バレンタイン

 二月十四日が近づくにつれて男性が女性に対して優しくなっていく。

「イインチョー重たそうやな、ワシが手伝ったるわ」

「だ、大丈夫、平気よ」

「平気そうに見えへんで、いいからかしてみいや」

 ヒカリが重たい教材を持って教室から出ようとした時、トウジが助け舟を出した。

「あ、ありがとう」

「いいって」

 ヒカリは頬を赤くしながら礼を言った。

「これは理科室に運ぶんやな」

「う、うん」

「よっしゃあ」

「わ、私も行くね」

 トウジは気合を入れると理科室に向かった、それに続いてヒカリも後を追っていった。

(くう〜〜〜トウジの奴〜〜上手い事やりやがって、チョコ貰うって魂胆見え見えなんだよ!)

 その様子を見ていたケンスケは心の中で叫んだ。

(よく見りゃなんだ〜?クラスの男子が全員優しいぞ)

 ケンスケは教室を見回してみた、すると男子達が女子に対してやけに優しかったのである。

(くそ〜〜みんなお菓子会社の策略に乗せられやがって〜〜〜バカばっかりだぜ)

 笑うと机に頬ひじを付き、窓から空を見上げた。

(・・・)

(・・・)

(・・・くそ〜〜五月蝿いんだよ!!)

 空を静かに見ていたが教室内の男女の話し声が耳に入ってくる。弾んだ会話が妙に腹立たしい。

(くそ〜〜くそ〜〜くそ〜〜〜バレンタインがなんだ〜〜お菓子会社の策略だってのに〜〜〜!)




(俺も策略に乗ってやるぜ!)

 ケンスケは席を立ってレイの方に向かっていった。

「おや綾波は何の本を読んでいるのかな?」

「・・・あなた誰?」

 ケンスケの動きが一瞬止まった。

「だ、誰って冗談きついなあ。相田だよ、相田ケンスケ」

「知ってるわ」

 ケンスケの米神がピクピク動いた。

「じょ、冗談うまいなあ〜」

「それで何のようなの?」

「どんな本を読んでいるかな〜って気になったんだよ、何を読んでいるのかい?」

「教えない」

「そ、そんな事言わずに教えてくれよ」

「知りたい?」

「う、うん」

「サードインパクトの起こし方」

「そ、そうなんだ」

 レイの趣味に少し後ずさりをした。

「読書の邪魔になるから行ってくれないかしら」

「あ、うん。じゃなくて十四日が何の日だか知っているかい?」

「知らない、さよなら」

「あ、ちょっと」

 レイは静かに本を読むために教室から出て行った。




(くそ〜〜綾波は愛想がないなあ、次は・・・)

 次はアスカの席に向かった。アスカは携帯ゲームに夢中であった。

「なあ惣流、なにをやっているんだい?」

「うっさいわね〜見てわかんないゲームよゲーム」

 アスカの態度に少し米神が痙攣する。

「なんのゲームをしているのかな?」

「シューティングよ。集中してんだから声かけないでよ」

「す、すまん。ところで写真を撮ってやろうか?」

「写真?アタシを撮ってどうするつもり、どうせ売るんでしょ、いやよ」

 以前写真を売っていたことを知っている。

「う、売らないよ。撮ってプレゼントしようと思うんだよ」

「へ〜〜アンタにしてはマシな考えね」

「だろう〜」

「アタシを被写体に選ぶのは褒めてやるわよ、でもね」

「でもね?」

 ケンスケは息を呑んだ。

「アタシには著作権が発生するわよ、著作権料は高いわよ」

「い、いくら?」

「ざっと億はするわよ」

「お、億ぅ〜〜?」

「そっ、さあゲームの邪魔だからあっちに行って」

 アスカはケンスケを無視するとゲームを再開した。




(くっそ〜〜結局撮らせる気がなかったんじゃないか)

 ガックリ肩を落とすと席に戻った。

(はあ〜〜誰か居ないかなあ〜〜)

 もう一度教室を見回した。

(あっ霧島が居るじゃないか)

 ケンスケの眼にマナの姿が目に入った。

(よしっ行くぞ)

 席を立ち上がりマナの方へ向かうが・・・

「シンジ〜〜〜チョコあ〜〜げる!」

 マナはシンジに抱きつくと綺麗にラッピングされたバレンタインチョコを渡した。

(な、なに〜〜〜?

 ケンスケは驚き大きな口をあけた。

「シンジ〜〜私の愛を受け取って〜〜」

「マ、マナ〜今日はバレンタインじゃないよ」

「うふふ早く渡したかったのよ」

 シンジに抱きつく力が強まる。

「ぐおら〜〜この鋼鉄!フライングするんじゃないわよ」

 アスカが額に怒りマークをつけてやってきた。

「いいじゃない、こういうのは早い者勝ちよ。今年のバレンタインでシンジはこの霧島マナから一番初めにチョコを貰いました〜〜これで私とシンジの愛はラヴラヴよ」

 更に抱きつく力が強まった。

「い、痛いよ、マナ」

「愛の力よ」

「ごら〜〜痛がってんじゃない、離しなさいよ」

 アスカが強引にマナを引き離した。

「もうアスカ強引ね」

「強引なのはアンタでしょうが、シンジもチョコ貰ってんじゃないわよ」

「でも〜〜」

 返事に困るシンジである。

「デモもテロもない!」

「うっふっふ〜〜焼きもちやいているんだ。一番にあげられなかったって。本当は十四日の朝に渡すつもりだったんでしょ」

「そ、そんな事ないわよ」

 耳まで赤くなった。

「だから私は今日渡したの、うっふっふ〜〜私の作戦勝ちよ」

 マナは手を高々とあげると勝利宣言をした。

「くう〜〜ムカツクワね。アンタがそうなら・・・シンジ!ホワイトデーをよこしなさい!」

「ええっ?」

「フライングで良いからよこしなさいよ」

「でもアスカからチョコ貰ってないよ」

「あ、あげるからよこしなさい」

「何も用意してないよ」

「用意してなくてもよこしなさい」

「そんな、無茶苦茶だあ」

 困り果てるシンジであった。

「うっふっふ〜〜アスカったら暴走しちゃって、お子ちゃまねえ」

「五月蝿い〜〜アンタに言われたくないわよ〜〜〜」

「はいは〜〜い、アスカちゃん」

「むき〜〜〜」

 完全にからかわれている。

「碇クン」

 三人のやり取りを教室の入口で見ていたレイがやってきた。

「ん、どうしたの?」

「これ・・・」

「これ?」

 レイは一枚の紙をシンジに手渡した。

「フライング婚姻届、ここに名前をハンコを押して」

「「「ええっ?」」」

 シンジ、アスカ、マナは驚いた。

「今はまだ一緒になれないけど数年後には・・・ぽっ」

「こら〜〜ファースト!暴走してんじゃないわよ」

 アスカは婚姻届を奪い取るとビリビリに破いた。

「レイさん、フライングしすぎよ。もう反則!」

「暴走?反則?私三人目だからわからないわ」

「「三人目でもわかるでしょ〜〜が!!」」

 ユニゾンで突っ込むアスカのマナであった。

 その様子を見ていたケンスケは・・・

(ち、ちくしょ〜〜羨ましく・・・羨ましくなんかないぞ〜〜〜〜!

 血の涙を流すのであった。


 アスカちゃん、マナちゃん、レイちゃんフライングし過ぎですね(笑)シンジ君が羨ましいですね。

 ヒカリちゃんとトウジは二人だけでラヴラヴ(^^)

 そして一人のケンスケは・・・頑張れ〜

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION バレンタイン