仕事納め

「おはおは、お元気〜〜?」

 朝から陽気なミサトは何時もの如く、リツコの研究室に邪魔しにやって来た。

「朝から五月蝿いわね、何の用なのよ?」

「用は無いわよ、今日も頑張って仕事しているわね」

「仕事?見てわからないの、掃除をしているのよ」

 リツコは頭に埃がつかないようにタオルを巻きハタキを持っていた。

「それが仕事だと思っちゃったわ」

「今日は仕事納めでしょ、貴女も部屋の掃除をしなさい」

 今日はネルフの仕事納めである、明日から長期の休暇なのでほとんどの職員が朝から掃除をしていた。

「あらあら大変ね〜〜」

「大変ねって誰も貴女の部屋を掃除しないわよ」

 ミサトの執務室はシンジが葛城家に来る以前のような散らかりである。

「大丈夫、大丈夫〜〜今掃除しているわよん」

「今?」

「そうよ、シンちゃんにやってもらってんのよ」

 ミサトは口に手を当てクスクス笑った。

「シンジ君にって、よくシンジ君がやる気になったわね」

「ん〜〜ちょっちね。アスカの生写真をあげたら張り切っちゃってさ〜〜もう楽勝楽勝」

 ミサトはポケットから数枚の写真を取り出した。写真にはアスカの日常生活が写っていた。

「ミサト・・・」

「んふふ〜〜頭使わないとね」

「・・・」

 デタラメな保護者に呆れるリツコであった。

「今日で仕事納めで掃除はシンちゃんがやってくれているし〜〜あとはゆっくりとお正月を迎えるだけね」

「あら貴女にお正月は無いわよ」

「へ?」

「聞いていないの、年末年始出勤よ」

ええっ!?

 驚きのあまり大きな声をあげた。

「それも貴女、ミサト一人だけ出勤よ。後の職員は全員休暇」

「えええ?どうして私だけが出勤なの?」

「遅刻に無断欠勤に早退にその他諸々。これだけやれば本当は懲戒免職なんだけど碇司令の計らいで年末年始出勤すれば帳消しにしてくれるそうよ」

「そ、そんな・・・マジ?」

「ええマジよ」

「そんな〜酷すぎよ〜〜」

 ミサトの瞳から滝のように涙が流れ出した。

「酷いのはミサトじゃないの?社会人として失格よ」

「うえ〜〜ん、年末は紅白見て、寝正月でビールをガンガン飲むつもりなのに〜〜」

「あらそう〜残念ね。私はレイと一緒に温泉に行くのよ」

 リツコの頭はすでに温泉である。

「私も行きた〜〜い」

「ダメよ、行ったらクビよ」

「うえ〜〜ん」

「自業自得ね。掃除の邪魔だから出て行ってちょうだい」

 リツコはハタキでミサトのお尻を叩いた。

「うう〜〜こうなったら」

 ミサトはポケットから物を取り出した。

「これあげるから年末年始を出なくていいようにして」

「こ、これは!!」

 物を見たリツコの動きが止まった。

「これは伊万里焼のお昼寝子猫ちゃん」

「ふふふ、どうかしらこの可愛い寝姿、萌えるでしょう」

「ど、どこでこれを手に入れたの?」

 伊万里焼の限定品、リツコは手に入れることができなかった。

「秘密。これで手を打たない?」

「わ、私を買収する気?」

「ええ」

 ミサトはニヤリと笑って頷いた。

「・・・」

 リツコは無言で伊万里焼を奪い取ると部屋を出て行った。

「よしっ」

 ガッツポーズをするミサト、勝利したようである。そして五分後・・・

「ミサト、年末年始は休みになったわよ」

「サンキュー、子猫ちゃん可愛がってね」

「え、ええ」

 ミサトはウインクをすると部屋を出て行った。そして残ったリツコは・・・

「こ、子猫ちゃ〜〜ん」

 掃除を忘れて伊万里焼のお昼寝子猫ちゃんに頬擦りするのであった。


 仕事納めは職場の大掃除、リツコさんも自分の部屋を掃除です。そしてミサトさんも掃除はシンジ君に(笑)

 ミサトさんにお休みは無かったのですがリツコさんを買収して休みが復活しました(^^;)悪知恵が働きますね。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 仕事納め