甘えていいよ 乱馬とあかねは結婚を決めた。 だからといって何かが変わったわけではないけど、 ただ乱馬は、前よりもあかねといる時間が長くなり、 あかねを抱きしめたいっという感情を抱くようになってしまう。 当然、乱馬は奥手だから、そんなこと出来なくて、手をつなぐのさえも躊躇する日々。 男としては当然なんだけど、やっぱりこれっておかしいかな・・・? 今まで、そんな気持ちになったことがない乱馬は自分のこころを持余していた。 隣でテレビを見ながらお茶を飲むあかねを見つめる。 あかねは全く気がつかず、お笑い番組を見て、明るい声で笑っていた。 「あかね。」 唐突に名を呼ばれあかねは驚く。 「ん?何?」 「あ、あの・・・さ。」 「うん?」 「その・・・。」 「どうかしたの?」 「あ・・・あか・・・。」 「ん?」 「あ・・・・お茶、ください。」 湯呑みを差し出す。 「うん。」 あかねは急須にお湯を注ぐと乱馬の湯呑みにお茶をつぐ。 「はい。」 差し出された湯飲みを受け取り、黙ってそれを啜る。 あかねの隣に座りたい・・・そう言いたかった。 もう、ほんのちょっとだけ近づきたかった。 それで・・・その肩を引き寄せて・・・ やっぱり無理だよな あかねはまたテレビを見てる。 こいつ、おれのことどう思ってんだろ? 好きかな? 好きでいてくれてるよな? おれは好きだ、あかねのこと・・・ だけど、無理矢理、抱きしめて、いやって拒否されたらそっちの方が辛い。 「ふぁぁっ・・・みんな遅いね。」 あかねがあくびをしながらこっちを見た。 もう二十二時を回っていた。 晩飯もあかねとふたりだった。 かすみさんの書き置きには、すぐ戻ってくるって書いてあったのにな・・・。 「もう、寝る?」 ちょっとだけ、どきっとしてしまう自分が恨めしい・・・。 「ん、そうだな。」 テレビを消し、電気をおとして部屋へと戻る。 「ねぇ、乱馬。」 「あー?」 しばし妄想中だったので、不機嫌な返答。 いや、あんまり普通に話していると、あかねのこと、強引に抱きしめそうだったから。 ふわっ 顔にあかねの髪。 いい匂い。 「な、なっ、なにぉぅ!」 あかねは乱馬に抱きついていた。 「ちょ、ちょっと、あかね・・・ちゃん?」 動揺のあまり、ちゃん付けになる。 「抱きしめてほしいの。」 「えっ!」 「お願い・・・抱きしめて。」 乱馬はぎくしゃくと腕を動かし、あかねの身体を抱きしめた。 「ありがと。」 「ど・・・どどどおしたの?」 「・・・乱馬の・・・。」 「え?」 「乱馬の温もりが欲しかったの。」 「え゛え゛え゛!!」 動揺。すごく動揺。 「あ、あの、あかね?」 「こうしてくれてるだけでいいの。」 「き、急にっ。」 どうしたの?って聞こうとしたらあかねは話し出す。 「わたしね、小さい時からひとりでお留守番するの苦手だったの。 この家はひとりでいるには広すぎて・・・だから、 今、乱馬がここにいてくれるのを確かめたかったの。 乱馬と一緒にいるって感じたかったの・・・。」 「・・・・・・。」 あかねは寂しかったんだ。 小さい頃に母親と死別して、甘えたいときには、いなかった。 末っ子だったからこそ、甘えたくても甘えられなかったんだ。 強がって無理に頑張って・・・おれと同じ。 あかねを抱きしめる、乱馬の腕に無意識に力が入る。 「甘えていいよ。」 「・・・・・うん。」 「でも。」 「うん?」 「おれだけだぞ。」 「え。」 「おれだけだからな。」 「うん。」 あかねのだからな、この腕の中は・・・いつだって抱きしめてやる。 =おしまい= 呟 言 『Pure Heart』のにーぼーさまに差し上げた小説。 10000hitのお祝いにです。 ここが10000hitしたら、にーぼーさまのイラストが頂けるというお話なので・・・ 海老で・・・いや、撒き餌で鯛を釣るくらいの暴挙。 イラスト、いただけるといいなぁ・・・。 これで、にーぼーさまのサイトイメージが狂わないことだけを祈っております。 ここに置いとく分にゃ、自分色なんで構わないですね(汗) 次はキリリク小説!! 待っていてくだされ・・・ ひょう