設計事務所の仕事とは?
設計事務所なんてなかなかなじめない。いったいどんな仕事をしてくれるのか解らない。家を建てるときは、住宅メーカーや工務店に頼むのが普通じゃないか、と考えてる方も多いと思います。そんな方に、設計事務所のことを少しでも解っていただけたらと思います。どうぞお気軽に設計事務所を活用して下さい。
設計事務所ってどういう仕事をしてくれるの?
主な仕事は建物の設計です。建物といっても住宅から大規模なビル、公共の建物等、皆さんのまわりに千差万別の建物が有りますが、一部の小規模のものを除き、建物は建築士でなければ設計を行うことは出来ません。
建物の計画から完成までには様々な段階があり、設計事務所は各段階で以下のような業務を行います。
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企画調査
・建物調査(既存建物の構造調査、立て替え・改修についてのアドバイス)
・土地測量、調査(敷地の調査、周辺調査)
・企画調査(立地による建物用途、規模検討、法的規制その他の調査)
・資金計画
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建築設計
・基本設計(スケッチを重ねながら建物の基本形を形作っていきます。工事費概算を算出し予算内で実現可能かをチェックします。)
・実施設計(細かい打ち合わせを重ねながら、意匠図、構造図、構造計算、設備図等設計図書の作成をします)
・建築確認申請、その他諸官庁申請業務
・積算
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工事監理
・施工業者選定(見積依頼、見積のチェック、業者選定についての助言、立ち会い)
・契約(請負契約の立ち会い)
・工事監理(工事期間中の各種検査、材料承認、試験立ち会い、打ち合わせ)
・工程管理(工期の遅れや施工工程の問題のチェック)
・竣工検査(完成引き渡しを前に検査)
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引き渡し
・建物引き渡しの立ち会い
・完成図他完成図書の引き渡し
・維持保全についてのアドバイス
・瑕疵検査(引き渡し後一年目の検査等)
建物の新築の時だけでなく、既存の建物の維持管理、メンテナンス、改修の場合にも、調査の上工事内容の検討をし、必要に応じて設計図書の作成、工事の監理を行います。
建築士はいろんなところにいます。
建築士は、その設計できる建物の規模、構造等により一級、二級、木造建築士の三つに分かれています。
現在建築士として登録されているのは全国で
一級建築士:278,184人
二級建築士:595,836人
木造建築士: 12,449人
(平成10年3月31日現在)
(財)建築技術教育普及センター資料より
そして、建築設計を業務として報酬を得るには、建築士事務所として都道府県に登録しなければなりません。
ところで、建築士すべてが設計事務所に在籍しているわけではありません。建設会社や工務店、大工さんにも建築士はいます。免許は持っているけど、建築分野以外の職業の人もいます。言い換えれば、設計事務所にいるのはこれらの一部といった方がよいかもしれません。
さて、建築の設計を日常の業務としている人は、主に設計事務所と建設会社にいる人でしょう。しかし、この二者は設計、施工という行為において全く違う立場にいます。
設計事務所と施工者の立場
皆さんが家を建てる場合を考えてみましょう。設計事務所に依頼した場合、設計事務所はまず貴方の要望に沿って、細かい打ち合わせを行いながら設計を行います。敷地条件、貴方の家族構成や生活様式などによって、どういう間取りにしたいか、材料仕上げはどうするか、予算はどれくらいか等、打ち合わせを行いながら設計図を作成していきます。
次に施工者の選定がされます。貴方が施工者をもう決めている場合もあるでしょう。また、特にどこというところがなければ、数社から見積もりを取り、その金額や見積の内容、施工実績などから判断して選定する事になるでしょう。設計事務所は、この段階で、専門家の立場でチェックを行い、貴方に助言を行います。このようにまず、施工者の選定段階において貴方の立場で検討を行います。選定後も、契約着工まで貴方に疑問が有れば助言を行い、貴方の代理者として、施工者に対して協議や指示を行います。
さていよいよ工事開始です。工事中も、設計事務所は現場を見て、施工者と打ち合わせをしたり、また建て主である貴方とも打ち合わせを行いながら、設計図では表せない細かなことについて決定したり、仕上げの決定などをしていきます。また、設計図通りに施工が行われているか、注意しながら現場をチェックしていきます。そこで間違いがあったり、設計通りの仕様材料が使われていなかったりした場合は、貴方に報告するとともに、施工者に注意を与えたり改善を命じたりします。これを工事監理といいます。このようなことが出来るのは、設計事務所は、建築主である貴方に依頼され、施工者とは全く別の立場にいるからです。設計事務所の存在がなければ、これらのチェックは全て貴方がやらなけれなりません。
もちろん建設会社等の施工者にも設計部というものがあり、法規上の設計、監理を行う資格者はいます。しかし、立場はあくまでも施工者内部の人間です。本当に貴方の身になって監理が出来るでしょうか。
設計料はどれくらいかかるの?
設計事務所がその業務について請求できる報酬の基準は、建築士法第25条及び、これに基づく建設省告示第1206号において算定方法が定められており、建物の用途、規模に応じて算出された人件費に、種々の経費を加算して算出されます。業務には設計と監理が含まれます。
通常この基準に基づいて算出し、業務内容によって調整するのが一般的です。この基準で行くと、一般的な戸建住宅では工事費の約10%強程度となります。(個々の事例により変動があります)
建設会社からは設計料など取られないのに?
設計はサービスでやってくれてると思ったら、それは間違いです。建設会社の設計担当者も給料をもらっているので、その分は、設計料という名目ではなくても、貴方が払うお金、工事費に必ず含まれています。表面にでているかどうかだけです。工事費に含むといっても限度がありますが、それなりに安くしているかもしれません。また前述したように立場上、少なくとも監理業務については、設計事務所のそれとは全く違うものとならざるを得ません。極論すれば、設計事務所に依頼すればその分は工事費を安くできるでしょう。
前述した内容を持つ本来の設計と監理の業務は、建築士法で明記されている報酬を伴うものです。これをなおざりにした設計監理というものは、結局それなりのものでしか有りません。安くできるのは、それなりの内容になることを覚悟しなければなりません。
家を建てる、買う、改築する、修理する。そんなとき誰かに相談したいと思われたら、どうぞ建物の専門家である設計事務所に相談してみて下さい。設計事務所なんて、ビルや公共の建物など大きい建築物のことしか相談に乗ってくれないのでは、と思われるかもしれませんがそんなことはありません。建物のお医者さんだと思って、どうぞお気軽に疑問を投げかけてみて下さい。
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