・・・探されてたら困る・・・って、ここの阿呆はこんなんですぜ、旦那。
引き返すなら今。                今 >>>とぶ




重 力






「ねぇ、これ、持ってよ。」

一緒に頼まれた買出し。
牛乳とか、油だとかの入った買物袋の方を渡される。
・・・腑に落ちない。

「やだ、それ重いだろ。」

どういう意味よ。

「重いわよ。だから、頼んでるんでしょ?」

睨んでみるけど、乱馬はゆらりとかわす。

「大丈夫さ。あかねなら持ってられるだろ。」

あかねなら? 失礼しちゃう。

睨みつけた相手の目に映ってる、自分の姿・・・
想像したら、途端に悲しい気持ちになって慌てて首を振った。




「もうちょっと、ゆっくり歩いてよ。」

気がつけば、背中は遠い。
振り返って、口動かして何か言ってるみたいだけど、それも聞こえない。

手がじんじんしてきた。

止まってくれてた乱馬にようやく追いつき、買物袋を地面に置く。

「大げさだな。」
「本当に重いんだってば。」
「はいはい。」
「だから、ね、乱・・・って、待ってよ。」

どうあっても、これを持ってくれる気はないらしい。

優しくない。

とは言っても、乱馬は本当は優しい。
わたし以外の子には。




家までもうちょっと。

足元がふらついてきた。

「お、おい。大丈夫か?」
「・・・・・・。」

なによ、今更。

「かせ。」
「やだ。」
「持ってやるって。」
「いい。」
「いいから、かせっ。」

強引に荷物を引かれたせいで、わたしの身体はぐらついた。

「きゃぁ。」

目を閉じちゃいけないって、自分に言い聞かせるけど、
倒れこむ身体が受ける衝撃を考えると怖くて目を閉じてしまった。





「おい、あかね?」
「え・・・。」

目を開けた途端に、乱馬の顔。
正直、驚く。

「な・・・なに?」

気がつけば、抱きかかえられていた。

「や、やだ。降ろしてっ。」

だけど、乱馬はわたしを抱きかかえたまま。

「わたし、重いでしょ? ね?」
「重かねぇよ。」

だって、さっきまで、この荷物が重いってぐずって持ってくれなかったから、
今、わたしとすべての荷物を持ってる乱馬は、相当重いって思う。
いくら力があるって言っても、かなり無理がかかっているんじゃ・・・。

「さっきと、言ってること、違う。」
「さっきは、もう、忘れた。」

やっぱり乱馬はゆらりとかわす。

「もう、大丈夫。だから、ね? 降ろして。」
「いや、まだ駄目だ。」
「・・・どうして、急に、優しいの?」

さっきまで、あんなに意地悪だったのに。

「・・・きっかけねぇと、出来ねぇんだよ。」
「不器用。」
「お、おめーに言われたかねぇ。」

見上げた顔、近くて恥ずかしい。

「じゃあ、これ、持ってくれる?」
「あかね込みなら。」
「わたし抜きの方が軽いじゃない。」
「・・・気持ちの問題。」
「なによ、それ。」
「わかんなくていい。」

そして、視線は再び動き出した。







                             =おしまい=







隠 的 呟 言

「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」
って感じの・・・何なんだ?何なんだこれは?な隠話二。

荷物の重さって気持ちが結構関係しとると思うのです。
子供の頃とか特に。
自分に買って貰った物って、持ってても全然苦痛にならない、
そんな感じ・・・って、また自分的感覚によった物をすみません。
どうやら隠しは・・・自分的感覚によった物が繰り出されていく所らしいです。
らしいですって、あんた・・・。             ひょう

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