アスカ24

「お疲れ〜」

「お疲れさま、あらシンジ君は?」

 アスカが三時のオヤツを食べるためにリツコの研究室にやって来た。

「シンジはミサトに捉まっているから後から来るわ」

「あらそうなの」

 シンジは始末書の手伝いをさせられていた。

「喉渇いているのよ、何か飲み物ない?」

「コーラがあるわよ」

「サンキュー」

 リツコは冷蔵庫からコーラを持ってきた。

「あら珍しいデザインね」

 持ってきたコーラの缶のデザインがいつも飲むコーラと違っていた。

「新製品なのよ」

「へ〜〜いただきま〜〜す」

 アスカはプルタブを開けると一気飲みをし始めた。

 ゴクゴク

「私の新製品よ」

 リツコの口元がニヤリと歪んだ。

 ブ〜〜〜〜〜〜〜!

 アスカは思わずコーラを噴出してしまった。

「な、何飲ませてんのよ。変なもの入れてないでしょうね?」

「あらあら勿体無いわね〜」

「勿体無くなんか無いわよ、うげ〜〜また変な実験なんでしょ。うっ・・・」

 アスカの胸が苦しくなり鼓動が高まり、思わず屈み込んだ。

「う、あ・・・か、身体が・・・」

 アスカの身体が次第に変化していく、身体は今より丸みを帯び顔は少し大人びた表情になっていった。

「ふふ、成功ね」

「な、なにをしたのよ?胸がきつくて服が小さいじゃないのよ」

 着ている制服の胸が更に強調され腰の肌が見えている。

「貴女は大人になったのよ、鏡を見てみなさい」

 リツコは鏡を渡した。

「あ、これがアタシ」

「ええ、大人になったら今より綺麗になるのね」

「そうなんだ、ちょっと嬉しいかも」

 変なコーラを飲まされて嫌だったがそれも忘れてしまう。

「それは十歳年を取るコーラなのよ、だから二十四歳のアスカよ」

「へ〜〜それより身体が苦しいんだけど」

「ふふちゃんと用意してあるわよ」

 リツコは引き出しから下着と洋服を取り出し渡した。

「用意良いわね、最初から計算していたわね」

「さ〜何のことかしら?」

 リツコは目をそらしてタバコに火をつけた。

「うわっ計画的だわ」

 アスカは呆れると着替える為に奥の部屋に入っていった。









「これぴったりだったわよ」

「流石私ね、天才はこわいわ、ウフフ」

「・・・ところでこれって元に戻るの?」

 一番の心配である。

「二時間で元に戻るわよ」

「そっか〜良かった。それまでここに居るわね」

「いいわよ、それよりシンジ君が来るんじゃない」

「あっ忘れてた。どうしようこの格好を見られたら」

 慌てふためくその時・・・

「こんにちは〜〜」

 シンジが入ってきた。

「いらっしゃい」

「こんにちは、あれお客さんですか」

 シンジは大人になったアスカを見た、本人とは気づいてないようである。

「あ、そのあのアタシは・・・」

 何て言おうか戸惑うアスカにリツコが助け舟を出し始めた。

「こちらはアスカの姉でキョウコさんよ」

(リ、リツコ)

「えっアスカにお姉さんがいたんですか」

「ええ、キョウコさんこちらは碇シンジ君よ。アスカと同じエヴァパイロットよ」

「あ、は、はあ」

「初めましてキョウコさん碇シンジです」

「こ、こちらこそ初めまして惣流キョウコです」

 シンジのお辞儀に思わずお辞儀し返してしまった。

(なんでシンジに頭下げなきゃなんないのよ、まったくリツコめ〜〜)

「シンジ君、キョウコさんにネルフを案内してちょうだい。今日始めて来たのよ」

「そうなんですか、わかりました。それよりアスカはどこへ行ったんですか、来ませんでした?」

「あ、そのアタシ・・・じゃなくてアスカは・・・急用があるって帰ったみたいよ」

「そうなんですか、折角キョウコさんが来ているのに」

「だ、大丈夫よ。さっき会ったから」

「そうよシンジ君、さっきねキョウコさんとアスカは楽しくお喋りしていたのよ」

 リツコはニヤニヤ笑いながらアスカを見た。

(く〜〜こいつは)

「そうなんですか、それじゃあキョウコさん案内しますよ」

「え、そのアタシは」

「キョウコさん遠慮しないで行ってきなさい」

「お、押さないでよ」

 リツコはアスカの背中を強引に押し部屋から出した。







「まずはケイジに行きましょう」

「あ、はい」

 アスカはシンジの後を付いてケイジに向かった。

(別に案内してもわらなくてもいいのに)

「キョウコさんはどちらに住んでいるんですか?」

「あ、アタシは・・・ド、ドイツよ」

「そうなんですか。アスカに会えてよかったですね」

「え、ええ元気にしていたね」

(アタシだからね)

「元気すぎて困っていますよ」

 シンジは笑いながらアスカに話し始めた。

「この前も学校の廊下の壁を蹴り破ったんですよ」

「そ、そうなの」

「先生に弁解するの大変でしたよ」

「そ、それは大変だったわね」

(しょうがないじゃない、力がありあまっているんだもん)

「キョウコさんみたいにもう少しおしとやかになれば良いんですけどね」

「そ、そんなにおしとやかじゃないの?」

「ええ、男顔負けの番長ですよ」

「・・・」

(シンジ〜〜アタシじゃないと思って言いたいこと言ってくれるわよね)

 アスカの米神がピクピク引きつった。

「シ、シンジ君も大変ね」

「そんな事ないですよ、アスカの元気から僕も元気を貰っていますから。それに一緒にいて楽しいんですよ」

「そうなんだ」

「ええ、手が早いですけどね。昨日もビンタを食らいましたよ」

「あ・・・」

 アスカは思い出した、昨日理由もなくシンジにビンタをしたのであった。

「ご、ごめんなさい」

「謝らなくていいですよ」

「でも理由もなく叩いたんでしょう」

「ええ、よく知っていますね」

「え、あ・・・アスカから聞いたのよ。あの子反省していたわ」

 アスカは昨日叩いた後、自分のした事に腹立たしかった。

「アスカらしいですね」

「ええ・・・」






 二人はケイジに着いた。エヴァが三機並んでいる。

「その赤い弐号機がアスカのエヴァですよ」

「そうなんだ」

(やっぱりアタシの機体が一番かっこいいわね)

「この紫の初号機が僕の乗るエヴァでこっちの青い零号機が綾波って言う女の子が乗る機体です」

「全部タイプが違うわね、アスカは頑張っているかしら?」

 シンジがどう思っているか聞き出したい。

「ええアスカのお陰で助かりますよ、射撃や格闘センスが凄いしエヴァの操縦も僕や綾波より上手なんですよ」

「そうなの〜凄いわね」

(あったりまえでしょ、アタシが操縦してるのよ)

「ははっ」

「どうしたの?」

 アスカはシンジの笑いが気になった。

「キョウコさん自分のように嬉しがっていますね」

「そ、それはそうよ。アスカが言われたんですもの」

「姉妹って良いですよね」

「シンジ君は兄弟はいないの?」

「はい一人っ子です、キョウコさんみたいなお姉さんがいれば良いなあって思いますよ」

「もう〜上手ね」

 アスカはシンジの肩をポンと叩いた。

「アスカが羨ましいですよ」

「そんな事ないわ、アタシ・・・じゃなくてアスカも小さい頃から訓練で一人が多かったから寂しかったわ」

「そうなんですか」

「でも今はシンジ君がいるから寂しいことはないわよ」

 思わず本音が出てしまう。

「僕も寂しくないですよ、毎日アスカと居る事が楽しくてしかたないですよ」

「でも怒られたり叩かれたりするんでしょう」

 自分でもやめようと思ってもすぐ口や手が出てしまう。

「それもアスカの持ち味ですから気にしてないですよ。でもちょっとは手加減してほしいですね」

「ごめんね」

 笑って済ますシンジに謝るアスカであった。








「キョウコさんは何を飲みますか?」

 ケイジ近くの自販機で休憩を取る二人、シンジは財布からお金を取り出した。

「じゃあコーンポタージュ」

「やっぱりアスカのお姉さんですね」

「どうして?」

「アスカもコーンポタージュが好きなんですよ」

「ふふ」

(だってアタシなのよ)

 アスカは微笑むとコーンポタージュを受け取った。

「ありがとうシンジ君」

「あ、はい」

 思わずアスカの笑顔に頬が赤くなって鼓動が高くなってくる。

「どうしたの顔が赤いわよ」

「な、なんでもないです。ジュースが熱かったんですよ」

「それってホットなの?」

「あ、はい。もの凄く熱いです」

 シンジが飲んでいるのは冷たいコーラである。

「それは冷たいわよ」

「あ、そうだった」

「ふふ、おっちょこちょいね」

(何照れてんのよ)

「あ、あのキョウコさん」

「何?」

「キョウコさんとアスカって雰囲気が似ていますね」

「そうかしら」

(それは当然よアタシなんだから)

「ええ、時々仕草がアスカみたいでドキってします」

 シンジは先ほどのアスカの微笑を思い出しまた顔を赤らめた。

「ドキってするんだ」

「はい」

「シンジ君はアスカの事をどう思っているの?」

「ど、どうって・・・」

 シンジの顔が更に赤くなった。

(ふふ動揺しているわね)

「ひ、秘密です〜〜」

 シンジは顔を両手で隠してしゃがみ込んだ。

「ふふ照れちゃって可愛いわね」

「そ、そんな事言わないでくださいよ」

「アスカが見たら笑っちゃうわよ」

(もう見ているんだけどね)

「い、言わないでくださいね」

「ええ、アタシ達の秘密ね」

(もう知っちゃったけどね)

「よかった〜〜アスカが知ったら馬鹿にされるところでしたよ」

 シンジは胸をなでおろした。

「馬鹿にするの?」

「ええ、馬鹿〜馬鹿〜って言ってでこピンするんですよ」

「そうなんだ」

(そんな事したっけ?)

「もうしないようにキョウコさんから言ってください」

「ええわかったわ」

(これからはしないように頑張るわ)

 心に誓うアスカであった。

「それじゃあシンジ君、そろそろ時間だから帰るわね」

 薬が切れる時間が迫る。

「え、もう帰っちゃうんですか?」

「ええ楽しかったわ、ありがとう」

 チュッ

 アスカはシンジの前髪を上げおでこに軽くキスをした。

「あっ・・・」

「さよならシンジ君、また会いましょうね」

 アスカは頬を少し赤らめると通路を走って去っていった。

「キョウコさん・・・」

 シンジはキスされたことで身体が固まりずっとアスカの走る後姿を見続けるのであった。







「シンジ〜〜」

 身体が元に戻ったアスカは走ってシンジのところへやって来た。

「シンジ〜〜」

 先ほどからずっと立ち続けたままのシンジはアスカの声が聞こえていなかった。

「シンジ〜帰るわよ、お腹空いちゃった」

「・・・」

「シンジ聞いてんの?ん」

 何か呟いているシンジにアスカは耳を澄ませて聞いてみた。

「キョウコさん、素敵だ」

 ボコッ!

「逝ね!」

 アスカの蹴りがシンジの背中にヒットして倒れた。

「この馬鹿シンジ!!」

 気絶したシンジに踏むと蟹股で帰るアスカであった。


 リツコさんの怪しい薬で身体が大人になったアスカちゃん、そうとは気づかないシンジ君。

 アスカちゃんはシンジ君の本音を聞きだせましたね、それと帰る際にちょっとサービス(^^)でもシンジ君は今のアスカちゃんではなく大人のアスカちゃんにトキメイテしまいましたね。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION アスカ24