不完全主義  あかね視点





「はぁ」

ため息がでる。
乱馬の顔・・・心配そう。

「どうしたんだ?」

「ううん、なんでもない」

本当はなんでもなくない。
なんでもなくないの。

朝ごはん。
相変わらずの得たいの知れぬものたち。
当然わたしが作ったもの。
どうしてわたし、こんな、なのかな?
一生懸命頑張ってるのに、
全然、腕前はあがらない。
周りのみんなは練習すれば上手くなるっていうけど、
いくらやったって、無駄なのかな?

卵焼きを口に含む、殻が口に残る。

「はぁぁ」

さっきよりも更にため息。

つくと乱馬が心配するってわかってても出てしまう。

「何だよ、身体の調子悪いのか?変だぞ?」

乱馬が顔を覗き込む。

「熱でもあんのか?」

おでこに手。

乱馬・・・あったかいな・・・

大きなその手に手を重ねる。
頬にその手を持ってくる。

こうしてると少し落ち着くの。
乱馬にわたしのこころ、すべてを包んでもらってるみたい。

いつだってそうよね、
わたしが悲しそうにしてると、
そうやって優しくしてくれる・・・
だけどね、わたしは、

「乱馬」

あなたを喜ばせたいのに、
あなたに無理なんかさせたくないのに・・・

「・・・お料理、出来ないよぅ」

言葉が詰まる。
目の前が曇っていく。
だめ、泣いたらもっと乱馬が困る、
乱馬を困らせる・・・

だけど、溢れ出す感情は止められない。
ごめんなさい。

「な、泣くなよ!」

頬にある手が涙を拭う。

「ったく、そんなこと気にすんなよ。」

やっぱり優しい・・・わたし、
その優しさに応えられない。

「泣くなって!」

「乱馬が、乱馬がわたしみたいな女と結婚したばっかりに
 美味しいものいつまでたっても満足に食べることも
 出来なくって・・・そんなのやだよ。」

「おれは一度だってそんなこと気にしたことねーよ。」

「・・・嘘、まずいって、本当は美味しくもないのに
 無理して食べてくれてるんでしょ!」

「違うな。」

違わない。そう思って乱馬をみる。

「これ以上、上手くなってほしくなんかない。」

それって、

ひどいひどいひどいっ!
そういう風に考えてたんだ!
優しさなんかじゃなかったんだ!
わたしばっかり考えて、
わたしばっかり悲しくて、

「わたしには期待してなんかないってことだよね?」

そうよね、わたしの不器用はなおらないって、
そう言いたいんだ。

「違う、そうじゃない。」

曇る瞳で乱馬を見る。 どうして慌ててるの?

「だから、これ以上、上手くなられたら困るって言ってんだ。」

「・・・訳わかんない。」

「本っっ当、鈍い女だな!」

「鈍くなんかない!乱馬が訳わかんないだけよ!」

「だから、な、おめーが完璧になったら、おれは、どうしていいのか・・・」

「えっ?」

「中身、いいし、外見、いいし、頭、いいし・・・」

「な、何よ急にっ」

「1つくらい抜けたとこねーとかわいくねーよ。」

「・・・・・うん」

乱馬とわたし、つりあってないって、そう思ってた。
すべてを完璧にしなきゃ、離れていっちゃうんじゃないかって・・・
わたしいつだって、不安だったの。

「ま、一応は食えるし?」
「い、一応とは何よ!」

よかった、いつもの感じ。

わたしたちは残っている朝ごはんに再び箸をつけた。


                                =おしまい=


呟 言 A

はじめての視点設定。
こちらはあかねちゃん視点。ちゃんとそう見えているのかな? 結構不安。
自分で書いといてなんなんだけど、あかねちゃんの料理を得たいの知れぬものたちと
まで言ってしまい、相当反省。ごめんね、あかねちゃん。    ひょう


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ここから見たけどもういいやって方も、同じく戻ってくだされ・・・
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