宿題Ver.マナ

「あ〜〜あ、今日で夏休みは終わりかあ〜〜」

 マナはベッドに横たわってカレンダーを眺めた、今日は8月31日夏休みの最終日である。

「ふあああ、長いようで短い休みだったわね〜〜」

 夏休みは約1ヶ月、長いが残り少なくなると短いと誰もが感じてしまう。

「ふう〜〜明日から学校・・・・面倒くさいなあ〜」 

 全身を伸ばし、ベッドを転がりまわるとふと机に乗っているプリントの束が目に入った。

「宿題・・・・・そういえばやっていなかったわ」

 宿題のプリントに一切手をつけていない、終業式に貰ってから机に置きっぱなしだったので埃をかぶっている。今日は8月31日、まったくやっていないのに慌てないマナ、むしろ落ちついている。

「やらないと怒られるかな〜〜」

「休みに宿題をするのは間違っているわね〜〜」

「やりたくないな〜〜」

「面倒くさい〜〜」

「はあ〜〜〜やろうかな」

 愚痴をこぼすと溜息をつきベッドから身を起こした、動作は鈍くこの調子だと宿題をやっても今日中に終わらない。

「・・・・・」

 溜まった埃を落としプリントを広げ問題に目を通す。

「よし!一時間で終わらせるわよ〜〜!」

 鉢巻をしシャープペンを持ち、問題を読む。

「・・・・・・・・・・・・ちょっと難しいわね〜〜後回し」

「・・・・・・・・・・・・これも後回し」

「・・・・・・・・・・・・これも後回し」

「・・・・・・・・・・・・これも後回し」

「・・・・・・・・・・・・これも後回し」

「・・・・・・・・・・・・これも後回し」

「・・・・・・・・・・・・これも後回し」

「・・・・・・・・・・・・これも後回し」

「・・・・・・・・・・・・これも後回し」

「ふう〜〜・・・・・・全部わかんないじゃないの!!

 シャープペンを叩きつけると机を離れベッドに寝転んだ。

「やめやめ〜〜〜、先生もふざけているわ、わかんない問題を出すなんて絶対にイヂメね」

「どうせ勉強なんて大人になったら必要無いしや〜〜〜めた、寝よう!」

 やる気を無くし枕に顔を埋め目をつぶるが・・・・・

(でも・・・・みんなやってくるんだろうな・・・・もしやってないのが私一人だけだったら恥ずかしい・・・・・シンジに笑われちゃうだろうな・・・・・・)

 元気が良いマナもシンジにだけは笑われたくない、気分がどんどん沈んで行く。

(・・・・・そうだ!誰かに見せてもらおう!)

 勢い良く枕から顔を起こすとプリントと筆箱をバックに詰め家を飛び出す。

「誰に見せてもらおうかな〜〜?成績優秀なヒカリちゃん・・・・ダメね、真面目だから自分でやりなさいって言うわね。他にはアスカは・・・・頭下げて見せてもらうのいやだなあ。そうなるとレイさんね」

 見せてもらうリストの中にはシンジは出なかった、好きな男の子に見せてもらおうのは恥ずかしいのだろう。

「それじゃあレイさんちへご〜〜!」 

 プリントをバックにつめると足取り軽く、レイの家へ向かった。

 

 

 

 コンコン、コンコン

レイさん、遊ぼ〜〜〜〜!

 流石に「宿題を見せて」とは大声で言えない、これは建前である。

 

 ガチャ・・・・

「いらっしゃい・・・」

 数十秒後、扉が力なく開きレイが顔を出した言葉に張りが無く俯きがちである。

「どうしたの?元気が無いみたいだけど」

「そう?元気無いかも・・・・」

「大丈夫?あがって良いかしら」

「ええ、良いわ」

 レイの調子が悪くてもあがらなくては宿題ができない、心で詫びつつ素早くあがった。

「何して遊ぶの?」

「ん〜〜その前に、レイさん宿題した?」

 ここでレイが宿題をやっていなければアウト、二学期早々廊下に立たされることになる。それはレイとて同じ事だが、ネルフの用事と言えば許されるのだ。

「・・・・宿題・・・・・しくしく」

 宿題と聞いた途端レイは涙を流し始めた、止めど無く流れる涙を拭きもせず呆然と立ち尽くす。

「レ、レイさんどうしたの?まさか・・・・やってないの」

 最悪のシナリオが頭をよぎる。

「ううん、やっているの・・・・」

 レイはプリントを見せた確かにやってある、果たして泣く事などあるのだろうか。

「全部やっているじゃない、それならどうして泣くの?」

「碇クンと一緒にできなかったの」

「シンジと?」

「うん、碇クンと一緒にやろうとしてお家に帰ってきて宿題を見たら全てやってあったの・・・・しくしく」

「本当?レイさん自分でやってないの」

「うん、おかあさんが全部やっていたの」

「おかあさん?ああリツコさんね。羨ましいな〜」

 宿題を自分でやらなくて良かったのに泣くレイの気持ちがわからなかった。

「羨ましくないの、碇クンとできなかったの」

「そうかな?」

 マナもシンジと一緒に宿題をしたいが勉強が苦手なのであまりやりたくはなかった。

「そうなの、しくしくしくしく」

「そう、それは残念ね。じゃあ〜その宿題ちょ〜〜〜と見せてもらって良いかしら?ちょっとわからないところがあったの」

 嘘である。ちょっとどころではない、全てである。

「はい、答えは全て合っているから」

「本当?うわ〜〜〜嬉しいな」

 マナは瞳を輝かせた、レイの家へ来て大正解である。

「ちょ〜〜〜と時間かかるけど見させてね」

「うん、ジュースでもいれるわ」

「悪いわね〜〜〜、うんと冷たいやつね〜」

 本当に悪い、相手がレイでなくアスカであったら大激怒しているであろう。

「わかったわ」

「サンキュ〜〜」

 マナは手を振ると宿題の写しに取り掛かる。

「さあて頑張るわよ〜〜〜」

 そして手が高速で動き次々と答えを写していった。














「ん〜〜〜お終い!」

 高速で動かし続けていた手が止まった、宿題を全部写し終えた。

「レイさん、ありがとうね。終わったわ、ってレイさん」

「zzzz」

 隣に座っていたレイはクッションを枕代わりに吐息を立てて眠っていた、窓から外を見るとすでに日が落ちていた。

「あちゃ〜〜〜、ちょっと時間がかかり過ぎたわね。写しのプロとして不覚だったわね」

 嫌なプロである。マナはレイを起こすために肩を優しくたたいた。

「レイさん、レイさん終わったよ」

「う・・・う〜〜〜ん、終わったの?」

「うん、終わったよ、ありがと」

「こちらこそ、どういたしまして何もおもてなしができませんでした」

「あ、いえいえこちらこそ」

 お辞儀をするレイ、まだ半分眠っていて身体が安定してなく、右へ左へと揺れていた。マナも正座をするとお辞儀をする。妙な光景である。

「それじゃあもう遅いし帰るね」

「もう帰るの?」

「うん、明日から学校だし準備をしないとね」

「そう、明日から学校なのね」

「もっと夏休みがあれば良いのにね〜」

 学生誰もが思う事である。

「別に要らないわ、碇クンに毎日会えないから」

「そうね、毎日シンジと会いたいもんね」

「うん」

 頷くレイ、勉強の為でなくシンジに会うために学校に行っている。

「じゃあまた明日ね、ばいばい〜〜〜」

「さよなら」

 マナは大きく手を振るとレイの家を後にした。








「ふふふふふ〜〜〜〜、宿題は完璧っと、そして明日はシンジに会うだけね」

 走って帰るマナ、宿題の心配は無くなった。

「ん〜〜〜有意義な一日だったわ」

 マナにとっては宿題を終わらせる事ができたので良かったが、押しかけられたレイは有意義な一日であっただろうか。


 宿題をやっていないマナ、さあ大変。気合を入れてやろうにも全然わからない(^^;)そして考えたのが誰かに見せてもらう。

 その標的となったのがレイちゃん、なんとレイちゃんはすでに宿題を終わらせていました(リツコさんがですけど)これは去年の「宿題Ver.レイ」を読めばわかります。

 そして写し終わったマナちゃん、レイちゃんにとってはいい迷惑でしたね。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 宿題Ver.マナ