ちょっちアスカちゃん、その9

「ファースト、ブラックジャックをやるわよ」

 それはアスカの一言で始まった。

 ブラックジャックはトランプの数字ゲームで21、もしくはそれに近い数字が勝ちとなる遊びである。短時間で勝負がつくので手軽にできるゲームである。

「いや」

 レイの一言で終わった。

「な〜〜に言ってんのよ!アンタに拒否できるわけないでしょ、やるのよ!」

「どうして?」

「アタシんちの敷居を跨いだら、アタシの言う事は絶対に聞かなくちゃいけないのよ」

 アスカは立ちあがり指を突き付け叫んだ。レイは今葛城家に遊びに来ているのだ。

「ここはアスカの家じゃないわ、碇クンのお家よ。そして将来は私のお家にもなるわ・・・ぽっ」

 それも違う、所有者はミサトなのでミサトの家になる。そして赤くなった頬を手で隠し恥ずかしがるレイ。

「なに暴走してんのよ、やるって言ったらやるの!」

「ふう〜〜、わかったわ」

 地団駄を踏むアスカにレイは呆れ仕方なくOKする。

「だだ普通にやるのは面白くないわよね」

「?逆立ちしながらやるの」

「どうして逆立ちしながらやらなくちゃいけないのよ」

「じゃあ歩きながら」

「座ってやるのよ」

「普通ね」

 アスカの言っている事がわからない。

「アタシが言いたいのはねえ、何か賭けてやらないと面白くないのよ」

「賭ける?何を・・・まさか碇クンを?・・・ドキドキドキドキ」

 レイは目を見開いた、シンジが賭けの対象になるのなら是が非でも勝たなくてはならない、握る拳に力が入る。

「どうしてバカシンジを賭けるのよ。賭けるのはお菓子、お菓子よ」

 テーブルの上には二人に平等に分けられたお菓子の数々、アスカはそれを狙っている。

「そう、別に良いわよ」

 レイはガッカリした、ここで勝利してシンジをゲットしてお持ち帰りを期待していたが幻に終わった。

「よしっ!負けて泣いても返さないわよ」

「望むところよ」

 飛び散る火花、お菓子を賭けた熱い戦いが始まる。

 

 

「ふっふっふっふ、ファースト!アンタは愚か者ね、アタシが何て言われているか知ってる?トランプの女王って呼ばれているのよ」

「知らない、初めて聞いたわ」

「負けてアタシの偉大さを思い知りなさい、さあ勝負よ」

 アスカがトランプの女王と呼ばれているのは多分ミサトやシンジも知らない、それもそのはず今即興で付けた名前なのだ。

「そう、良かったわね」

 聞く耳持たないレイ、トランプをシャッフルするとアスカと自分の前にトランプを置いて行く。

「ふっ、アンタは負けたも当然よ、アタシは天才美少女のアスカ様、天が味方しているわ」

 まだカードを見ていないのに勝利宣言をするアスカ、どこから自信が来るのだろうか。

「そう、まだ要る?」

「要らないわ、見ないでもわかるわ21よ!」

「私はあと1枚追加するわ」

「ふっふっふっふ、お菓子は頂いたわ、勝負!」

 テーブルの隅に置かれたお菓子、見ているだけで唾を飲みこむ。二人は同時にカードをめくった。

「げっげ!そんな」

「21、ブラックジャックね」

 アスカは驚いた、レイのカードは合計で21、ブラックジャックである。対するアスカは3とカスに近い数字。

「すぐに決まるから良いわね。じゃあお菓子頂くわ」

 がさがさとお菓子を自分の前に持っていくレイ、アスカはそれを指をくわえて見るしかなかった。

「よ、ようし!じゃあ明日のお菓子を賭けて勝負よ」

「明日?明日の分もくれるの?」

 毎日遊びに来られるわけではないので明日の分があるとは限らない。

「ええっ明日の分も用意するわよ。でもアタシが買ったら貰うわよ」

「ええ、良いわよ」

「絶対に勝つ!女王の名にかけて!!」

「革命が起こった国の女王様ね」

 皮肉を言うレイ、アスカは弱いという事だ。

「「勝負!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アスカ〜綾波〜オヤツできたよ」

 台所からホットケーキを持ってきたシンジ、今までオヤツを作っていたのである。蜂蜜がかかっており甘い香りが食欲を誘う、シンジの自信作。

うえ〜〜〜ん!!

「ア、アスカ、どうしたの?」

 リビングで見たのはアスカが大泣きしている姿であった。

「お菓子が〜〜お菓子が〜〜〜うわ〜〜ん!!

 涙を拭かずに小さい子供のように大泣き、シンジは泣いている意味がわからなく焦った。

「お菓子がどうしたの?綾波、アスカはどうして泣いているんだい?」

「アスカのお菓子がないの」

「お菓子?お菓子なら二人にあげたじゃないか」

 シンジは疑問に思った、台所に行く前には二人にお菓子があった事を知っている。

「お菓子〜〜うえ〜〜〜ん

「碇クン、実は・・・なの」

 耳元でささやくレイ、頬がちょっと赤いがシンジは気づいていない。

「はあ?一年分のお菓子が綾波に〜?」

「そうなの、アスカ凄く弱いの」

「はあ〜〜、そこまでムキにならなくていいのに」

 シンジは呆れた、翌日分のお菓子を賭けた勝負はまたもレイの勝利であった。アスカは興奮し次の日のお菓子を賭けて勝負、だが負けた。そして次の日も次の日も・・・結果としてレイの全勝、アスカの一年分のお菓子がレイのものになったのである。

うえ〜〜〜ん!!アタシの〜アタシのお菓子が〜〜」

「アスカ、私一年分のお菓子要らないから返すわ」

 見かねたレイ、一年分貰っても食べられるとは限らないし、14歳の乙女体重が心配である。

「本当?ううっファースト、アンタ優しいのね〜〜、ぐすっ」

 レイの言葉にようやく涙が止まりつつある、両手の甲で涙を拭くと鼻をすすった。

「アスカ、もう賭け事はダメだよ。法律で禁止されているんだからね」

「ぐす、ひっく・・・わかったわよ、もうしないから」

 ティッシュを渡すシンジ、アスカのヘッポコぶりに毎日疲れる主夫であった。


 アスカちゃんヘッポコです(笑)トランプが凄く弱い、誰でも勝てますね。

 ムキになるアスカちゃんでしたがどうしても勝てない、そのまま続けたら一生分のお菓子を取られたことでしょうね。

 レイちゃん、お菓子を返しましたのでアスカちゃん安心してシンジ君のオヤツを食べれますね。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION ちょっちアスカちゃん、その9