仕事始め

「zzz・・・zzz」

「ミサトさん、ミサトさん」

「zzz・・・zzz」

「ミサトさん!ミサトさん」

 朝、シンジはミサトを揺らして起こそうとするが起きる気配が無い。

「ミサトさん、朝ですよ」

「ん〜〜朝〜〜?あっそ・・・zzz」

 ミサトは寝ぼけて返事をするとまた深い眠りへ入った。

「あっそじゃないですよ、今日から仕事ですよ遅刻しますよ」

「仕事〜〜まだ正月休よ・・・zzz」

 ミサトは目を半開きにして答えるとまた深い眠りへ入った。

「休みは昨日で終りましたよ、今日が仕事始めでしょ」

「仕事始め?なにそれ〜〜・・・zzz」

 ミサトは口をモグモグさせるとビールのプールで泳ぐ夢を見る為にまた眠り始めた。

「何それじゃないですよ!早く起きてください!」

「今日休む〜〜」

「休む?ズル休みはダメですよ」

「有休取るから良いじゃん、電話しといて〜〜」

「有休ってミサトさんはもう無いじゃないですか、それどころかマイナスだってリツコさん怒っていましたよ」

 ミサトの有給休暇はマイナス5であった。

「リツコ〜〜〜?あ〜〜んな金髪鬼婆は怒らしておけばいいのよ」

「リ、リツコさんが聞いたら殺され・・・人体実験されて改造されますよ」

 シンジの背中に冷たい汗が流れた。

「聞いちゃいないから平気よ〜〜」

 ミサトは布団に潜り込んだ。

 PIPIPIPIPIPI!!

 その時ミサトの携帯が鳴った。

「誰よ〜〜こんな朝早くから・・・もしも〜〜〜し」

「ミサト〜〜〜今日仕事が終わったら、ちょ〜〜と付き合ってもらうわよ!

「はっ!リ、リツコ!

 相手はリツコからだった、ミサトの眠気が一気に眼が覚めた。

「私は金髪鬼婆?へ〜〜〜そんな風に私を見ていたの〜〜〜」

「そ、そそそそそそそそそんな事ないわ」

 ミサトの額から汗が滝のように流れた。その場に居たシンジの背中も汗でTシャツが張り付いた。

「そんな事〜〜?そんな事言っていたのは誰かしら?」

「だ、誰でもないです〜〜」

 何故か正座で受け答えをしている。

「誰でもない〜〜?あっそ、シンジ君にかわってくれるかしら」

「えっシンちゃんに?」

「早くする!」

「は、はい」

 ミサトは震える手で携帯をシンジに渡した。

「な、何ですか?」

「リツコがかわれって」

「ええ?」

「お願い許してくれるように言って」

「そ、そんな事できないですよ」

 リツコの恐ろしさはシンジも知っている。

「お願いよ〜〜このままじゃ改造されて仮面ライダーミサトになっちゃう」

「わ、わかりました」

 一瞬ミサトの姿を想像し笑いそうになったが堪えて呼吸を整えると電話に出た。

「も、もしもし」

「もしもしシンジ君」

「あ、はい・・・あ、あけましておめでとうございます」

「おめでとう」

 シンジに対しては声が優しいのだがミサトへの殺意が電話越しからでも伝わってくる。

「あの、そ、それで・・・」

「あのねえシンジ君に質問があるんだけど答えてくれるかしら?」

「は、はい」

 リツコの声に何故か正座するシンジ、横ではミサトが息を飲んでみていた。

「私って金髪の鬼婆かしら?」

「そ、そそそそそそそそそそそんな事ないですよ。リツコさんはとっても優しいです!」

 ここで『はい』と言ったら明日の太陽は拝めないだろう。

「あらありがとう。それじゃあ『あ〜〜んな金髪鬼婆は怒らしておけばいいのよ』って言ったのは誰かしら?」

 携帯を持つシンジの右手に力が入った。

「ミ、ミサトさん」

「はい正解〜〜」

 リツコの楽しげな声にシンジは涙を流して心の中でミサトに謝った。

(ご、ごめんなさいミサトさん。僕は僕はまだ死にたくないです〜〜〜〜)

 プシュ!

「んあ〜〜〜・・・」

 突然ミサトが顔面から布団に突っ込んだ。

「ミ、ミサトさん?」

「シンジ君〜〜大丈夫よ。すぐに諜報部が拉致しにくるからあなたはゆっくりテレビを見ているといいわ」

「は、はひ〜〜」

 ミサトのこれからの運命に身体の震えが止まらない。

「十秒以内にミサトの部屋を出てね、それから五分は中を見ないでね。見たら、フフフ・・・」

「わ、わかりました〜〜〜」

 リツコの不気味な笑い声に驚き転びながらミサトの部屋を出た。

(ミサトさんごめんなさい、ミサトさんごめんなさい、ミサトさんごめんなさ〜〜〜い)

 ミサトの部屋を出たシンジは震えながら聞き耳を立てて部屋の様子をうかがった。

(ミ、ミサトさんはどうなるんだ?あっ今物音が)

 一瞬部屋から物音がしてまた静かになった。

(静かになった・・・今ミサトさんを連れ出したのかな?)

 シンジは部屋の中が気になって襖に手を伸ばしたが・・・

(あ、開けちゃダメだ。仮面ライダーシンジになってしまう)

 エヴァに乗って戦うのはイヤだが仮面ライダーシンジになるのはもっとイヤである。









(ご、五分経った・・・)

 シンジは時計を確認すると恐る恐る襖を開けた。

「あ・・・」

 部屋はもぬけの殻であった。開けられた窓から流れた汗を冷やす風が流れ込んでいた。

「ミサトさん、帰ってくるよね・・・」

 何もできないシンジはミサトが帰ってくるのを祈るしかなかったのであった。


 仕事始めは大事ですね、何でも始めが肝心ですがミサトさんは(^^;)

 部屋で言った悪口が何故かリツコさんに聞こえていました。そしてミサトさんの運命は(笑)無事に帰ってくると良いんですが(無理でしょうね)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 仕事始め