MS14
「か、カッコイイ・・・」
自室で何かを見て呟くケンスケ、眼鏡が輝き口元がニヤリと歪み、そして立ち上がり・・・
「も、萌え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
叫んだ、家中のガラスにヒビが入るくらい叫んだ。
「え、MSスーツ・・・なんて萌えるんだ」
ケンスケが見ていたのはレイとアスカのMSスーツを装着したところを盗み撮りした写真であった。
「萌える、萌える!萌えるぜ〜〜〜!!」
MSファンと美少女ファンにはたまらない組み合わせ、密かに売りさばいている写真の売上が十倍アップしたのは言うまでも無い。
「くう〜〜この綾波のガンダム姿、アムロ・レイと綾波レイを掛け合わせるなんてあのMADなかなかやるじゃないか」
MADとは当然赤木リツコの事である。この世界はMADと言えば赤木リツコを示す。
「この戦闘シーンもたまらないなあ」
アスカとレイが闘っている一シーンの写真に目を輝かせる。
「いいなあ、俺もMSスーツを装着してみたいよ・・・」
ミリタリー好きなケンスケ、戦闘シーンを見せ付けられては軍人の魂が燃えないはずがない。
「エヴァには乗れなくてもMSスーツは装着できるかもしれない!MADに頼んでみよう」
ケンスケは写真を片付けると素早く部屋を出た。
「うおおおおおっ!俺の熱きMS魂が燃えるぜ〜〜!!」
ネルフに向かって走るケンスケ、飛び散る汗が太陽の光に反射して爽やかな少年に見える。
「うおおおおおっ!俺もMSラーだ!」
MSラー、MSスーツを装着する人々の事を指すようだ。
「はあはあはあはあ・・・ゴクン・・・来たぜネルフ」
乱れた呼吸を整えると前方に見えるゲートを見つめ、高鳴る鼓動を抑える。
「しかし、どうやって入ろうか?カードなんて持っていないし」
来たのは良かったがカードを持っていなくて入場できない。
「呼び鈴は無いのか?」
ゲートを隅々まで調べるがそれらしき物は無い。
「くうう〜〜ここまで来て入れないとは・・・何たる無念・・・」
ガックリ肩を落とすケンスケ。
「ふっふっふっふ、待っていたわよ。相田ケンスケ君」
「?誰だ俺の名前を呼ぶのは」
どこからともなく聞こえる声、探すが人影が見当たらない。
「わからないの?ここよ」
「あっ!」
ケンスケは真上を向いた、そこには白衣を纏ったリツコが浮かんでいた。
「と、飛んでいる」
「ふふふふ」
ゆっくりと下りてくるリツコにケンスケは驚きを隠せない。
「ようこそ相田君、あなたが来るのは知っていたわよ」
「どうしてそれを?」
「ふふふ私には何でもお見通しよ、何てったって世界一の科学者なんですからね。お〜〜〜ほっほっほ」
ネルフゲートにリツコの高笑いがこだます。ケンスケの背中に冷たい汗が一粒流れた。
「さ、流石赤木博士、ところでどうやって浮かんでいたんですか?」
「ふっふっふっふ、知りたい?」
リツコの眼鏡が妖しく光る。
「は、はい知りたいです」
「そう知りたいのね。でも知ったら一週間後に死ぬわよ」
「えっ死、死ぬ」
ケンスケの背中は汗でびしょ濡れである。膝が恐怖で震え出した。
「そうよ死ぬわよ。でもある言葉を一週間以内に10人に言えば助かるけどね」
「ほ、本当ですか?その言葉は?」
「知りたい?」
「し、知りたいです」
「そうしょうがないわね。その言葉はね・・・」
「その言葉とは・・・」
ケンスケはゴクリと生唾を飲んだ。
「リツコ博士の科学力は世界一ぃぃぃ〜〜!!よ」
「はあ?」
「あら聞こえなかったの?もう一度言うわね・・・リツコ博士の科学力は世界一ぃぃぃ〜〜!!よ」
ネルフゲートにこだまするリツコの叫び、ケンスケは唖然となった。
「これを10人、いえ100人に言って私の凄さを広めてちょうだい」
「は、はあ」
冷たくなった背中をかきながら頷いた、そして一週間以内に死ぬが嘘だというのもわかった。
「よろしい、で用件はMSスーツね」
「あっはい、俺もMSスーツを装着したいんです。俺にも造ってください」
土下座をして懇願する、それほどまでしてMSスーツが欲しい。
「ふふ、顔を上げなさい。そんな事しなくても造ってあげるわよ」
「ほ、本当ですか?」
「ええ本当よってすでに造ってあるわ」
「ええっすでに!?」
目が輝いた。
「そうよ、いらっしゃい」
「はいっ!」
大きな声で返事をし敬礼するとリツコの研究室に付いて行った。
「さああなたのMSスーツはこれよ」
バサァ〜!
MSスーツに被さっていた大きな布を取り外すとそこには・・・
「こ、これはグフ」
「そうよ、一年戦争時のジオン公国軍陸戦用MSグフよ」
輝く青い機体のMS−07Bグフ、特徴として右腕にヒートロッドを装備している。
「こ、これを俺に?」
「ええ、あなたがミリタリーマニアと聞いてこれにしたのよ」
「あ、ありがとうございます博士!感激です」
「喜んでもらえて嬉しいわ」
泣いて感動するケンスケにリツコは微笑んだ。
「装着しても良いですか?」
「ええ良いわよ」
「はいっ!」
大喜びでMSスーツグフを装着し始めた。
「うおおおおおっ!俺は感激している〜!」
装着し終え感激に体が震えた。
「ふふふ気に入ったようね」
「ええ、気に入りました!博士ありがとうございました」
ケンスケは一礼すると研究室を後にした。
「ふっふっふっふ、良い事をしてしまったわ。これぞ世界一の科学者〜〜〜!ほ〜〜ほっほっほ〜〜!」
一日一善を目標をしているリツコ、部屋に笑いがこだまするのであった。
「素晴らしい、実に素晴らしい〜〜!」
歩きながらケンスケは力の限り叫んだ、至極の時間である。
バッシュッ!
「うっ・・・な、何だ?」
突然ケンスケの体に痛みが走った。後ろを振り返ってみると・・・
「アンタ相田じゃないの」
「そ、惣流・・・どうして?」
後ろにはプログレッシブナイフを持った弐号機が立っていた。
「変質者が街を徘徊しているって情報が入って来てみたらアンタだったの」
「変質者じゃな〜〜い」
ボ〜〜〜〜〜ン!!
倒れると同時に爆発をするケンスケ、一方アスカは・・・
「アタシし〜〜らない」
その場を逃げるように去るのであった。
「う、ううう・・・俺の俺の・・・」
爆風で飛ばされたケンスケ、頭はアフロになりMSスーツはボロボロである。
「ま、まだ活躍して・・・いないのに・・・ぐっ・・・」
泡を吹き気絶するケンスケであった。
ケンスケ、折角MSスーツを装着できたのにアスカちゃんにあっさり退治されてしまいましたね(MSスーツを着たから変質者に見えたのかな)
今回のリツコさんかなりMADです(^^;)でもケンスケにMSスーツを与えたのがちょっと優しいかな。
残念ながらケンスケの活躍はありませんでした。
こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。
NEON GENESIS: EVANGELION MS14