うさぎりんご

 ぴ〜〜んぽ〜〜ん

「は〜〜〜い」

 葛城家の呼び鈴が鳴った、主夫シンジは呼び鈴に返事をして玄関に向かった。

「碇クンこんにちわ」

「やあ綾波いらっしゃい」

 玄関にはレイが立っていた、遊びに来たようである。

「これおみやげ」

「ん?それは何」

「りんごなの」

 レイの足元に置いてある箱、大きく『りんご』と書かれてあった。

「りんご?重かったんじゃないの」

 箱はかなり大きくりんごが入っていればかなりの重量であり持ってくるには一苦労である。

「下まで送ってもらったから大丈夫」

「送ってもらったの、リツコさん?」

「うん、このりんごおかあさんが持っていきなさいって」

「へえ〜〜リツコさんも来れば良かったのに」

「忙しいからってネルフに行ったわ」

 リツコは忙しくレイをマンションの入り口まで送った後ネルフに戻っていった。

「リツコさん大変だね」

「うん、とても大変なの」

「でも優しいね、忙しいのに送ってくれるなんて」

 レイを送る手段には暇な作戦部長を使う手もあるのだが、そこは愛娘?愛妹の為に時間を割いて送ってきたのである。

「うん、とても優しいの」

「さああがって」

「うん、お邪魔します」

 シンジはりんごの箱を持つと台所に、レイはリビングに向かった。



「アスカ、相変わらずゴロゴロしているのね、暇人」

 リビングにはアスカが寝転がり雑誌を眠たそうに読んでいた。

「なによ〜〜〜〜そう言うアンタは何しに来たのよ?暇で遊びに来たんでしょうが」

 お互いに暇人である。

「暇じゃないわ、今日はおみやげを持ってくる命令を受けたの」

「おみやげ?何を持って来たの?」

 アスカの瞳が輝いたレイが来ても何ともないが、おみやげとなると別である。

「アスカこれだよ」

「わあ〜〜りんごじゃない」

 シンジが数個りんごをお盆に乗せてやって来た。

「リツコさんがくれたんだよ」

「へえ〜〜リツコが、ねえシンジ剥いてよ」

「良いよ」

 お盆から果物ナイフを取りりんごを剥き始める。

「アスカりんごも剥けないの?」

「な、何よ文句ある?」

「りんごぐらい剥けないとお嫁に行けないっておかあさんが言ってたわ」

「じゃあアンタは剥けるの?」

「ええ、碇クンかして」

「あ、うん」

 レイはシンジから剥きかけのリンゴを受け取ると綺麗に剥き始めた。

「わあ〜〜綾波上手だね」

「な、なかなかやるじゃない」

 シンジは驚いた、レイは上手にリンゴを回しながら皮を切らずに剥いていったのである。

「はい」

 そして切り分けると皿に並べた、上手に剥かれたリンゴはシンジが褒める出来であった。

「綾波凄いね」

「碇クン、これならお嫁に行けるかしら?」

「うん、これならバッチリだよ」

「じゃあ・・・これに名前を書いて」

 レイはポケットから何か紙を出した。

「何これ?」

「婚姻届、今日の為に修行してきたの」

 婚姻届にはレイの名前がすでに書かれてあり、あとはシンジの名前を書くだけであった。

「あ、綾波〜〜〜」

 いつもの天然レイに呆れるシンジ、そしてアスカは・・・

くおら〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

 びりびりびりびり〜〜〜〜!!!

 大声を出すと婚姻届を破り捨てた。

「アンタ何ボケてんのよ?」

「ボケてないわ、本気よ」

「そんなんでお嫁に行けるならアタシが修行してるわよ」

「そう・・・ならこれはできる?」

 レイはまたりんごを取り今度は切り始めた。

「完成」

「おっうさぎじゃないか、凄いね」

 作ったのは赤い耳がピンと立ったうさぎのりんごである。

「これができたら国宝級だっておかあさんが言ったわ」

「リ、リツコさん大袈裟だね」

「アスカできる?」

「で・・・できるわよ、かしなさい」

 レイの赤い瞳にジッと見つめられ冷や汗をかくアスカ、生唾をゴクリと飲むと果物ナイフを受け取りりんごを手に取った。

「アスカ大丈夫?」

「う、五月蝿いわね。黙って見てなさい」

 シンジの記憶の中にはアスカがりんごを剥いた記憶は無い。

(ふ、ふん。ファーストにできてアタシにできないわけないでしょうが!いくわよアスカ)

「まずは・・・切るわよ」

 先ほどレイがしたようにりんごを切り始めるが・・・

「大きさが違うわ」

「良いのよ、大きなうさぎと小さなうさぎを作りたいのよ」

 レイに切ったりんごの大きさを指摘され言い訳をする。

「切り目を入れて・・・」

 耳を作るためにV字型に切れ目を入れるが・・・

「右耳が小さい」

「うっさいわね、このうさぎは右耳を小さくしたの」

 又もや指摘され言い訳する。

「そして切り目を入れる・・・あっ」

 手元が狂い耳の部分まで切ってしまった、こうなると普通に剥いたりんごである。

「剥いてくれたのねありがとう、いただきます」

 レイはアスカの手からりんごを取ると口に入れた。

「失敗しちゃったね」

「し、失敗なんかじゃないわよ。ファーストに剥いてあげたのよ」

「失敗じゃないのね?じゃあ作って」

「つ、作ってやるわよ」

 アスカのうさぎりんごへの格闘は続く・・・



































「・・・で、夕食がこれなのね」

「すいませんミサトさん」

 ミサトが帰宅しての夕食、そしてレイもご馳走になるがテーブルに並んでいるのは・・・

「すべてアスカが作ったの」

「い、良いじゃないの」

 皿に盛られたりんごの山、全てうさぎりんごを失敗したものである。

「ごはんにオカズがりんごとは・・・こんな事初めてね」

「すいません僕が止めれば良かったんですが」

 謝るシンジ、箱全てのりんごをうさぎりんごの為に使ったアスカだが一つも成功しなかった。

「五月蝿いわねバカシンジ〜〜〜、アタシ特製の夕食を食べられるなんてアンタ幸せものよ」

「不幸ね」

「何ですって〜〜!」

 レイの呟きに怒るアスカ。アスカの手料理でもシンジにとっては不幸であろう。

「しょうがないわ、りんごをおつまみに一杯やりますか」

 仕事の疲れを取るにはシンジの手料理とビールが最高なのであるが、我慢してりんごを食べるミサトであった。

「クエ〜・・・」

 そしてテーブルの横にも犠牲者が一匹、ペンペンの皿にもりんごが盛られていた。


 この勝負レイちゃんの勝ちですね、りんごを剥けシンジ君と結婚ならアスカちゃんも特訓するでしょうね。

 でもうさぎりんごを作れなかったアスカちゃんは失敗の連続、その結果夕食が悲惨なものになってしましましたね。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION うさぎりんご