対象愛 家族みんなで海水浴にやって来た。 すっかり夏。ガンガン照り付ける太陽が痛いくらい。 だけど、乱馬は女物の水着を着るのが嫌で、パラソルの下に座る。 あかねは何度も海水と格闘していたが、筋金入りのかなづちは今年もなおりそうにない。 疲れたのか、おれの方に向かって来た。 「やっぱり、だめだったな。」 「うぅ・・・。」 身に付けた水中眼鏡にシュノーケル、足ひれに浮き輪・・・。 「装備は完璧なのになぁ。」 「悪かったわね!悪かったわね!悪かったわね!」 「いいから、早く取れよ。水が、おれにかかる。」 「ふんっだ。」 あかねは少しむくれて装備品をはずす。 水着姿のあかねはやっぱりかわいい。 ワンピースにするか、ビキニにするかと相当悩んでたけど、 「寸胴がビキニなんて着るな。」 って言ったら相当怒ってた・・・けど、ワンピースにしてくれた。 嫌なんだよな、こんなに野郎の目があるところで、あんな下着同然の格好。 着るのは勝手だけど、こっちが困る。 あかねは隣にちょこんと座る。 「足の動かし方が甘いのかなぁ。」 ばたばたと足を動かす。 「そういう問題じゃねーと思うけど。」 「じゃーどういう問題なのよ。」 おれがこんな身体じゃなかったら、あかねと一緒に水の中入って、ちゃんと教えてやるのにな・・・。 憎たらしい・・・この体質。 「乱馬?」 「・・・ん・・・あぁ、なんだっけ?」 「・・・別に。」 「んだよ。」 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 パラソルの下にあかねと2人。肩を並べて座っている。 こういうのって、やっぱりカップル? きょろきょろと辺りを見渡す。 海には親父たちがぷかぷか浮かんでるし、かすみさんとなびきねーちゃんは男たち手玉に取ってるし・・・やるなぁ。 隣を見たら、あかねが・・・。 すぅー・・・。 ね、寝てる? クーラーボックスに手をかけて、瞳を閉じて・・・寝息が聞こえた。 「あかね?」 反応は、ない。 「疲れてたんだな。」 ひとり呟く。 そういえば、寝顔なんて見たことなかったよな。 閉じた瞳をまじまじと見つめる。 顔に濡れた髪がかかり、顔が隠れているのが惜しい。 髪、どかしたいな・・・。 手を恐る恐る近づける。 顔のそばまで近づけると、躊躇してそのまま動きを止めた。 触りたい・・・。 触れない・・・。 もし、髪に触れたなら・・・次におれは何を望む? 最初はおれの目にあかねの姿を写したいと思った。 それが叶うと次にあかねの瞳におれの姿を映したいと思った。 それが叶うとその瞳を独占したいと思った。 それが叶ったならおれはあかねに触れたくなる。 その髪に触れたら、次はその頬に、 その手にその肩にその唇に・・・おれの欲望はどんどん増していく。 自分が怖い。 どこまでも望むおれが怖い。 そのまま一時が経ち、乱馬は元の位置に座る。 隣にあかねがいるだけで、それでいいんだ。 海を見て、気持ちを落ち着ける。 隣で眠っていたあかねが目を覚ました。 「・・・あれ?・・・わたし、寝ちゃった?」 「ん、あぁ、しばらくな。」 「んんー。」 身体を起こし伸びをする。 「ね、乱馬。」 「ん?」 「わたしね、思ったんだけど。」 「うん。」 「乱馬が水かぶると女になってよかったなって。」 「・・・なんだよ、急に。」 「だってね、わたし、かなづちでしょ? いままでは海に来ても、結局泳げなくって ひとりでパラソルの下で、つまんなかったけど、でも今は乱馬が隣にいてくれるから、 さみしくなんかないなって思ったの。」 「・・・・・・。」 「ん?どうかした?」 「・・・・・いや、おれ・・・アイス買ってくるからちょっと待ってろ。」 「うん?」 慌ててパラソルの外に出て、自分の頬を力いっぱい叩いた。 あんないい女に、おれは何考えてたんだ? おれはあかねにこれ以上望めない。 あかねがおれに望まない限り、おれはあかねに望まない。 だけど、それでいい。 おれがあかねを好きだから。 あかねの瞳におれをずっとずっと映してほしいから。 アイスを買って、パラソルにもどったら、あかねが笑顔でむかえてくれる。 「わたし、いちご味ね!」 おれが水をかぶると女になるのは、あかねがかなづちだったから・・・かもな。 「美味しいね。」 「だな。」 やがて戻ってくる家族たち。 だけど、ほんの少し、ふたりきりでこうしていられるのなら。 この時間を胸に刻もう。 =おしまい= 呟 言 実は今日、私が仕事場の窓を開けようとしたら 固くってなかなか開かなかった!! そこで叫んでしまったのです!!「あかねぇぇっ!!」と。 そして私に乱馬くん降臨(笑) ずーっとぐるぐるぐるぐる・・・・乱馬くんがあかねちゃんを どんなに好きか、どんなに想っているのかと、乱馬くんの 気持ちばかりを考えて考えて・・・口調が悪くなりそうだったので 今日はあんまりしゃべらなかった(笑) それで出来た作品です。 考えて文章にして、乱馬くんの気持ちが少しだけわかったような気がしました。 それが読んでる方いらしたら、ちょっとでもそれが伝わるといいな。 ひょう