜〜〜いっ!」
人差し指をシンジに見せる、わずかに血が滲み出てるだけである。
「しょうがないなあ〜ちょっと待ってって」
シンジは立ち上がると自室に戻っていった。
「アスカ、指を見せて」
「うん」
「これで大丈夫、もう一回挑戦だ」
「え、ええ」
バンソウコウを優しく指に巻くとニッコリ微笑むシンジ、アスカは頬を頷くと再び針を持った。
「指を刺さないようにね」
「ふっこのアスカ様が同じ失敗はしないわよ」
ちくっ!
「はう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
ごろごろごろごろ〜〜〜〜
「・・・」
再び刺し転がるアスカ、その姿に何も言えないシンジ。
「もうヤッ!シンジ付けてよ」
涙目になり諦めシンジに渡す。
「アスカ諦めるのが早すぎるよ、もう一回針を持ってみて」
「嫌よ、痛いんだもん」
「手伝ってあげるよ」
「あっ」
シンジは針を持たせるとアスカの手を握り、ボタンに針を通していった。
「こうやるんだよ」
「う、うん」
アスカは赤くなりながら握られた手でボタンが付けられるのを見つめていた。
「ほら完成、簡単だろ」
「・・・」
「アスカ?」
「えっ?あ?できたの?」
じっと見つめてできたのが気がつかなかった。
「今度は一人で付けきれるよね」
「まだわからないわよ。できなかったらまた教えるのよ」
「うん、わかったよ」
教えてもらうのに命令形なアスカだが、シンジは嫌な顔一つせずに微笑むのであった。
葛城家の女性はどうして家事ができないんでしょうね(笑)
ボタンを付けようとしたアスカちゃん、頑張り?ますが失敗、転がりました。再び挑戦するもすぐに諦めてしまいましたね。でもシンジ君に手を握られたので良かったのでしょうね。
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION お裁縫