いってくれなきゃわかんない ちょっとだけ、女の子が優位にたてる日だから。 いつも、乱馬の気持ちに振り回されてる私が、乱馬を振り回すことが出来る日。 だと・・・思う。 乱馬が欲しいって思ってるかどうかってことに、この想いは委ねられてるわけだから、自信はないけど・・・。 お菓子作りは、まだあんまり上手には出来てない。 でも、こういうのって、結局は気持ちだって言って奮い立たせた想い。 甘い匂いのする台所で、がちゃがちゃ 音を立ててるわたしの様子を、乱馬はこそっと覗いて見ていた。 「・・・・・・。」 ちらっと横目で、その様子を確認したわたしの視線に乱馬は気付いて、慌てて出してた頭を引っ込める。 声をかけようかなって、そう思ったけど、どう考えたって、ここで話しだせば、 喧嘩になっちゃうだろうから、口ではなく、休めてた手を再び動かし始めた。 「おはよ。」 「ん、ああ、おはよ。」 いつもどおり。別に変わった様子はない。 お互いに意識しないようにと構える態度は、むしろ普段通りであり、かえって自然に振舞っているように見えた。 あれだけ前振りしてるにも関わらず、変わらぬ態度の乱馬に、あかねは持ちかけていた自信を失いかけていた。 やっぱり、欲しくなんかないかな・・・。 あんまりあからさまな態度も嫌だけど、こうも反応がないと、不安になる。 思い切って、欲しいかどうか聞いてみようかと思っては見るけど、実際にそういう言葉が口から出てくるかどうか・・・。 欲しいんなら、あげてもいいけど? 乱馬の高飛車な態度に対抗したいから、こんなこと言い出しそう。 そうしたら、乱馬は、こう返すだろう。 別に、貰ってやったっていいけど。 ・・・こんなんじゃない。望んでることはこんなじゃない。 だから、わたしは・・・乱馬が切り出してくるのを待つことにした。 こういうのって、大まかに分けるとふたつタイプがあると思う。 たったひとりから貰えたらいいっていうのと、誰からだっていいから沢山貰いたいっていうのと。 そりゃあ、プライドの満足量からしてみれば、どう考えたって沢山貰えた方がいいに決まってる。 正直、それを望んでるって思ってた。 机の中とか、ロッカーの中に、気がつけばそれらは入ってて、周りの奴らが騒いで、 今までだったら、それらは自尊心をたかめてくれて、凄くいい気持ちになっていた。 だから、今回もそうだろうなって思ってたんだ。 だけど・・・こんなもんで推し量れてしまうような、気持ちが嫌だって思った。 これで、何が解かるんだって、そんな風に。 だから、隣でやけに にこにこしてるあかねの様子に正直戸惑う。 このまま家路に着いて、晩飯食って・・・その後、寝る前くらいに、 部屋にいるおれに、あかねは昨日作ってた物をくれるんだろう。 別に、おれは、そんなもん要らない・・・。 なぜなら、欲しい物は他にある。それは、甘い菓子なんかじゃないから。 あかねには、おれの気持ち伝わっていてほしい。 相当ひねくれて捻じ曲がってるけど、おれにしてみたら、真剣な気持ち。 おかしいなぁ・・・・・・本当に要らない? 確かに通学途中も、学校にいる間も、沢山貰ってたけど、でも、いつもの乱馬の様子とはちょっと違ってた。 こういうこと、プライドの高い乱馬にしてみたら、相当嬉しいことだと思うのに、全然嬉しそうじゃなかったし・・・。 それどころか、どちらかというと、困ってるように見えた。 気持ちの押し付けなのかもしれない・・・そんな風に思えてくる。 乱馬が望んでもいないのに、わたしは自分の頑張ったって気持ちを、 自分勝手な思い込みで押し付けようとしているだけなんじゃないかって。 そう思って割り切ろうとしてみたけど、机の引き出しにしまってた、包みが、がたがた動きだす。 そうよね。このままって方が、よっぽど駄目だって、そう思う。 嫌がられるのも、拒まれるのも慣れてるもん。 素直な気持ちは、乱馬に、わたしの作った物、食べてほしいってことだから。 椅子から立ち上がり、包みを両手に抱えた。 「あ、あの・・・ね。」 「・・・・・・。」 「わ、わかってると思うけど。」 「うん。」 乱馬は ゆっくり返事をした。 「わたしが作ったの、欲しくない?」 「いや。」 「だったら・・・どうして、そんな態度なの?」 胸に抱いてる包みを、あかねはぐっと握りしめる。 「そんなんじゃ、わかんない。」 睨みつけるような視線を投げつけられた乱馬は、決意したように、 大きく息を吸うと、ひとことひとこと、噛み締めるように話し出した。 「上手く言いえないから、ちゃんと伝わるかどうかはわかんねぇけど、 こういうもんじゃなくっていいんだ。こういうので、あかねの気持ち、測りたくない。 ただ、毎日、おれのことだけを考えて、おれだけを喜ばそうと思っていてくれさえすれば、 こんな時だからって、特別なことする必要はなにひとつない。 おれには、あかねの気持ちさえ手に入ればそれでいい。それだけで充分なんだ。」 「・・・遠まわしに、食べたくないって言ってるの?」 「あのなぁ。」 「・・・だったら、食べたい?」 「そりゃあな、当然だろ。」 「本当に?」 「・・・話、聞いてたか?」 「だって、要らないって言ってるように聞こえたんだもん。」 「欲しくなんかなかったら、ちゃんと言うさ。」 「だったら、欲しいっていうのも、ちゃんと言ってよ。」 「・・・・・・。」 乱馬は黙ったまま、半ば無理矢理に、あかねの手から包みを奪う。 「言ってくれなきゃ、わかんないんだからね。」 「はいはい。」 乱雑に中身を取り出して、乱馬はそれを口に入れた。 =おしまい= 呟 言 い、一応ですね、その・・・ば、ばれんたいん・・・っぽいのを、突発的に書いてみたりして・・・。 ど、どこが? うーん・・・どこが、ばれんたいんちっくなんでしょうな・・・。 って、話の内容うんぬんは、とりあえず置いといて(汗) というか、どうして、こうイベント的話を、私は甘く書けないんだろうか(悩) 一応、誰も聞いちゃいねぇよな言い訳。 何故に、ばれんたいんなのに甘くないのか・・・というと、私自身、この風習、苦手でして・・・。 いや、学生時代はそりゃーもう楽しかったというか、一応(本当に一応)、 人並みにドキドキしてみたりしてたんですが、 いい大人になってくると、冷めてくるというか・・・(多分変人と思われる) 今年こそはあげるのやめよう、こんなよくわからない風習に流されるのはやめようっと思うのですが、 くれるんだよね?的態度を裏切るという行為が痛いので、 そんなことで痛い思いするくらいなら、流されてしまえっと、現在に至ってたりで・・・。 そして、やっぱり今年も用意してたりで・・・複雑。 というか、すんません・・・私が書くなよな、ばれんたいんな話でありました。 ま、あの、お約束ってことで。 *ひょう*